「ロシア国債のCDS第一次入札、評価額は56.125セント」

「ロシア国債のCDS第一次入札、評価額は56.125セント」という記事について、正確性よりもポイントを伝えられればという観点で、気まぐれで雑に解説します。

どういうこと


ロシア政府が、ロシア国債を保有する他国の債権者に対して、将来的に交渉に応じて、債権額の半分くらいは返す(あるいは、全額返す可能性は半分くらい)と、(現時点において)主要な金融市場参加者から見られている。

CDSとは


借金をしている企業や国が、その借金の返済ができなかったとき、その貸し手は損をしてしまう。貸し手は、そのような事態に備えて、第三者からCDSを購入すると、CDSの売り手からその全額を保証してもらえる。
通常の保証契約と違い、CDSは金融機関や主要機関投資家の間で売買できる定型化された金融商品になっており、常に市場価格で時価評価される(保証契約は時価評価されない)点、保証される会社の意思と全く無関係に第三者間で取引されるという点などが異なる。

CDSの入札とは


借り手、この場合ロシア政府が発行したアメリカドル建ての国債が、予め定められたCDSのルールに基づいて、不払い(クレジット・イベント)の認定を受けたため、引き続いてCDSのルールに従い、CDSの売り手と買い手の間で保証のプロセスを実行しなくてはならない。CDSの売り手がその保証金額を支払うとともに、その代わりにCDSの買い手から債権(ここではロシア国債またはロシア政府機関向けローン)を受け取る。このときの値決めのプロセスを入札(オークション)という。
なお、CDSは、それだけで金融商品として流通するもののため、CDSの買い手がクレジット・イベントのタイミングで該当の債権を本当に持っているとは限らないが、実際に債権を売り手に引き渡さないと保証の支払を受けることができない。そのため、入札の際にはCDSの買い手が債権を慌てて買い集めることになり、その債権の値段が大きく(場合によっては不合理に)動くことがある。

半分くらい返るとは


ロシア国債の入札価格が、額面1ドルに対して48−56セントの値段になっているということは、もともとの債券の額面の価値100%に対して48−56%くらいの評価がされ、それが入札時点での時価であるということを意味する。言い換えると、ロシアが今すぐにロシア国債の債権者に支払を行うことはないとしても、将来的に債権者との交渉に応じ、実際に債権を返してくるまでの価値の期待値が概ね48−56%であり、それくらいの価値(=値段)なら概ね合理的であろうと、入札の結果判断された、ということになる。
これは、あくまでも入札の参加者によって導き出された数値であって、本当にこの価値が適切なのかどうかというのはわからないが、これ以外には確からしく合理的かつ透明なプロセスで決定されたものはないという観点で意味がある。
なお、CDSのプロセスは借り手(ロシア政府)と何の関係もなく行われるものであり、本件の入札が完了し、CDSの保証プロセスが全て終了してから、CDS対象債権(ロシア国債)の値段がさらに上昇したり下降したりすることはありえるため、CDSの売り手としては最終的に債権を手放すか、返済を受けるまでその全体の損益は確定しない。

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