スパイダーマンがMCUを離脱してはいけない理由

 トム・ホランド版スパイダーマンがMCUを離脱する。そんな噂が世界中を駆け巡った。

事の発端は8月20日のこの記事ににまでさかのぼる。
Disney-Sony Standoff Ends Marvel Studios & Kevin Feige’s Involvement In ‘Spider-Man’
Deadlineの報道よると、スパイダーマンの3作目の資本関係を現在の契約から見直し”50/50”にしたいとディズニーが要求しソニーが跳ね除けたことから両者の関係が悪化したとのこと。

Disney asked that future Spider-Man films be a 50/50 co-financing arrangement between the studios, and there were discussions that this might extend to other films in the Spider-Man universe. Sony turned that offer down flat.

 さて、由々しき事態である。この報道の直後からIGNを筆頭に「スパイダーマンがMCUを離脱」との見出しが拡散され始めたが、これは正確ではない。ソニーからは「スパイダーマン映画のプロデューサーからケヴィン・ファイギ(マーベルスタジオ社長)を降ろすというディズニーの意向を尊重する」という発表があり、

スパイダーマン役トム・ホランドとケヴィン・ファイギも今後のスパイダーマン映画の行く末について「離脱」との明言を避けている。
『スパイダーマン』ソニー/マーベルの対立報道、トム・ホランドとケヴィン・ファイギ社長がコメントを発表
また、「アイアンマン」監督であり自身もMCUで10年間ハッピー・ホーガンを演じ、スパイダーマンのスタンドアロンムービー皆勤賞であるジョン・ファブローも「希望を持っている」「全てのキャラクターが同じ世界に存在し続けるのを観たい」とコメント。
『アイアンマン』ハッピー役ジョン・ファヴロー、スパイダーマンのMCU残留に「希望持つ」 ─ 全キャラクターが「同じ世界にいてほしい」
ファブローはアベンジャーズ4作全てで製作総指揮にも名を連ねているまさにファイギと並んでMCUの立役者なので、そう簡単に無視できる発言ではない。

さて、ところで私はスパイダーマンのMCU離脱反対派だ。その理由を簡潔に記していこうと思う。


この記事には「アベンジャーズ/エンドゲーム」「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」のネタバレがございます。


・問題が多すぎる

 離脱反対の大きな理由はこれだ。離脱した際の問題が多すぎる。
MCUから離脱するということは単純にMCU内で起こったこと、すなわち「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」以前の出来事に干渉できなくなり、新作の中で触れることすらできなくなるということなのだ。(回避する方法は後述)
 つまり、スターク社製スパイダーマンスーツが使えなくなる。(トニーから貰ったという設定そのものが唐突に変わる可能性がある)
 つまり、エンドゲームで起きた5年後問題の説明がつかなくなる。
 つまり、ヴァルチャーやミステリオなど間接的にトニーが生み出したヴィランの設定が丸ごと変わる。
 つまり、ハッピーとメイおばさんのラブロマンスが実を結ばない。
 つまり、世界から唐突にアベンジャーズが消える。
 つまり、宇宙に行った経験が無くなる。
 つまり、つまり、etc...
そう。問題が山積みなのだ。特にスパイダースーツとヴィランの件はヤバい。スターク社製スーツが使えなくなると使えるのはホームカミングスーツのみになる。FFHでハッピーと作った黒と赤のスーツもヴィブラニウム製のアイアンスパイダーも使えない。
そしてヴィラン。ホームカミングのメインヴィランヴァルチャーやその元で働いていたスコーピオンなどの設定が大幅に変更されるかもしれない。ダメージコントロール社への恨みも無ければ、アベンジャーズが倒したチタウリの残骸で武器を作っていた設定も無くなる。ポストクレジットで再登場を示唆していたが登場すらしなくなるかもしれない。ファン待望のシニスターシックスも登場できないかも。由々しき問題である。


・問題を解決するには

 さて、前項の問題はそうやすやすと無視できるものではない。
かといって離脱が濃厚なのも事実だ。ではどうやって解決すればいいのか。
 まずひとつはソニーとディズニーが関係を修復し、MCUに留まらせるのが一番円満な解決方法だ。折角シビル・ウォーから丁寧にトニー・スタークの後継者として描いてきたピーターをここで失うのはMCUにとってもファンにとっても損失だ。そしてソニーにとっても損失であるのは間違いない。ライミ版スパイダーマンは3で、アメイジング・スパイダーマンは2で、すでに2回もシリーズ半ばで終わらせているソニー単独のスパイダーマン。申し訳ないが、今後マーベルスタジオと縁を切ってホームカミングやFFH並みのクオリティのものが出てくるとは思えない。
 FFHの大ヒットはエンドゲームのブーストも大きい。いくら「ヴェノム」がヒットしたからといって、同じように全て当てられると思っているとしたら大間違いだ。そもそも「ヴェノム」だって批評家の反応はあまり良くなかったのだから。ファイギがいないならファイギに近い誰かをプロデューサーに据えることだってできるはず。
 二つ目の方法は過去の出来事に関しては設定だけでも使えるようディズニーが譲歩することだ。トニー・スターク、アイアンマン、S.H.I.E.L.D、アベンジャーズ、サノス、チタウリなどキーワードを自由に使えるようにする。アイアンマン~FFHのMCU作品の劇中で間違いなく語られたことに関しては自由に触れていいようにする。そうすれば少なくとも前項の問題点のほとんどは解決するだろう。
 FFHでピーターは「ソーは?ドクター・ストレンジは?キャプテン・マーベルは?」と他のヒーローの所在を聞いていた。今後さらに手ごわいヴィランが登場したとき、それこそシニスター・シックスあたりが登場したとき他のヒーローが助けに来ないとこの「助けに来ない」という状況そのものが世界観を壊すことになりそうだが、まだ過去のできごとが全てなかったことになるよりは納得しやすい。今後ハッピーやスターク・インダストリーを登場させることが出来ないとしても、ピーターの中に鉄の意志が息づいていてほしいのだ。いくらかソニーがマージンを払う形になっても構わないのでそこだけは死守して欲しい。


 さて、ここまで書いたが少し希望の持てる情報が入ってきた。
『スパイダーマン』続編、『ファー・フロム・ホーム』ピーター&ハッピーのシーンが重要に ─ トム・ホランドが明かす
このトム・ホランドの発言を見る限り全て無かったことにはならなそうだ。

 色々意見はあるが、私はMCUのスパイダーマンが大好きだ。アイアンマンに、キャップに、キャプテンマーベルに可愛がられるスパイディが大好きだ。FFHで成長し、ヒーローとして一人前になったピーターが大好きだ。デッドプールやデアデビルとチームアップするスパイディも観たい。そして贅沢だが、ヴェノムやカーネイジと共演するスパイディも観たいのだ。
だからこそ希望を持ちたい。人のユメを叶えるのがヒーローなら、きっとスパイディはヒーロー然とまた我々の前に姿を見せてくれるはず。そのときに涙でスクリーンを曇らせないよう、今からハンカチにアイロンを当て準備をしておこう。

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