あのドロッと、もったりとしたほんのり甘いあれがうまいのだ。子供の頃からホットケーキを作るたびにぺろぺろと舐めていた。箸についた生地をペロ。ボウルに残った生地を指で掬ってペロ。みんな当たり前にしていると思っていた。そしてそれに問題があると思っていなかった。しかしある日テレビでホットケーキミックスの生地が好きでそのまま食べていた人がお腹を下し大変なことになったという話題を取り上げていた。そこで焼かずに食べることが危険だということを初めて知った。

えぇ〜？！マジ？？？？？

ショックだった。あんなにうまいのに。しかも「あれを焼かずに食べるなんて…」っていう白い目で見られる行為であったことにも初めて気付いた。

えぇ〜？？まじ？？？うまいやん？？
むしろ焼いた後より焼く前の方がうまくね？

と思い生きてきたのだがどうやら世間は違ったらしい。幸い私は二十数年間ホットケーキを作るたびにペロペロと食してきたがお腹を下した経験はなかった。たしかに大量摂取をしていたかというとそれはノーで、親の目を盗んで食べていたし焼く生地が少なくなるとバレるので適量で止めていた。きっとこれがお腹を下さずに生きてこれた要因であろう。そのテレビを見たその日から、ビビりな私は生地の生食を控えるようになった。素直である。だが本当は食べたい、スプーンでガッと掬って頬張りたいのだ。しかし小麦粉の生食の危険性を知った以上、やはりシンプルに怖い。お腹が痛いのは辛いし怖い。そんな肛門によるビチグソ交響曲（シンフォニー）を奏でたくはないのである。

そんな中、アメリカではクッキードゥというクッキーを焼く前の生食が可能なクッキー生地が一般的に存在していることを知った。子供が焼く前の生地をつまみ食いしても問題がないように小麦粉の加熱処理がすでに行われている商品らしい。やるやないかアメリカ人…！センキューフォーエバーアメリカ人…！これはもしかしたらホットケーキミックスの生食に似た満足度を得られるのでは？と胸がワクワク、胸がワクワク。が止まらなくなった。私の中のゴロリが大暴れ。

そのクッキードゥがコストコ売られていることを知りそれを求めてコストコへ向かった。が、置いていなかった。撃沈。私の夢は儚く散った。たまたま行った店舗の在庫がなくなっていたのか、そもそも現在は取り扱いをしていないのか。どなたか親切なクッキードゥマニア（おるんか？）の方、どうか教えていただけないだろうか。

そしてお腹を下さずにホットケーキミックスの生地の生食が可能な未来が実現できないものだろうか。ホットケーキを作るたびに食べたい葛藤に駆られる苦しい思いを死ぬまで繰り返さねばならぬのか。いつか何も気にせずにたくさん生地を食べたい。それが私がこっそり抱いている夢だ。