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どこまでも続く長い道のり

いつになったら解放されるんだろう


実家での暮らしを

私はもはやそんな風に思っていた。


過保護で過干渉で被害妄想の強い母は
何度となく私の自立を反対した。


そんな親がこの世に存在することを
娘ながらすごく不思議に思っていた。


不妊治療を進めるべく早くに結婚した三女や

そもそもずっと家にいなかった次女


2人が結婚してからというもの

残された長女の私はことあるごとに
結婚はまだかと急かされた。


勿論、親にではなく
近所住民や親戚の衆からである。


長かった祖父母の介護生活を終え

愛犬を見送り

やっと自分の人生を送れるんだな…
なんて思ったのも束の間


世話を焼く対象が居なくなって

母親の執着が私に集中するなんて
思ってもいなかった。



無事に子供が生まれて5年経つ三女夫妻は
もうすぐ実家の傍に建つ予定の家に

早ければ年明けに引っ越す予定。


もうすぐ子供が産まれる次女夫妻は
少しでも安心して子育てできるように

実家の傍への引っ越しを検討している模様。




今が最後のチャンスだと思っていた。


何度も独り暮らしの打診をしたことはあったが

反対を食らっては何度も心が折れて

金銭的な理由や
時間的な余裕

嫁に行くまでこのまま実家で過ごす
デモンストレーションもしたし

このまま今の生活を続けていても
果たして嫁に行けるのかどうか不安に駆られたりした。


それ以上に私は

このまま実家で母の監視の元
暮らし続けたら

仕事以外の何一つ自分の力でこなせない
自分で自分の世話も焼けないことによって
どんどん下がっていく自己肯定感を受け止め続けたら

いつか心か身体のどちらか

もしくはその両方が死んでしまうかもしれないと
本気で思っていたし


無事に生き延びたとしても

きっと老後母の面倒は見られない と思った。



私を手放したくない母の
賛成を得ることは不可能だったので

何度となく妹たちに協力を要請したものの


2人とも悲しいぐらいに自分の事に精一杯で

私が母と一緒に過ごすことで
どれほどのストレスを抱えているのか

それを実の妹に説明するのも心苦しいところだけど


私の自立を応援してくれる子はいなかった。





それがこの度、大どんでん返しである。



私は妹たちの集合を見計らっては

懲りずに何度も独立を打診してきた。


何故認めてくれないのか、疑問を投げかけ続けていた。




母と次女は、気学風水にハマッている。


どこへ行くにも方角を気にして

方位取りと呼ばれるタイミングでは

私と三女も言われるがままに
言われた通りの方角に向かって

お水取りスポットに足を運んで水を汲みに行く

もしくは現地で水に触れてくる という

わからない人には謎すぎる行事がある。


母なんかは特に
まるで宗教にでも入っているかのように

(目に見えないものを信じる節が強い為)

異様なレベルで気にして対処をするが


我々長女三女は 信じていないながらも
「言う事を聞かない」という選択肢を与えられない為に

行きたいところに行けなかったり
余分に回り道をしたり

日頃から気学風水に従った行動を強制されがちであった。


だからこそ今無事に生きている

というのが母の言い分だけど。


実際言う事聞いて、無事に生きて帰って来れている以上

次も選択肢はただひとつ。



12月に、

私史上最強とも言われるお水取りのタイミングがあるらしい。


会社を変わって半年経っていない私は
有休がない上に

既に決まっている出張から帰ってこれない可能性もあり

「そこでお水取りに行かなかったら人生終わり」

と言われている為に
人生が終わるかもしれない。



そんな中

私が懲りずに独立宣言を叫び続けたおかげで


「お水取りに行くより引っ越した方がいいんじゃない」


と言い出したのが次女であった。


私の知らないうちに。




その日の朝、三女親子と泊まりに来ていた次女が

私が出勤前に起きていて

みんなで朝ご飯を食べていたわけですが


三女の友人が、一人暮らしを始めるという話になったので


ここぞとばかりに
何故私は一人暮らしをしてはいけないんだと吹っ掛けた。


別の友人が
友達同士でいずれシェアハウスに一緒に住もう
という話をしているらしく

私もそこに入れてもらおう、と言い放ったところ


「それならいいんじゃない」

と言い放ったのは母だった。



なんで それならいい の。

私が家を出られないのは
今まで通りのお金を入れてもらえないと生活できないから

ではなかったのか。


色々と腑に落ちないまま家を出て

会社に着くまでのほんの僅かな時間で
またいつものように物思いに耽り乍ら


やはり私は一生家からは出られない

母の監視の元
母に一生世話を焼かれながら
母が生きている間は
一緒に過ごすしか道はないんだな、と考えながら


どうにか会社に着くまでに
自分の思考回路を仕事モードに切り替えられるように

必死の努力をしながら自転車を漕いだ。


仕事人間の私は

仕事が現実逃避の一環でもある私は

見事に仕事モードに切り替えて、一日を過ごした。


全身全霊で働いて
フラフラになって帰った私を待っていたのは

母からの衝撃告白


「お水取りをやめて引っ越しすればいい」



自立したいので家を出ようと思うと言った私に

ママはどうなるの
ママが心配だから家を出ないでほしい
と私に頼んだ次女は

私が引っ越す先に相応しい方角を調べていて



私が母に独り暮らしを打診するたびに
反対されることを相談していた三女は
今まで鼻で笑うだけだったのに

自分が引っ越す為に不要になる予定の家具を
私に引き継ぐつもりでいるらしい



「あんたが家を出るなら私は病気になってやる」
「自立したいなら私に早く死ねと願え」

という信じられない発言を浴びせてきておいて
そのことをすっかり記憶から消している母は


「いい時期にいい方角に行くことで良くなるって実感できるよ」

と、嬉しそうに


何も知らない私が絶望的な気分で働いている間
3人揃って私の物件を探していたそうだ。




こうなったらもう、気学風水様様である。


自分の望んでいた生活に変わることで
心の安定を手に入れたとしても

きっとそれは
「いい時期にいい方角に行くことで良くなった」

と片付けられるに決まっているけど


理由はどうあれ
経過はどうあれ

今より明らかに大変な生活になることは目に見えているし

今と同じ金額を家に入れてくれることを
前提条件には出されてしまったけど


実現したら本当に

私は逸れこそ本当にここからが
自分で自分の人生を歩めるチャンスじゃないかと思っている。



決して母が嫌いなわけではない

自分一人の時間が欲しいわけでもない
(母はそう思ってるみたいだけど)


自分で自分の世話を焼くという
人として最低限の自立を許してもらえなかったストレスと

それをしなくて済む環境から抜け出せなかったことによる
自己肯定感の消滅


大変な思いをしても
苦労と引き換えに手に入るはずの安心を

私はずっと求めていた。


予期せぬ展開ではあるし
私が自分なりに思い描いていた計画も
根こそぎ却下された結果ではあるけど

きっとこの機会を逃したら

もう人生は変えられないと思う。


私もここぞとばかりに物件を探そう。


途中で出張に行くことを考えると
まだ平日休みが取れない事を考えると

12月に実行に移すには時間がなさすぎる。



どうか、独立が実現して

親子の適切な距離感を把握して
(そもそもそんな物何が正しいかわからんけど)


もう少し母に優しく接したり

本来は感謝すべきところを疎ましく感じてしまう
自分自身を変えたい。



頑張ろう。

道のりはあと少し。

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