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現代日本のような忖度っぷり(『昭和16年夏の敗戦』)

比喩ジャックマンvol.15 忖度ニッポン

猪瀬直樹さんの『昭和16年夏の敗戦』が出版されたのは昭和58年(1983年)で、本の中で描かれている時代はもちろん昭和16年(1941年)。つまりは、わたしが生まれた頃に出版された太平洋戦争をテーマにした本、となります。


ノー忖度、ノーライフ

昭和16年夏の時点で日本の官僚はもう立派に忖度をして、それで日本は手痛い失敗を経験(太平洋戦争)し、さらに昭和58年にはそれをこの本でつまびらかに描いているのだけれども、現在の日本においても忖度っぷりは何ら変わっている様子はありません。

ノー忖度、ノーライフ」で、忖度なくして出世ナシと思ってしまっている個人と、そう思わせてしまっている空気。

キングコング西野亮廣さんが「ウソは感情ではなく環境でつく」と言っていますが、きっとそれは忖度も一緒。

昭和16年夏、日米開戦を決めるまさに日本の命運を賭けた超重要な会議の中でさえ、「開戦やむなし」という空気の中忖度が行われ、その忖度が決定打となり日本は必敗の戦いに突き進む。

猪瀬さんが執筆時に元企画院総裁に
インタビューしたときの筆談メモ


戦前と戦後

「戦前は軍国主義で、戦後は国民国家」、それが教科書で習ってきた日本の近代史。しかしながら、この本が言っているのは「戦前戦後で分断するのではなく、一続きの歴史として捉えなさいよ」ということ。

忖度っぷり、縦割り組織、偏差値主義などは、どれも戦前から存在し、今も受け継がれてしまっているいわば日本の文化的思想で、太平洋戦争を契機に変わったものではないのです。

今週から開講したNewspicks猪瀬ゼミ


「総力戦研究所」は、昭和16年に組織を横断して設置されたプロジェクトチームで、メンバーは各省の30代半ばのエース候補たち。「真っ二つに切られてもピンピンしているミミズのような逞しい不敵の精神力」を全国民が持つために総力戦を研究するのがミッションで、その中で彼らは模擬内閣を組閣し、日米戦をあらゆる角度からシミュレーションします。

出した結論は、日米戦日本必敗「ムリムリ、勝てっこない。やめようよ」です。しかもその内容は原爆投下以外はほぼ正確にシミュレートするほど優れていたと言います。

ゼミにおける「総力戦研究所がそうだったように、縦割り構造なんて取っ払って情報の中枢をしっかりつくれば未来を読むことだってできるんだ」といった猪瀬さんの言葉にはシビれました。

問題は上層部にそのシミュレーションを活かすだけの度量があるのかどうか。その後首相になる東條英機も総力戦研究所の出した報告を熱心に聞いてはいたようだけれども、ついにそれが反映されることはありませんでした。

「和をもって尊しとなす」から現代まで連綿と受け継がれてきた論争を避けようとする忖度という名のメンタリティ。ポスト平成を目指すために、しっかりと近代日本を学びたいと思うこのごろです。

#比喩 #比喩ジャックマン #猪瀬直樹 #書評

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