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柄じゃない

確かにお酒が入っていた。
声色が違ったのもしっかり覚えている。

私は数日前、軽い鬱と睡眠障害に悩まされている、どっちつかずな彼を谷底に突き落とした。
「もう会わない」と。


今日になってみればどうだ。19時半、泣きながら「15分時間とれる?」とタイプしていた。
「どうぞどうぞ」と彼は迎合した。

「先の言動でみおを傷つけてないか、いなくなってしまった数日間はかなり落ちていた」と心を揺さぶられる。
少しの世間話をしたあと、
「そっか、最近の睡眠の調子はどうなの?」と話を変えた。

「中途覚醒なしで4時間眠れた」と帰ってきた。

我慢していた涙が溢れた。嬉しかった。とにかく嬉しかった。

そこからはもう感情剥き出しで、
「ええ、そうだったんだ、よかったね、30分ごとに起きてたのが4時間通して眠れたんだね」

私の中で目の前一面に花が咲いたかのような希望を見せられた。

「自分のことで大変なのに、そうやって人のこと心配できるみおはすごいね」
「だってAくんのこと好きだからね」
「そうなんだ、自分のこと思ってくれる人がいるだけで救われるよ」

気づいてない。彼は生粋の理性の塊だ。

様々な話をしたあと、彼が眠る時間になった。私は言った。
「A君は私のこと好きじゃないの?」
「え?さっきの好きってそういうこと?」
「そうに決まってんじゃん〜」

「俺はみおのことを好きって思うたび、みおとの関係性が潰れると思って消してきたよ。好きじゃなきゃ抱けないし。だから、うーん。分からない、自分でも」

「そっか、それで大丈夫。足元が脆いもの同士付き合ったら大変なことになるしね。私も本気で付き合いたいって思って言ったんじゃなくて、すごく吐き出したくなったの。
Aくんの負担にはなってないかな」

「俺はみおが吐き出して楽になってくれたことが嬉しいよ。し、負担にはなってない。さっき言ったとおり、自分のこと想ってくれてる人がいるってだけで救われる」

「そっか、それはよかった。
じゃあそろそろ寝ろ!21時だぞ!私も薬入れるわ!」
「わかったよ(笑)じゃあまたね、はーい」

体験したことない結末になった。
両片思いと言っていいのだろうか。そう思いたい。

そうだとしても、付き合うことはできない。私ができない。
付き合うことは、プレッシャーや責任が伴い、フラッシュバックを誘発し、体調が著しく悪くなる。


だから彼の気持ちが分かっただけでも嬉しい。
今夜は、いや、これからも、それでいいのだ。

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