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第6回「アカウント名によせて」

わたしの都心志向は、もとは学校嫌いにある。
高校までとある地方都市の公立学校に通ったが、学校では先生とも生徒とも馬が合わないことが多く(後で振り返ると自分にも問題はあったが)、つらい子ども時代を過ごした。
地方都市の子どもにとっては学校が世界の大部分で、あまりにも選択肢がなかった。登校拒否という名のボイコットを起こしたところで、結果的には無理してでも最寄りの公立学校に通うしかなかった。
勉強はまあまあできたので、その地域ではいちばんの進学校に入学した。そこの生徒は95%は大学進学を選ぶような環境であった。そこでわたしは、勉強をがんばればここを出ていけることを確信した。
「地元を出てこことはまったく違うところ(=都会)に行く」、このことを大きな動機のひとつとして、わたしは日々勉強に勤しんできた。地元は出たいが家族仲は良いので、ひとまずいちばん近い都会である東京を目指すことにした。
高校2年生のなかばには希望進路を決め、本番では東京郊外の第一希望と東京都心のそれ以外の大学を受けて、第一希望には不合格だった。しかし悔いはなかった。
都心での学生生活はとても楽しく、収穫も多かった。何よりたくさんの選択肢があった。思いつくままにどこにでも行けたし、子どもの頃とは比にならないほど、嫌いな人や合わない環境を避けることができた。
物件探しの余裕がなく、最初は23区の端にあるとある学生マンションに住んでいたが、2年以上が経ちある日わたしは思った、「都心に住んだらさらに良いのでは?」と。
家賃が懸念されたが、よく探せば手頃な場所もあることがわかった。さっそく引っ越しをし、その後も引っ越しをし、だんだん都心へと近づいていき今に至る。
気軽に都心に出て、映画や大型書店や美術館へ、都内に限らずターミナル駅や空港を経由してすぐにどこにでも行けるこの環境に、わたしは今でも大変満足している。この生活を実現できたことを今でも毎日のようにうれしく思うくらいである。良いことばかりではないけれど、この環境がわたしに元気を与えてくれる。
笑われるかもしれないが、本当にありがたいのだ。

わたしはセミリタイアを目指しているが、セミリタイアを実現している人たちには、地方志向の人が多いと感じる。
たしかに、家賃の安さや地方ならではの物理的・時間的なゆとりには惹かれる。でも今のわたしにとっては、そこそこ高い家賃を払ってでも、都心で暮らすことに重きを置きたい。
都心で完全にリタイアは無理だとしても、脱フルタイム・完全週休3日制くらいは実現できるのではないか?いや、実現したい。今の都心での生活を送る喜びと、(脱フルタイムを実現させて)今後さらにその喜びを大きくするという願いを込めて、あえて今は「都心生活」と名前に添えて記載している。
……と言いつつも、郊外生活くらいならいずれやるかも。府中に住んで、毎週のように東京競馬場に通いたい(そうしたら他場が遠くなりますよ?)

こうして誕生した「ファニーの都心生活」であるが、この響き、あの名作に少し似ている。イングマール・ベルイマンの『ファニーとアレクサンデル』である。
5時間以上あるけど、第三部から(五部構成である)爆速で過ぎるあれである。あのベルイマンにもかわいげがあるんだな、と思える良い映画。
全人類に一度は観てほしい。長いけど。

おわり

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