ファシアとは(22) ---FAQから---

先日、Fascia research groupのウェブサイトを見ていたらFAQに目が止まり、読んでみたらちょっとびっくりしたので紹介します。というのは私が6年前に字幕をつけた「ファシアリサーチ fascia research」という番組で紹介されていたことと言っていることが違ったからです。(リンク) もうその「ファシアリサーチ」はyoutube上で削除されてしまったのですが、その番組で紹介されていたことを紹介すると;

・原因不明とされる腰痛の原因はおそらくファシアが硬くなった、あるいは炎症がおきたからではないか?
・X-ray, MRI, 以前のエコーではファシアの状態は見れないので、今まで見過ごされてきた。
・ファシアが凝り固まっているところに神経伝達物質が多くみられる。またストレスにより神経伝達物質がファシア内で放出される。
・その結果筋肉の収縮とは関係なく、ファシア単独で収縮する。
・ファシア内には受容器、自由神経終末が豊富に分布。
・つまりストレスを感じると神経伝達物質が放出され、ファシア内で受容器、自由神経終末がそれを察知し痛みをつたえる。筋肉とは別に独立して、ファシアで痛みを感じる。(痛みを伝える)
・たとえば腕にギブスを6週間固定すると、その腕のファシアは肥厚し硬くなる。それは腰痛患者の腰のファシアにも同様にみられ、痛みを感じている場所とほぼ一致する。ということから、腰痛はファシアの肥厚=ファシアの柔軟性が失われた結果起こるのでは?と推測。
・ファシアの肥厚、硬化の結果、神経が圧迫され痛みがでる、という仮定をもとに、硬くなったファシアをエンドスコープを使って切る手術も行われている。
・しかしここで疑問なのが手術の際にファシアを傷つけたら、その後ファシアの傷により、また痛みがでるのではないか?
・ファシアのリリースをマニュアルセラピーと運動でできないか研究中。
・テンセグリティの説明。
・ファシアはコラーゲンファイバーで3重の螺旋構造をもつ。
・そのファシアのまわりには水分が豊富にある。→動きの滑らかさを実現
・野生動物の話。なぜ動物は筋肉が小さいにも関わらず高い跳躍力、スピード、アジリティーがあるのか?→アキレス腱(ファシア)の長さと柔軟性とパワーによる。
・アスリートはデスクワークばっかりの人よりも腰痛が少ないのは、トレーニングでファシアの柔軟性と弾力性が鍛えられ、筋肉がスムーズに使えるからか。
・ドイツ人の理学療法士がどのようにアスリートを治療しているかの話。
・ロルフィング、マッサージ、鍼、オステオパシーなどの治療はファシアをターゲットとしているのではないか?
・経穴の80パーセントはファシアが密に存在するポイント(自由神経終末と受容器が豊富に分布しているポイントでもある)と一致する。
・鍼を刺入(おそらく表層ファシアまでの深さ)し、それを回旋することにより、ファシアが反応する。つまりファシアが鍼を巻きつけるかのようになる。(スパゲティーがフォークに絡み付くかのように)
・また鍼の刺激によりファシア内の繊維芽細胞が増殖する。
・今、どのように鍼が遠位の部位に影響するか研究中。
・ヨガをやらせたグループ、ストレッチを含めた運動をやらせたグループと、自分で本(呼吸法、リラックスしたライフスタイルなどを啓蒙した本)を読ませて実行させたグループを3ヶ月後、腰痛がどうなったか調べた。結果、ヨガは筋トレ?メディテーション?、リラクセーション?などといわれてきたが自分で運動ストレッチをやらせたグループと効果はたいしてかわりなく、ヨガはストレッチといってもいいといえた。
・ストレッチをすることによって繊維芽細胞が増殖する。
・マウスの腹の瘢痕化した傷をマッサージすると、ファシアはきれいになり、傷すらも改善した。→マッサージは表層ファシアを正常化するのに効果的だ。

でした。そして以下がFascia research groupのウェブサイトで公開しているFAQです。

Q1,ファシアには感覚機械受容器(sensory mechanoreceptors)が豊富に存在するというのは本当か?
A1:NO!(詳しくは以下に)

Q2,ファシアは感情やストレスに反応して収縮するのか?
A2:我々の実験では(organ bath experiments)証明できなかった

Q3,徒手療法家が日常的に経験する組織のリリース(tissue release)はファシアの収縮が緩んだからだと推測しているのか?
A3:我々の研究室ではそのような現象を観察していないので疑問視している。

Q4,基底質(ground substance)の中のPHが酸性化するとファシアの収縮力が高まるのか?
A4:これはありうるが、まだ明らかになってはいない。

Q5,腰部のファシア(lumber fascia)は人間の歩行において重要な役割を果たしているのか?
A5:我々は一般的なバイオメカニクスで言われている以上に腰部ファシアの弾力性が歩行に関わると提唱している。さらなる研究が続行中。

Q6,腰痛の多くのケースは腰部のファシア(lumber fascia)の微小な損傷のために起こると主張しているが本当か?
A6:そういえるかもしれないが、さらなる研究が必要。


Q7,Can you support/ fund our own research ?(これはブログ読者とは関係なさそうなので省略)


おいおい、あの「ファシアリサーチ」という番組は一体なんだったんだ・・・と思ってしまいました(笑。以下に詳しい回答の要約を書いていきます。

ーーーーーー(詳しい回答)ーーーーーー

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