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今日の一品:箸休めにもおつまみにも、舌触りよい「りんごの白和え」~宇野千代さんのレシピより(1/8)

白和えが好きでよくつくる。
最もよくつくるのは下味をつけたにんじんやごぼう、ほうれん草、ひじきやこんにゃく等だが、りんごや柿の白和えも年数回はつくる。
りんごを食卓に出すのは「もう一品何か」若しくは「甘い味のものが欲しい」時で、ポテトサラダやフルーツサラダに入れたり、苦みのあるトレビスや生ハム、カマンベールチーズやナッツと合わせてワイン仕様のサラダにしたりする。半割りで芯をスプーンでくり抜き、グリルで焼いたシンプルな焼きりんごで出すことが最も多いかも知れない。
白和えもそれと似た位置づけで、主菜や副菜がいくつか決まってもう一品、という時に登場しがちだ。

りんごの白和えは元々自分で思い付いたのではなく、この本で知ってつくるようになった。

『私の作ったお惣菜』宇野千代さん著、集英社文庫1994年12月初版(1986年海竜社刊行単行本の文庫版)、当時の定価700円。
小学生の頃から作家や著名人の料理エッセイが好きで買い集めて来たが、中でも最も実用的に使わせていただいているのが本書かも知れない。岩国鮨や大平、ぎせい豆腐はこの本で知り、卵白を泡立てフリッターのようにふわっと揚げる鰯の天ぷらやひじきのサラダは真似して何度もつくった。
ただレシピが書かれているのではなく、各品にちなんだ思い出やエピソードがいきいきと描かれた随筆部分が魅力的で、数え切れないほど読み返し、一部は暗記するほどすっと頭に入った。ひとえに文章の魅力である。

そんなお気に入りの中から最も多く作っているのがりんごの白和え。初読時にはさほど目に留まらなかったのが、年々好きになり繰り返しつくるようになった。本書を買ったのはまだ白和えに魅力を感じない年頃で、歴年につれ次第に舌も変わり、作りたい料理も変わった。

故に自分好みにアレンジも加わり、文中では木綿豆腐の和え衣を、私は近年絹ごし豆腐で作っている。また、りんごは「食べ好いくらいの大きさに薄く切って(写真で見る限り2~3mm厚さ)」とあるのを、私は8つ割りにしてできるだけ薄く切り、口に入れた際の滑らかさを重視。この方がおそらくたくさん食べられる。…というか、たくさん食べたいのだ。

りんご1個分でこれぐらいの量です

ちょっとお酒を呑みながらの食卓の日、私たちはできるだけ時間をかけて楽しみたいので、味が濃過ぎず主張し過ぎない箸休め的おかずやおつまみがあると重宝する。その存在としてこの白和えはぴったりなのだ。口の中がさっぱりするし、優しい味で食べ飽きない。さわさわとした歯触りも良い。りんごを皮ごと使うので見た目も可愛らしい。我が家の場合、白和えは可愛らしい小鉢ではなく、他のおかずと同等の大きな器で出してサラダのようにたくさん食べる。野菜の白和えの時もそうで、薄味で作ればたくさん食べられる。
宇野さんは彩にパセリを用いているが、私は炒りごまを散らして「白和えですよ」と主張させる。でないと夫が「チーズ和え?」と見間違えそうだから。そう、りんごはカッテージチーズやクリームチーズと和えても美味しいですよね。

《私好みにアレンジした宇野千代さんの「りんごの白和え」》レシピ:作りやすい分量
①絹ごし豆腐150g(スーパーの三連パックの1つ分)はレンジで1分加熱し、ペーパータオルで包み重石をして水気を切る。
②りんご中1個はよく洗い、皮つきのまま8つ割にして芯を除き、できるだけ薄く切って変色防止に塩水に放し、ざるにとって(必要に応じキッチンペーパー併用で)しっかり水気を切る。
※ところどころやや厚いのも混ぜると、食感に変化がついて尚よしです。
③ ①の絹ごし豆腐の水気を絞ってボウルに入れ、練りごまとすりごま各大さじ半分、砂糖小さじ半分、塩ひとつまみを加えてゴムべらで滑らかにすり混ぜ、②のりんごを(これもよーく水気を切る)加えて全体に絡むよう丁寧に混ぜる。
④お好みで炒りごまを振ってできあがり。

豆腐とりんごの水気をきっちり切ってつくると冷蔵庫で3日程度は美味しく食べられる。半端に水気が出るようだと翌日には美味しくないので注意。
白和えは豆腐の水気をしっかり絞り、具からは余計な水分を出さない下処理をすることで美味しさが段違いに変わる。具材は塩分や砂糖を加えると水分が出るので、野菜や乾物を使う場合は醤油とみりんで薄く下煮し、下味をつけつつ適度に水分を飛ばすと豆腐と和えた後も味がぼやけず美味しい白和えができる。

それにしても、本書を手に取ることが多いのは、表紙の宇野さんの笑顔がとても素敵だからでもあると思う。
願わくは将来そういうおばあちゃんになりたい。

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