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ディズニーランドに神機能が追加された話

 ――――話は江戸時代に遡る。

 下総国(現在の千葉県)に属していた『行徳』。そこは塩田があたり一面に広がる塩浜であった。

 そこで作られる塩は関東随一と呼ばれ、かの徳川家康は、この土地の塩浜を見て「軍用第一、領地一番の重宝」と述べたと伝えられている。つまり、軍事の要かつ税収の期待値も高い重要拠点ということだ。

 "塩"というものの重要性についてはわざわざ語る必要もないと思われるが、それは江戸時代では尚の事。この土地で作られた塩は江戸城へと納められ、それが回り回って日本人を生かしていたのだ。
 この土地が日本の生命線と呼べる重要拠点であったことは疑いようがない。

 しかし

 しかしながらである。

 この土地は現在おそるべき侵略を受けているのである!



 1983年、アメリカからやってきた巨大資本によって、この場所は大きく変わってしまった。           
 多くの塩田が売り払われ、かつて塩作りを生業にしていた農家たちは去っていった。海は埋め立てられ、砂浜はコンクリートで舗装された。かつての行徳の姿は見る影もない。

 そんな行徳跡地には何やら外国風の奇怪な建物が立ち所に所狭しと敷き詰められた。これらの土地に住まうは面妖な鼠や家鴨のバケモノ。彼らが我が物顔で闊歩する様子は、かつての江戸幕府が見たら泡を吹いて卒倒するだろう。

 そのアメリカの資本は、恐るべきことに江戸幕府の要地であるこの土地に、江戸城を差し置いて、洋風な城を立てた。

 もうここまで言えばわかるだろう。

恐るべきアメリカ資本…………!

 この土地の名前は浦安市。現在、1000万人以上が訪れる日本屈指の観光都市である。



 …………と、しょーもない茶番はここらへんまでにして、今回は記事タイトルにある通り、ディズニーランドに神機能が追加されたというお話である。

 ディズニーランドは、その触れ込み通り、"夢の国"。高い料金を払わされるだけあって素晴らしいホスピタリティと体験を味わうことができ、誰でも夢見心地ずっと幸せな気分で居ることが可能な場所である。

 ――と言いたいところだが、残念なことに、ただ一つだけ非常に煩わしい瞬間がある。行ったことのある方には共感いただけるだろう。

 それはレストランで席を探している時間である。
 
 想像してみてほしい。食事の載ったプレートを片手に、開いてる席はないかとキョロキョロキョロキョロ。
 友達と手分けしてあっちへ行って、こっちへ行って。
 ようやく空きそうな席を見つけたら、そこにはすでに順番待ちしている人が居て、食べ終わるのをいまかいまかと待っている。まるで、一つのショーなんじゃないかってぐらい他人の食事の様子を凝視している。
 そんな光景に嫌になって、外を見てみたら、席とり合戦に敗北した哀れな敗残兵たちが床に座って食事中。 

 ハッキリ言おう。ディズニーランドのお昼どきは地獄絵図である。それまでの夢から一転、現実へと引き戻される。
 
 よく蛙化現象なんて言葉の例で『フードコートでキョロキョロしてる彼ピッピ見て萎えた〜』なんて話を聞くが、ディズニーランドでキョロキョロしてる彼ピッピはもう最悪だ。大好きな人と大好きな場所に来ているのに、唐突にガン萎えの現実を突きつけられる。

 このサークルのE先輩が「ディズニーランド行ったら現実が色々辛くなって泣いた」みたいなことを言っていたが、私にもその気持ちはよく分かる。ディズニーランドから外に出ると現実を突きつけられる。それが辛い。ディズニーキャラクターの「夢は叶う!」みたいな綺麗事が外に行ってから思い出すと辛くなる。その気持ち本当によくわかる。

 だがしかし、この事例は違う。ディズニーランドの中で現実を突きつけられるのだ。席とり合戦という社会の摂理があろうことがディズニーランド内で展開されているのだ。これを最悪と言わずしてなんと言えば良いのだろうか。

 しかし、流石はオリエンタルランド。こんな状況を打開すべく素晴らしいシステムを導入した。
 そう、それこそが今回の記事の主題、『モバイルオーダー』である!!!



 いや、まぁ、今どきマクドナルドですら実装されている当たり前の機能なのだが、これが意外と嬉しい。
 システムとしては、

①ディズニーランドの公式アプリから、好きなレストランを選択
②食べに行く時間を選択
③注文したいメニューを選択
④支払い方法を選択
⑤あとは受け取るだけ!

 という感じ。とてもオーソドックスで分かりやすい。
 しかし、その効果は絶大である。これによって、まずアトラクション列に並びながら昼食の注文が出来るようになった。これがデカい。
 勿論、みなさんも一人ディズニー全アトラクション搭乗RTAをやったことがあると思うのだが、ここで最も重要となるのは効率化である。モバイルオーダーを用いればさらなるタイム短縮が狙えるだろう。

 先述の席とり合戦にも有効である。なにせ食事が手に入る時間が予め分かっているのだ。他よりも遥かに優位に席を手に入れることが可能だろう。
 なにより、このモバイルオーダーを多くの人がやるようになれば、混雑が減るかもしれない。
 現在のディズニーレストランの席の混雑は、回転率の悪さが原因であることが容易に推測できる。そりゃオーダーの列が常に長蛇なんだから混み合うに決まってるだろう。
 列の半分だけでも良い。半分だけで良いから、彼らがモバイルオーダーを使えば、キョロキョロする彼ピッピも居なくなるのである。


 あぁ、なんと素晴らしい機能なんだ! モバイルオーダー!
 こんな風にユーザーのために新システムを追加していけば、ディズニーランドはより快適で素晴らしい夢の国になるだろう。
 現在もディズニーランドは成長し続けているのだ。


 ――かつて、塩作りの農家はこの土地を追い出された。
 それは浦和市が工業地帯へと変化していく中で、彼らの塩作り業が『席とりゲーム』に負けた結果である。そしてそんな工業地帯も段々と必要がなくなり、次々と潰れていった。そこで、その空いた席に座ったのが夢の国ディズニーランドである。
 
 であるならば、
 ディズニーランドが夢の国であると言うならば、
 ディズニーランドの中では夢が叶うと言うならば
 ディズニーランドには夢を見せ続ける責任があるのではないだろうか。
 この場所で席とりゲームなんてさせてはいけないのではないだろうか。
  
 モバイルオーダーという新システムには、そんなオリエンタルランド社員とディズニーランド従業員の熱い心を感じずにはいられない。
 間違いない。これは彼らからのメッセージだったのである……!






 まぁ今のところは対象レストランが2つしかないとかいう超絶欠陥仕様だけどね

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