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鑑別機関の見解の相違

ご無沙汰しております。またも約一年ぶりの投稿にて失礼します。この度、久々にnoteに自らの備忘録を兼ね、投稿の運びとなりました。今回のお話は、

「各鑑別機関の見解の相違」がテーマです。

今回の話の機になりましたのは、2023年秋に、ほんのりと淡い緑色に惹かれ、ニュアンスカラーの0.226ct マーキースカットのダイヤモンドリングを仕入れたことに始まります。
こちらのリングです。

元々、こちらには以下CGLのレポートが付いておりました。

①CGL light gray green SI1

①CGL light gray green 

これは「淡いグレーと緑がほぼ同等に感じられるが、かろうじて緑色である」とされるカラーです。(要は、シックで落ち着いた色調のごく淡い緑、フォレストグリーン)
私は、淡い色合いの中に、時に青み、水色をも感じさせる不思議なカラーに心惹かれました。
そして、私はこちらをあらためてGIAへ出しました。
何故か?理由は、この淡く優しいグリーンに、GIAが何色を付けるか興味があったためです。

リングから石を外し、鑑別に出します。

余談ですが、過去、私はGIAに纏わるこんなことがありました。
数年前、私は知人所有のピンクダイヤモンドを代理でGIAへ鑑別に出しました。その石はCGLで「very light pink」評定、とても淡い色調ではありましたが、無色に比べ明らかにその石は「ピンク」なことが、私の目にも明確に感じられた美しいダイヤモンドでした。
しかし、その石にGIAが下したグレードは、エンゲージにもってこいの無色「Eカラー」でした。

淡いながらもピンクとCGLが付けたカラーに、GIAは無色判定。何故か?理由はわかりません。カラーダイヤモンドはGIAはアメリカNYの鑑定です。人種の異なる外国人グレーダーの見え方は、我々日本人とは違うのかもしれない?としか言えません。

そんなこともあり、CGLで淡いグレーグリーンとされた石に、GIAは何を付けるか、私は興味がありました。

そして、出た結果は驚くものでした。

②GIA fancy grayish green 

②GIA fancy grayish green SI1
(クラリティはCGLと同一)
※カメレオン

この結果には、本当に驚きました。

何故なら、私の予想を遥かに超えた良色をGIAが付けてきたからです。過去、淡いピンクを無色EカラーにしたGIAゆえ、私の予想では、この石はHカラー?辺りな可能性をじゅうぶん視野に入れておりました。
何より、カラーダイヤに関し、日本の鑑別機関の出す色よりもGIAが低い色を出してくるのが通常慣例です。
ワン、ツーランク厳しいは常。しかし、今回に限っては、ワンどころか、ツーランクいや、肝心のグリーン要素もアップで3ランクアップと言って過言でない素晴らしい結果です。
(CGL light gray green →GIA fancy grayish green、ライトの1ランク上はfancy lightですが、今回それを飛び越えてfancyが付いた上、さらに肝心の色合いもCGL gray green(グレイとグリーンが並列=ほぼ同じだがかろうじて緑)から、GIAはgrayish green(グレーがかった緑は、グレーよりもグリーンが明らかに勝るカラー)へ、アップ!
さらに、こちらは温度により色変化を起こす「カメレオン」であるとの記載がなされました。

実に、素晴らしいグレードです。
こちらは紛れもなく「世界基準で通用するGIA」ゆえ、私はこの石へ名誉となるレポートNO刻印の打刻をGIAへ依頼しました。
(ガードル刻印は任意・勿論別料金)

ガードルにレポートNo.を打刻

そして、この石が私の手元に戻ってきてから

あらためて私は、三度目の正直?これが最後とまたもCGLへ、この石を出しました。

何故、一番最初にlightと付けたCGLへこの石を再度しれっと出したか?その理由は、GIA刻印が打刻されたこの石のグレードを、CGLがどう判断するか興味があったからです。

③CGL fancy light gray green 

三度目の正直な結果は以下

③ CGL fancy light gray green SI1

この石をCGLに出す前、私はGIA刻印石をCGLへ出した場合、当然グレーダーはGIAグレードを確認し、同じものを付けてくると予想しました。

しかし、結果は裏切られました。GIA fancy grayish greenはあくまで参考程度に

CGLの見解は「fancy light gray green」でした。

当初のlight gray greenからすれば、ワンランクアップ。そして、GIAのfancy grayish greenからすれば、ランクダウンです。

正直意外でした。これまでCGLは、刻印有石の場合GIAグレードに倣ったものを付けてくることが多かった印象なためです。
そして、GIAとの違いはもう一点「カメレオン」記載がなかったこと。

GIAが「カメレオン」とジャッジした石ですが、CGLには記載なし。この点、私はCGLに直接確認を行いました。

その内容は以下

結論、CGLは仮にカメレオンであっても、鑑別依頼時に「カメレオンである可能性がある石は検査をしてほしい旨」をこちら依頼者側で伝えないと、検査をしない。=仮に、カメレオンであってもカメレオンと記載されない。(※2024.1月時点)

確かに「カメレオン」という存在は、我々が思うほど一般的にはさほどメジャーでないかもしれません。
しかし、GIAはきちんと「カメレオン」には「カメレオン」とこちらが頼まずとも検査し、結果を伝えてきました。
ここが、CGLの対応と大きく異なる点です。

私は基本、仕入では初めからソーティング付き石を取扱う機会が多いです。そこには、カメレオンの石はきちんとソーティングに「カメレオン」と記載があり、また別のカメレオン系統のグリーンの石は、似た色味でもカメレオン記載がなければ、「この石はカメレオンに似た色ですが、カメレオンではない」と皆様へお伝えし、販売してきました。

カメレオン記載の有無がそのカラーダイヤの価値にさほど影響しないというのは、確かにあるかもしれません。

しかし、カメレオン記載の有無でこちらはカメレオンであるか否かを判断してきた立場としては、このCGLの姿勢は少々驚きました。

鑑別依頼時に、カメレオンの可能性があれば検査、表記をとこちらが依頼しなければ、カメレオンであろうがなかろうが検査はされない。そして、これはここ最近の話でなく、昔からであるとのCGLの回答。
(※2024.1月時点)

そして、カメレオンの色合いであっても、検査をした結果、やはりカメレオンでない石には、カメレオンの表記は当然されません。

その点、GIAのようにカメレオンならカメレオンと、こちらが頼まずとも表記してくれるのは有難いなと感じました。

ちなみに、GIAがカメレオンとジャッジした石であれど、CGLが検査し、CGLで納得いく根拠が得られぬ場合、カメレオン表記はしないとCGLの方より伺いました。

これは、CGLはあくまでグレード等級付けに於いてGIAに準拠するもの、各検査内容は各鑑別機関により異なるため、結果は変わりうるということを意味します。

カメレオンカメレオンと連呼しております私が、今回のnoteで私がお伝えしたい内容、それは何もこの石がカメレオンか否かではありません。

2024年1月現在、カラーダイヤモンドの鑑定鑑別は、AIでなく人間の目で行う以上、各鑑別機関やグレーダーの判断は、その時々でまさに色を変えるカメレオンのように、各鑑別機関で見解の相違が十分に起こりうるということです。

【0.226ct ニュアンスグリーンカラー のダイヤモンド、そのカラーグレードを巡る旅路、おさらい】

私って何色?

2023.8 ①CGL light gray green
2023.12 ②GIA fancy grayish green ※カメレオン
2023.12    ③CGL  fancy light gray green
【※日付は鑑別日付】

上記ほんの短期の間、二つのA鑑で判定は変化しました。
これは数年前の古いグレードが、最新の基準により変化したわけでありません。
一番初めの①のCGLは2023年10月仕入れですが、鑑別日付は23年8月です。ほんの数ヶ月間で、二つの機関、同一機関に於いても見解が割れることに、基準の変化は無関係と言えましょう。

カラーダイヤモンドは、非常に高価で価値判断の難しい石です。そのため、そのグレードは価値評価の指針として大いに必要なものです。

しかしながら、カラーグレードが何であれ、カメレオンであろうとなかろうと、この石の色合い、輝き、美しさは何も変わりません。

以前からお伝えの繰り返しにはなりますが、カラーダイヤモンドを選ぶ際、必要以上にそのカラーグレードに引っ張られ、囚われ過ぎてもいけないと私は考えています。

この石がlight gray greenなら、たいして良い色でないから興味ないという人は多いでしょう。
しかし、fancy grayish greenなら、皆さん、大いに興味を持つかもしれない。でも、fancy light gray greenなら?やはりいらないわ、私が欲しいのはfancyと思う人も、少なからずいることでしょう。

石自体は、どれもいっしょなのにね。

今回の話は、結局のところ、必要以上に「紙のグレード」に引っ張られ、拘り過ぎてはいけない、という内容でもあります。

皆様へ
「石そのもの、石自体」をきちんと見てあげてください。

尚、私はCGLもGIAもどちらかに否定肯定的ということはありません。

出来るだけ、フラットに、私は石を評価したいと思っています。
そのため、今回のように、二つの機関に石の鑑別を出すこともままあります。

そして、今回のニュアンスグリーンは、実際にどんな色か、それを正確にわかりやすくお伝えするのが私のすべきことに他なりません。

個人的に、GIAのfancy grayish greenは、良い評価過ぎる印象です。
私の目には、最新のCGL「fancy light gray green」が妥当であるよう思います。

ちなみに、GIAでガードル刻印を打ちましたので、一番初めのCGL light gray greenの状態から石は変化したと見なされます。
よって、①のCGL light gray greenは無効となりましたので、破棄します。

そして、今回最も良いグレードが出たGIA、fancy gray greenは、紛れもなく世界で通用するGIAグレードです。一番良い評価ですし、それを信用しても良いでしょう。

個人的な考えではありますが、私はA鑑二つの機関でカラーの評価が割れた場合、各自お好きなほうを支持し、信じれば良いと考えます。

私の目にはCGLのfancy light gray greenが妥当に映りますが、折角GIAが、より良いグレードを付けてくれたのですから。

以上、鑑別機関の見解の相違についてでした。
今回も長文をご拝読頂き、誠にありがとうございました。

【追記】
いつも多くの方にご拝読頂き、感謝申し上げます。
そして、毎回ご質問を多くいただき、光栄でございます。
しかしながら、たいへん恐れ入りますが
当店は自社で扱う石についてのお問合せのみ、受け付けております。
他社様の石については、無責任な発言ができませんことをご理解、ご了承下さいませ。

今後とも、皆様何卒宜しくお願い申し上げます。

私の長年の夢、それは、自分で仕入れた良質なカラーダイヤモンドを、シンプルで使いやすいジュエリーに仕立て、お値打ちにカラーダイヤモンドファンへお届けすることです。よろしければ、ご支援頂けますと幸いです。