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「君たちはどう生きるか」という映画

 そら~に~あこがれて~♪ そらを~かけていく~♪ 
 
 どうも、この歌詞が一生頭から離れない編集員Wです。

 上の歌詞は映画『風立ちぬ』の主題歌である松任谷由実の『ひこうき雲』の一節である。一時期はテレビで映画の予告編と共にうるさいぐらい毎日垂れ流されていたので、私と同じように頭から離れない人も少なくないだろう。
 『頭から離れない』とまではいかなくとも、この歌詞を見ると自然と頭の中にユーミンの声が流れる人なら多いはず。

  さて、こんな入り方をしておいてなんなのだが、実は私は「もののけ姫」「トトロ」「千と千尋」ぐらいしか見ていない所謂”にわか”である。なんなら小学生まで一本もジブリ作品を見たことがなかった。文化性も共感性も感受性も低いクソガキだった私は『映画』と言えばせいぜいドラえもんやクレヨンしんちゃんしか思いつかなかったのだ。

 しかし、最近は『宮崎駿』という作家そのものに強い興味があり、ジブリ関連の書籍を読み漁る日々を過ごしている。歳を取りある程度成長したことで、彼の持つ世界観に強く惹かれるようになったのだろう。映画も見ろよ

 実はそんなスタジオジブリの最新作が作られているのはご存知だろうか




『君たちはどう生きるか』、2023年7月14日公開!!!!!



……え? 今日公開?




 そもそもこの映画の存在すら知らない人も多いだろう。この映画は『風立ちぬ』で引退するとか言っていた宮崎駿が「やっぱ引退やめ〜た!」して作った映画である。このお爺さん、いつも「引退する」と言ってはしばらく時間が経つと「やっぱ引退するのを辞める」とか言ってる人なので、要するにこれもいつもの"やめるやめる詐欺"なのだ。

 しかし、非常に失礼な話だが、宮崎駿の年齢を考えると、この作品は遺作になるだろう。つまり"やめるやめる詐欺"をずっと繰り返していたお爺ちゃんの"本当に最後の作品"と言えるのがこの作品なのだ。

 じゃあなんでみんなこの映画の存在を知らないの?

 
 これは誰もが疑問に思うことだろう。日本のアニメ文化を支えてきた偉人とも言える監督の正真正銘最後の作品であるにも関わらず、この映画が今日公開だなんて一部のオタクしか知らない。

 何故こんなことになったのか?

 それはこの映画の特異すぎる広告戦略にある。
 この映画は『まったく宣伝をしない』と宣言されているのだ。鈴木敏夫Pいわく「内容分かって映画見るのってつまらないでしょう?」という事らしい。
 このイカれた特殊な戦略は恐ろしいほどに徹底されている。

 テレビCMは一切流さない。勿論、You TubeやTwitterに広告なんて載せない。バラエティ番組の最後に映画の出演者が言わされてる感満載で「私が出演しているスタジオ・ジブリ最新作『君たちはどう生きるか』7月14日公開です!ぜひ見に来てください!」みたいな事を言ったりしない。

 普通の映画には"当たり前"のものとしてあるものだってない。予告編は作らない。主題歌はあるのかすら不明。出ている声優も明かさない。あらすじも教えない。なんなら主人公が誰かすら分からない。

 分かっているのはただひとつ。下のポスターだけだ。


↑唯一公開されているポスター

 我々はこの鳥らしき生物がなんなのか何一つ分かっていない。オスなのか?メスなのか?人間なのか?鳥なのか?これはマスクなのか?それともそういう生物なのか?というかコイツは主人公なのか?それともポスターに載っているだけで映画にすら出てこないのか?

 全てがブラックボックス。見てみるまではどんな映画が一ミリもわからない。それが『君たちはどう生きるか』なのだ。

 徹底しすぎ!!!!!!!

 ……と思うかもしれないが、ある意味徹底してくれたからこそ、この宣伝には意味があると私は思う。こうやって色々隠してるのに、声優や主題歌からストーリーがチラ見えしたら台無しだろう。

 正直な話、自分としては宣伝をたくさんしてほしかった。宮崎駿の最後の作品なんだ。そりゃ大ヒットしてほしい。なんならアカデミー賞ぐらい獲ってほしい。猛烈にしつこいぐらいにプッシュアップして、興行収入500億円ぐらい稼いでほしい。日本の映画一位が『劇場版鬼滅の刃〜無限列車編〜』だなんていう悪夢を終わらせてほしい。

 そう思っていた。

 けれど、どうだろう。ここまできて非常にワクワクしている自分に気づいた。何一つわからない。それがこんなにも想像力を掻き立てるなんて思わなかった。

 思えば私は映画を見る前にいつも予告編を見ていた。そこから本編の内容を推測し、面白そうだったら劇場に足を運ぶわけだ。そして予想という名の期待を作品に押し付け、その通りだったら喜び、そこから外されればガッカリする。そんなことばかりしていた。

 いつからだろうか?映画の興行収入ばかり気にするようになったのは。思えば、鬼滅のヒット以降、映画の良し悪しを『興行収入』でしか測れなくなったような気がする。

 この見る前の高揚感。どんなものが飛び出てくるかまったく分からない期待感。
 ぜひ皆さんにもなんとかネタバレを避けてこの気持ちを味わってほしい。

 そんな宮崎駿最新作『君たちはどう生きるか』は今日公開!
 映画館へ急げ!!(露骨な宣伝)

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