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占い番組の危うさについて

他国のことは知らないが日本人は占いが好きだ。
雑誌、新聞、フリーペーパーにまで占い欄があり、朝の情報番組には占いコーナーがある。
占い本は本屋に溢れ、占い鑑定も大人気で、最近は電話占いが流行しているらしい。

テレビにも占い師がよく登場する。
占い師がゲストとして呼ばれるのではなく、芸能人を占うレギュラー番組もある。
そんな番組を見て思ったことを書きたい。

その番組を初めて見たのは2年前のこと。
推しのテレビ出演を毎週チェックし、録画したものを見た。
女性占い師が推しの過去や普段思っていることをバンバン当てる。
「すごい!」と興奮する素直な推しメンバー。
そしてこれからのアドバイスやお勧めのあだ名を言う占い師。
テンポ良い編集で面白く視聴した。

しかし1つモヤモヤが残った。

「過去を当てられた!」と言ってるけど、ファンなら知っている内容ばかり。

占ったりしなくても、彼らについてちょっと調べればわかることばかりでは?

バラエティ慣れしていてリアクションで楽しませる推したちなので、撮れ高は上々だったとは思う。
とはいえ誰でも知られる内容を「占い鑑定したため」と言われるのはなあ~。
考えれば考えるほどモヤモヤは溜まる……。


最近、「占い師星子」というマンガがネットで紹介されていたので読んだ。

https://www.amazon.co.jp/%E5%8D%A0%E3%81%84%E5%B8%AB%E6%98%9F%E5%AD%90-1-%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9-%E5%B2%AC-%E3%83%9F%E3%83%9F%E3%82%B3/dp/4098625385

占い好きの星子はバイトで人気占い師の神ノ山伸一のアシスタントをすることになる。
そこで占いのからくり、現実を突きつけられてしまう。
星子は神ノ山には幻滅するのだが、ポジティブというか単純なので占いそのものは嫌わない。

占いを信用させる心理学テクニックについて、知ってるものもあるけれど説明が非常にわかりやすくて良い。

血液型占いの回はこちらで読める。


占い師が使う心理テクニックをいくつか挙げてみる。

1 バーナム効果

占い鑑定で「あなたはこういう人」と性格や特徴を言われて「当たってる!」と感心した経験はあるだろうか。

その文をよくよく読むと、「大勢でいるのが好きだが実は孤独を好む」や「人のために役立ちたいと思っている」など、誰でも当てはまる内容だったりする。
しかしそれが「射手座さんの特徴」と言われてしまうと自分のことだと信じてしまう。
それがバーナム効果である。

2 確証バイアス

雑誌の占い欄で今月の運勢について書かれていたことが本当に起こった経験があるかもしれない。
しかしだいたいの占いでは「全体運」「恋愛運」「仕事運」「金運」などがあり、全てが当たることはない。
それでも1カ所だけ当たれば「当たった!」と思い出す。
あるいは他に色々なことが起こったのに、占いに書かれていたことだけフォーカスして思い出す。
そのように自分の都合の良いことだけに目を向けて他のことが見えなくなるのを確証バイアスと呼ぶ。

3 予言の自己成就

占い師に言われたことについて、自らそれが当たるように行動してしまう。
「A型は真面目で几帳面」と言われ、そのように行動すると本当に真面目で几帳面な人になる。

ちなみにわたしは計画立てて行動するので「A型ぽい」とよく言われるが、ただの手帳好きなO型です。

4 ホットリーディング

相手の事情を先に調査しておき、実際に会ってからその情報を伝え、あたかも占いの鑑定結果のように言うこと。

占い番組で使われているのは正にこれ。
しかもファンが知っている情報であればテクニックとも呼ぶのも馬鹿馬鹿しい。

5 コールドリーディング

相手の行動や言動をよく観察して、相手のことを言い当てること。
最初は曖昧なことを言い、相手の反応を見て質問を投げかける。
そうやって相手の悩みなどを探っていき、「自分を分かっている」と信用させるテクニック。
占いだけでなくビジネスの場でも使われるらしい。

占い好きの皆さん、これらのテクニックで当てはまるものがあったのでは?

さて件の番組であるが、出演者の過去を当てたのはホットリーディングだった。
「あなたの転機は○歳で……」「普段はこう思っている」などと占い師に言われた出演者は、「ええ、なんでわかるの?」と大袈裟なリアクションをする。
それにより占い師への信用度を高めたように見せかけ、「○歳ではこうなる」「こうした方がいい」とアドバイスをされる。
出演者たちはその鑑定に素直に頷くという流れ。

正直、実際に出演者たちが占いを信じたか否かはどうでもいい。
なぜこのような番組が危ういのか説明する。

我々一般人が「あの占い師は当たるよ」と言っても信じる人は少ないが、有名人だと別だ。
有名人が「良い」と言えば、多くの人がそれを信用する。
企業が高いギャランティを払って有名人を広告に起用するのはそのためだ。

また、番組に出た占い師について芸能人への予言が当たったと話題になることがある。

しかしよくよく考えてみると、「当たったこと」はフォーカスされて話題になるが、「当たらなかったこと」は完全スルーだ。
当たったこと当たらなかったこと、それぞれを調べて何%当たったか算出した人はいるだろうか?
両方並べれば当たったことは偶然の域を出ないのではないか。

有名な芸能人やアスリートたちが占いなどという非科学的なものを信じたという演出。
そして占い師の当たった予言だけにフォーカスする。
この2点により、占い(スピリチュアルなこと)に権威性を与えてしまう。
それはたいへん危険なことである。

占い番組をたかがバラエティだと楽しむだけなら構わないが、日本では未だに「A型は真面目で几帳面」と本気で信じる人が多数いる。
素直な人が「占いは当たる」「スピリチュアルなものは本当だ」と信じれば、詐欺やカルト宗教などを信じやすくなってしまう。

何を大袈裟なと言われるかもしれない。
しかし過去の日本でカルト宗教がテロ事件を起こした事例がある。
オウム真理教事件と調べればいくつもの事件が出てくるだろう。

オウム真理教を危険かそうでないかあやふやなまま、当時のテレビ局は毎日のように教団の幹部をテレビ番組に登場させた。

そしてディベートが得意な幹部にあらゆることを語らせ、教団に興味を持つ人を増やした。
オウム真理教は真っ当な宗教だとか教祖を褒め称えるような学者もいた。
大多数の人は危ういものに近づかなかったが、マスコミの影響により信者になった人もいた。

その後、教団はサリン事件を起こして多くの人々を殺害、日本を乗っ取る計画だったらしい。

映画のような話だが現実の事件である。
オウム真理教を「撮れ高」のために連日取り上げたメディアは深く反省すべきだとわたしは思っている。

しかし現在でも占いや占い師に権威を与えるような番組が流され、占い師の予言がたまたま当たれば大きく話題になる。
メディアが反省できているとは思えない。


【まとめ】
占い番組は心理学テクニックを利用したものであり、占いが当たるとは言い切れない。
有名人が占いを信じるようなリアクションをすることにより、占い(スピリチュアルなこと)に権威性を与えてしまう。
スピリチュアルを信じた人は詐欺師やカルト宗教に騙されやすくなり非常に危険である。


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