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アイススケートとバブルティー

 カナダで1週間ホームステイをしていた時、ホストファミリーに連れられてアイススケートに行った。アイススケートは初めてだったからワクワクしていた。

 靴を履き替えていざ氷の上に立ってみると、体勢が全く安定しない。自分のバランス感覚が絶望的なことをすっかり忘れていた。転ぶ、立ち上がる、また転ぶ。何度も尻餅をつき、とにかく体が痛い。思っていたのとはまるで違う。こんなはずじゃなかった。

 このままではどうにもならない。一旦、リンクから上がることにした。すると、補助台のようなものが置かれているのを見つけた。まずはこれを使って氷に慣れることにした。

 ほとんどシルバーカーを押して歩く老人のような姿勢で、ゆっくりとリンクに入って行く。さっきよりマシにはなったが、それでもまだ転ぶ。何度も体を氷に打ち付けながらも、少しずつ安定し始めた。

 だんだん楽しくなってきて滑っていると、突然目の前に小さな女の子が現れた。咄嗟に方向を変えようとするが、補助台を使ってなんとか前進し始めた自分には無理があった。なんとか避けることはできたがそのままの勢いで大きく転んでしまった。すると、近くにいた子どもの母親が近寄ってきて「Are you OK?」と問いかけてきた。思いっきり尻餅をついたダメージを何とか押し殺し、大丈夫だ、と伝えた。

 帰り道、ホストファミリーにバブルティーを飲むか?と言われた。「バブル」の響きでシャボン玉のようなものを想像しながら、とりあえず飲んでみることにした。

 店は薄暗く、壁にはアニメのポスターが並んでいた。少し不安になりながらメニューを眺める。ストロベリーやバナナの文字が並んでいるのを見て、バブルティーは甘い飲み物だ、と言うことをそこで知った。とりあえずストロベリーを選んでおけばハズレはないだろうと考えて注文した。

 バブルティーはタピオカの入ったドリンクだった。当時はまだ日本でタピオカが流行る前のことだった。何となくいちご味を頭の中で想像しながら飲んでみると、これがとんでもなくまずい。ただ流石にまずい、とは言えずに美味しいと伝えながらもう一度飲んでみる。やはりまずい。きっとこの店がハズレだったんだろうと思いながら、他の人が頼んでいたバナナを少しもらってみるとこれは美味しかった。

 きっと外れることはないだろう、と消極的に選んだストロベリーでとんでもないハズレを引いてしまったのだ。転びまくって体が痛いし、まずい液体を飲むハメになるし、散々な日だった。

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