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奇跡の茶園でつくる、無肥料無農薬の一番茶。《タカテン大塚茶園》

2023年5月22日、偶然にも八十八夜。出会った1年前に約束した収穫の手伝いに島田市へ。一度見学させていただいたことがあり、今回が二度目。四方を広葉樹に囲まれたその茶畑に足を踏み入れると、自分の畑と同じ心地よい柔らかさが。大切に、慎重に刈り取る大塚さんをみていると、この日が来るまでどれだけ愛情を注がれたのかがわかるような気がしました。そんな大塚さんがつくったお茶の魅力を伺いました。


「高い志なんて、ないですよ。ただ作りたいから作るだけ。」

小さい頃から自然が好きで、農業をやってみたかったんです。20代はサラリーマンとしてがむしゃらに働き、そんな気持ちを抑え込んでいました。30代になり、各地の地場産品に興味を持ち、偶然にも藤枝市の無農薬ポンカンに出会う。「無農薬なんてあるんだ」と思い、藤枝まで買いに行ってみると、そこの農家さんがお茶も無農薬で作っていたんです。その魅力にひかれ調べてみると、無農薬でお茶を作る農家さんが仲間はずれにされたり、いろいろな面で苦労されていて、丁度ボランティアも募集していたので、それに参加したのが始まりです。草取りや収穫、販売もお手伝いさせていただきました。

ボランティアを始めて2年が経った頃、お茶農家さんに言われたんです。「あんたそんなに好きなら、自分でやってみたらいいじゃない。」その一言でワァーっと世界が広がっちゃって、自分でやりたくなっちゃったんです。そこから放棄地の茶畑を借り、自分で開拓と再生が始まったんです。翌年にははじめてのお茶摘み体験会も開催しました。

耕作放棄の茶畑を開拓する当時の様子。5年も放置したお茶の木

私は農家ではないんです。ベースとなる本業がある。お茶づくりは、儲けるためじゃなくて、自分が好きなものを作っているんです。だから、肥料なんていらないじゃないですか。たくさん作って、茶農協や茶商に買ってもらう必要がないから。売れなくても、自分で楽しめばいいんです。農薬もいらない。私の茶園にはカマキリやいろいろな虫たちがいます。自然観察も大好きなので、農薬を使ったら全部いなくなっちゃいますよね。

四方を広葉樹に囲まれた東光寺の茶園

東光寺(大塚さんの茶園)は、本当はいくつかある茶園の予備(収量が足りない場合のバックアップ)だったんです。5年ぐらい放置された状態で借り受けて、2年かけて開拓して、こんなに自然の状態の土なら、肥料も農薬も全く使わないで作ったらどうなるか実験していたんです。
静岡はお茶で有名ですが、トラックに農薬の大きなタンクを積んでワァーってやるのを見ていて、好きじゃなかったんです。いくら自分の畑で農薬を使っていなくても、まわりが使っていれば一緒なんです、風に運ばれてきちゃって。東光寺は、山の中にポツンとあります。四方を広葉樹に囲まれているから、まわりからの影響は一切ありません。広葉樹の葉が積もり、土を豊かにしてくれる奇跡の茶園なんです。

東光寺の畝間が広く、陽あたりがよく風も通る

東光寺は他の茶園と比べて畝幅が細くて通路が広いんです。一般的な茶園は、たくさん採りたいから畝幅が広く、畝と畝の間は人が横歩きするのがやっとぐらい狭い。そこに化学肥料を撒いてさらに大きく育てる。木が密集してると栄養の取り合いになるし、苦しいですよね。だから私は、木の本数と葉の量を減らして、栄養を行き渡らせたんです。だから、同じ面積でも収量は一般的な茶園の5分の1ぐらいなんです。

一般的な茶園は、年4回お茶を採ります。初夏に一番茶。6月後半に二番茶。7月終わりに三番茶。9月に秋番茶。肥料を使うから、刈りとってもどんどん芽が出てきます。東光寺は一番茶だけです。肥料を使わない分秋までじっくり休ませて、11月に来年に向けてならし刈りをするだけ。希少なお茶なので、私の活動を知っていただいた方や、お茶摘み体験会などで出会った方など、興味を持っていただいたみなさんに楽しんでいただければと思っています。

丁寧に、慎重に、今年の仕上がりを気にしながらの刈り取り

東光寺のお茶は一般的な旨味は強くなく、さっぱりしたお茶なので、熱湯で入れると、ほのかにあるおいしさが負けちゃいます。冷たいお水で入れる水だしがおいしいと思います。(お茶3gに水60ml、5〜8分。)


大塚さんとの出会いは、「NIPPONの47人 これからの暮らし方 Off-Grid Life」という本に掲載されている大塚さんの活動がカッコよくて、私から連絡したのがきっかけです。耕作放棄地にたった一人で立ち向かっていった姿が、当時の自分とダブったんだと思います。無肥料無農薬のお茶づくりの大変さや販売の難しさなどをお話しいただき、野菜と一緒だなと感じました。「じゃあ、来年採れたお茶、全部私が売りますよ。だからおいしいお茶をつくってください。」って約束したんです。大塚さんの人柄があらわれている、とにかく「やさしい味」のお茶を楽しんでみたい方、「本当に健康な状態のお茶」を育てたいという理想と、農業全体を取り巻く現実の狭間で試行錯誤を繰り返しながら、これまでの慣習にとらわれない新しい発想でお茶づくりを続ける大塚さんの活動にご賛同いただける方、ぜひお試しください。2023年の東光寺の一番茶はFarm to Childrenで数量限定販売です。

タカテン大塚茶園 東光寺の一番茶 50g
Farm to Children会員価格 1,500円(税込)
一般価格 2,000円(税込)

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