バンナムフェス2ndのプライドとアイカツ!シリーズパートで起こったこと

先日、バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル2ndが延期から一年間の時を経て開催された。
どの作品のステージも見事な盛り上がりを見せたのだが、この記事ではアイカツ!シリーズ、とりわけ『プライド』の演目について筆者の見解を記したい。

行われた演目

アイカツ!シリーズパートは二部に別れて披露された。まずはセットリストを見てもらいたい。

こちらは運営公式のツイートだが、これだけでは今回起こった演目の問題点は見えない。演者の記述が無いからだ。
演者を記すと以下の通りである。


①episode Solo / せな・るか
②ヒラリ/ヒトリ/キラリ / わか・りすこ
③プライド / 田所あずさ・逢来りん
④チュチュ・バレリーナ / るか・りえ
⑤君のEntrance / 逢来りん・松永あかね・木戸衣吹
⑥アイドル活動!オンパレード!ver. / 全員(田所あずさ・STARRY PLANET☆を除く)
⑦Bloomy*スマイル / STARRY PLANET☆
⑧HAPPY∞アイカツ! / STARRY PLANET☆


統一性のない奇妙な表記ではあるが、問題としない人物は簡潔のため作中略称とした。
また、全曲フルバージョンで披露されている。

アイカツを追ってきた者ならば、この演目の異様さが分かることだろう。
全楽曲が、この演者の組み分けバージョン、有観客では初披露なのである。
しかし筆者が頭を抱えることになったのは③プライドだ。
順にキャラを整理していこう。

①:せなはアイカツスターズ!(以下スターズ!)のゆめ歌唱担当のみ。
  るかはアイカツ!のあかり、スターズ!のひめ/アリア歌唱担当。
②:わかはアイカツ!のいちご歌唱担当のみ。
  りすこはアイカツ!の美月歌唱担当のみ。
③:田所あずさはアイカツフレンズ!(以下フレンズ!)のカレン役のみ。
  逢来りんはフレンズ!のわかば、アイカツオンパレード!(以下オンパレード!)のらき役。
④:るかはアイカツ!のあかり、スターズ!のひめ/アリア歌唱担当。
  りえはアイカツ!のスミレ、スターズ!のローラ/レイ歌唱担当
⑤:逢来りんはフレンズ!のわかば、オンパレード!のらき役。
  松永あかねはフレンズ!の友希あいね役のみ。
  木戸衣吹はフレンズの湊みお役のみ。※歌唱ありのキャラのみ抜粋
⑥:田所あずさを除く①~⑤までのキャラのため略。
⑦:アイカツプラネット!(以下プラネット!)の主要キャラ8人。
⑧:⑦に同じ。

アイカツ!シリーズでは一人の人物が複数のキャラを担当していることがあるため、どのキャラで演じるのかを楽しむことが出来る。
通常、登壇すれば発表済みのキャラと曲の組み合わせは限られているため、判断は容易だ。
だが今回はアニメ内ですら未発表の組み合わせで登壇している曲もあり、混乱した人も多いのではないだろうか。
と言っても、アイカツ好きな人ならほとんどの曲で迷わずに判断したのではないかとも思う。キャラを判別する要素は曲と担当歌唱だけではない。

衣装

アイカツ!シリーズでは、演者は演じているキャラのドレスを模した衣装で登壇するのが通例だ。
歌唱担当に明るくなくてもドレスを見ればキャラの想像は難くない。
今回の衣装は以下。

①:せな(ピンクマーチングコーデ)
  るか(ライトブルーシャインスターズコーデ)
②:わか(リラフェアリーコーデ)
  りすこ(シャインウィッチコーデ)
③:田所あずさ(ラブデスティニーコーデ)
  逢来りん(パステルパープルラインコーデ)
④:るか(ホワイトスカイヴェールコーデ)
  りえ(スノープリンセスコーデ)
⑤:逢来りん(パステルパープルラインコーデ)
  松永あかね(メロディダイヤモンドコーデ)
  木戸衣吹(マテリアルサファイアコーデ)
⑥:せな(レインボーエトワールコーデ)
  わか/りすこ(②に同じ)
  るか/りえ(④に同じ)
  逢来りん/松永あかね/木戸衣吹(⑤に同じ)

⑦、⑧はキャラ/アバターが1対1で対応しているので省略する。
衣装をふまえると、
①ゆめ・ひめ ②いちご・美月 ③カレン・らき ④あかり・スミレ ⑤らき・あいね・みお ⑥いちご・美月・あかり・スミレ・ゆめ・あいね・みお・らき
と判断できる。
にも拘わらず、判断の割れた演目がある。③のプライドである。

構成の考察・不可解な点

ここまでの記述は事実を整理したものだが、ここからは筆者の考え含めて記す。根拠には乏しいことを理解しておいて頂きたい。

・なぜ③の判断が割れたのか
③をカレン・らき以外考えなかった人には寝耳に水といったところかもしれないが、カレン・わかばと判断した人がいる。筆者はどちらも思い至り悩んだが、結果としてはカレン・わかば派となった。
通例から判断するならばカレン・らきなのだが、不可解な点と構成によって違和感を覚えたからだ。

まず前提の事実だが、『プライド』はフレンズ!の楽曲であり、第2EDを務めている。そして演目後のMCでも「アイカツフレンズより『プライド』」と紹介されている。
つまり④はフレンズ!の演目であったと捉えられる。

ならばフレンズ!のキャラが演じていると考えるのは道理だ。しかし、らきはフレンズ!のキャラではなく、オンパレード!のキャラである。フレンズのキャラであるカレン・わかばの方が正しいのでは?との考えに依るのがカレン・わかば派だ。
ややこしいことに、オンパレード!はフレンズ!以前のシリーズキャラが全員登場する作品なので、らきがフレンズ!のキャラと組んでもおかしな事はない。
らきがカレンと組んだスペシャルステージと考えるのは上記した要素から考えられる無理のない判断だ。
更には同MCで逢来りんは「姫石らき役の逢来りん」、田所あずさは「カレン・らきバージョンでお届けいたしました」と発言している。
つまり④はフレンズ!出身楽曲だがオンパレード!の世界からの演目と解せる。
どうやら公式発表はカレン・らきで間違いなさそうだ。

・構成
…本当にそれだけだろうか?
ここでもう一度セットリストを見てもらいたい。
①~④、⑥はいずれもEDに採用されている楽曲であり、⑤とプラネット!からの⑦⑧を除いてEDで固められたセットリストなのが分かる。
①スターズ!第1ED
②アイカツ!第2ED
③フレンズ!第2ED
④あかりジェネレーション第2ED
⑥オンパレード!通常ED
との具合に、各作品(あかりジェネレーションは主人公計上から1作品とされている)から一曲ずつ選曲されている。
セットリストの構成を考慮するなら、③は間違いなくフレンズ!からの演目である。

ところで、バンナムフェスHPのアイカツ!シリーズ出演者の項は以下の記述である。

アイカツ!/アイカツスターズ!
霧島若歌 / 遠藤瑠香 / 堀越せな / ささかまリス子 / 藤城リエ
アイカツフレンズ!
松永あかね(友希あいね役)/ 木戸衣吹(湊 みお役)
アイカツオンパレード!
逢来りん(姫石らき役)
アイカツプラネット!
伊達花彩(音羽舞桜・ハナ役)/ 小椋梨央(珠樹るり・ルリ役)
瑞季(月城愛弓・キューピット役)/ 長尾寧音(梅小路響子・ビート役)
渡邊璃音(本谷 栞・シオリ役)/ エイミー(栗六 杏・アン役)
宇野愛海(陽 明咲・ローズ役)/ 羽野瑠華(糸井紗良・サラ役)

https://fes.bn-ent.net/

照らし合わせてみると、不可解な点が見えてくる。
フレンズ!組の二人はオンパレード!のOP主題歌である⑤の演目にしか出演せず、③に至ってはフレンズ!として紹介されている出演者が一人も出演していないのだ。
サプライズである田所あずさはともかく、③が公式にカレン・らきによるオンパレードの演目だとすると、フレンズ!の演目は存在しなかったことになってしまう。
詐欺では?

・構成から見る考察
そもそもなぜこのような事になっているのだろうか。
フレンズ!からの選曲を松永あかね・木戸衣吹の二人の演目にしていれば、この問題は起きない。
それでもこの選曲にしたということは、何か優先したい事があったからと考えられる。
つまり、セットリストが先にあり、登壇者を後から割り当てたという説だ。
別にセットリストをEDで固めても松永あかね・木戸衣吹にやってもらえばよくない?とも思うが、他のシリーズからの選曲と違い、困ったことにフレンズ!のEDにはこの二人が歌っている曲が存在しないのだ。
EDを歌っている内の一人である田所あずさはスペシャルゲストで呼ぶことが出来ると考えて、この強行策に出たのだとすると、余程通したかった意図があるはずだ。

アイカツに熱心なファンは思い当たることがあると思うが、アイカツ!シリーズはいわゆる”文脈”を特に大事にしている。
ライブでは、ただ盛り上がりそうな曲を披露するわけではなく、セットリストや登壇者の構成で成したい目標を掲げて企画しているように感じる。
それは公演によってまちまちだが、前回のバンナムフェスでは「アイカツを知らない人にも興味を持ってもらえるような、物語と楽曲の結びつき、ストーリー性を最大火力でぶつける」というような構成。

では今回はどのような意図だったのだろう。
それは「アイカツの今、アニメのその後」とでも言おうか。前回のバンナムフェスではアイカツを知ってもらったので、その後を提示しようとの意図だと考えられる。
ヒントは衣装に見られる。
最も分かりやすいのが②だろう。リラフェアリーとシャインウィッチは劇場版でいちごと美月が用いたいちご世代の結末のドレスであり、楽曲は衣装とは無関係のスターアニス時の曲、第2EDである。
この衣装の組み合わせによって、視聴者は劇場版の後であると察することが出来る。
衣装が他に用意できなかったという可能性もあるが、せなが同キャラでも①と⑥との衣装を変えていることから、用意可能な衣装の中でふさわしい物を選択していることが分かる。
①、④も同じようにアニメを経た後の二人が、衣装と楽曲の組み合わせで表現されているのである。故に始まりを告げるOPではなく終わりを示すEDなのだ。(④りえはスミレの最後を象徴するブルーエンプレスコーデの衣装が未製作)

この考えでいくと、全て未発表の組み合わせも納得できる。既存のステージの再現ではなく、その後の今を演出しているからだ。
ED知名度&人気トップであろう『カレンダーガール』が選曲されていないのも、いちご・美月のその後の演出としては合わないからと推察でき、この説の補強になっている。

⑤は事情が少し特殊で、時期を考慮するとバンナムフェス2ndが延期されなければ披露されていた演目の筆頭だったのだろう。別のイベントだが、ユニパレ!でフレンズ!のメンバーが多く出演する東京公演が中止になったのも関係しているかもしれない。
逢来りんに関してやり切れていないという思いがあるだろうことは、先日リリースされた「Ring Ring Carnival」からも見て取れる。
フレンズ!からの選曲である③の枠で松永あかね・木戸衣吹を登壇させないとなると、全員による⑦以外には⑤しか登壇出来るタイミングが無いため、フルver.未発表の『君のEntrance』でまとめたといったところか。
余談だが、この説ではオンパレード!はフレンズ!と別作品ではないという隠れたメッセージを読むことが出来る。フレンズ!出演者として発表された二人がオンパレード!からの選曲にしか登壇していないとはそういうことである。

⑤はOPではあるが、ここで幕を開けたオンパレード!もちゃんとEDである⑥によって閉じ、その後という形で読み取ることが出来るように構成されている。
『君のEntrance』は歌詞にもあるように、別れを次に向かう扉と解する歌であるため、OPながら選曲してもこの構成に破綻は起きない。
筆者は⑤を、らきが自分の世界であいね・みおと並べるようになったアニメ後の今だと思っている。

今まで触れてこなかったが、オンパレード!で唯一各タイトルと繋がりのないプラネット!からは⑦、⑧。
⑦はOP、⑧は『アイドル活動!』などに相当する代表曲である。
EDが選曲されていないため、EDで固めたセットリスト説がそもそもおかしいのでは?と考えてしまいそうになるが、これこそ最大のメッセージだと筆者は考えている。
プラネット!はテレビ放映の本編こそ終了してはいるものの、ゲーム筐体は稼働&更新中、新曲もリリースがされており、Youtubeではミラーイン☆ラボが毎週配信中で、劇場版が夏公開予定と現行で展開されているコンテンツだ。
前述では物語の展開のことを分かりやすいように「アニメ後」としたが、正確には「コンテンツの物語展開後」だろう。
コンテンツの物語展開が終わったタイトルであるアイカツ!~オンパレード!はEDを並べてその後を演出し、まだ進行形のプラネット!は「終わっていないからその後も無いしEDはまだやらないよ!」と読み取れるセットリストというわけだ。

『プライド』は何だったのか

長々と構成について語ってしまったが、この仮説では今回の演目の表現、演出に一貫性を見出すことが出来る。
だが、ここで問題になるのが③の存在である。
③を公式発表のカレン・らきと見るなら、この仮説の例外となる。フレンズ!のその後だけ描かれておらず、カレンとらきは接点が薄いために物語の想像も難しいからだ。
一応、らきはわかばとフレンズ「チアスター」を組んではいるが、『プライド』の元々の歌手であるミライ(わかばの師匠)の代役としてはいささか関係が遠く感じられる。

しかし、この辻褄を合わせられる解釈がある。無論、③がカレン・わかばの演目だったという見方である。
わかばはフレンズ!のキャラなので各タイトルからの選出としても問題ないうえ、ミライの弟子というポジションから巣立ち、真似ることから学び、ミライの代わりにカレンと並びたてる程に成長した、というストーリー性が見出せるようになる。
フレンズ!のその後の表現・演出としてふさわしいだろう。

では何故カレン・らきと発言したのだろうか。何故衣装がらきなのだろうか。
ここからは輪をかけて想像の域を出ないので、筆者もぼんやりとしか考えていないが、思いついた可能性を挙げてみる。

 1.出演者の記載をらきのみにしてしまったため
当イベントが延期されていない時点では予定しておらず、わかば役の記載が間に合わなかった。
 2.何らかの理由で衣装が用意出来なかったため
衣装で判断されることは予測できるので混乱させないためにらきとした。
 3.あいね・みおがフレンズ!の選曲で登壇しない事へのごまかし
③にらきを登壇させる事によって、各タイトルから一曲ずつの演目であると悟らせないため。オンパレード!とフレンズ!の境をうやむやに出来る。
 4.バンナムフェスではらきだから
前回のバンナムフェスで田所あずさは、らき役で出演した逢来りんに応援メッセージを送っている。その文脈を消したくなかったから。
 5.分かる人にだけこの可能性を示した
フェスなので当然アニメ作品未視聴人も大勢いる。彼らには主人公のらきである方が通りが良いと考えたから。悪魔的発想。

筆者はこれらの複合による結果だと考えているが、5が最も大きいのではないかと見ている。
つまり、バンナムフェスとしてはカレン・らきであるが、アイカツフレンズ!のフアンにとってはカレン・わかばであるという考えだ。
たしかに、フレンズ!を知っている人からすれば挙げてきた不可解な点や疑問は生まれるが、そうでない人たちには何の疑問も生じない。
だから、この構成・演出を読み取った人にのみフレンズ!/わかばのアフターストーリーが見える。そういった仕掛けだったのかもしれない。
もしそうなら悪巧みと言わざるを得ないですよ、臼倉P…

総括

バンナムフェスでの『プライド』は表面上カレン・らきであるが、アイカツ!シリーズ、特にフレンズ!のフアンにとってはカレン・わかばである。
どちらにしても不可解な点は存在する。
・カレン・らきの場合、フレンズ!の演目が存在しない
・カレン・わかばの場合、言動・衣装の不一致
筆者は後者派であるが、どちらも間違いではないと考えている。
これに関わらず、EDの文脈は存在すると思われる。
自分がより感動できる見方をオススメする。


最後に、筆者がカレン・わかば派である後押しとなった要素を記す。
逢来りんによって歌い分けがなされていて、『プライド』の歌い方はわかばだと感じたのだ。
短い時間ではあるが5/23(月)23:59まで配信のアーカイブはあるので気になった人は確かめてみてほしい。出来れば見解も教えて頂けるとありがたい。
「Ring Ring Carnival」で予習してるから分かるだろ?という挑戦状にも思えるのだ。
筆者の感じた特徴→わかばの歌い方は低めの発声で伸ばすよう。らきは高めの声で口の中で巻くように発声し、切るように歌う。
どちらですかね?

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