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芸術にふれる日々

先日SNSでみかけたタバコケースのデザインが佐藤直樹というデザイナーが手掛けていたこと、佐藤氏がWIRED日本版のアートディレクターをしていたこと、ちょうど群馬の美術館で作品が展示されていること。ひょんな偶然が重なり興味が湧いたので、有休をつかってグンマーは太田市美術館へ向かってみた。


2004年に佐藤氏がデザインしたタバコは関東限定発売だったらしい。「ハイレッドセンター煙草」というマッチ箱のようなスライド式に取り出す仕掛けが好きでレッド(H)を愛飲していたのが10年程前。
出典:渋谷文化プロジェクト


雑誌「WIRED」に関しては、毎号じゃないにしろ日本版からちょくちょく購読していたので、アートディレクターこのひとだったのか、とびっくり。いまもデジタル版で読んでます有難い。お盆直前の8/9、常夏の群馬は38℃という殺人的な気温。美術館が徒歩30秒だったのが唯一の救い。太田市美術館・図書館は2017/4にオープンしたてだけれど、とにかく音楽映画アートの本品揃えが半端なくこだわりを感じる。落語や名画座も開催しており、今月は「モロッコ」「若草物語」どちらも白黒映画。3階建ての建物自体、決して広くはないけれどモダンなつくりになっていて、床エアコンで足元から冷風がでてくる仕掛けはさすが。トイレひとつ、ソファひとつとっても現代アート。


さて、本命の「佐藤直樹氏展 紙面・壁画・循環」へ。

ベニヤ板に木炭で描かれた樹々、樹々。写真は「はじめの「そこで生えている。」作品の一部。とにかくずっとみていられる魔力に満ちている。数年前旅したトンガを思い出した。死にゆくマングローブ林、赤土色の地平線。あの森に住みたい…と思わせる、闇の王子も逃げだしそうなダークな美。

2階、3階とWIRED時代のアートブックや写真を回覧しつつ、ベニヤ板に緻密に書き込まれた「完成しない絵」に見入ってしまう。写真禁止だったフロアにあった作品「その後の『そこで生えている。』」は74メートルにもおよぶ大作で、絵面だけみると鬱々としそうだが暫くみつめているとすいこまれそうになる。アーティストステイトメントを読む限り、やはり震災前後でマインドに変化は現れたようだが、175枚の板に吹き込まれた息吹はわずかでも消えることはなく、「完結することは決してない。掴もうとしても掴めない。追っても追っても追いつかない。どこまで行っても完結することがない。そういうものとして、まだまだ先へ先へと続いていく」と語られている。昔は鑑賞者が見ることで絵画の世界は完成すると信じていたけれど、ただそこに在るだけで、芸術は芸術足りえる、完成も未完成も瞬間瞬間でコマ送りのように変化し、そのわずかな隙間にふれることが芸術に近づくことなのかなと、自分なりに解釈している。今回の展示は「本」と「美術」を紹介しており、このようなジャンルの区別はどこまで有効なのだろうか、と佐藤氏は自問する。「本と美術は、同じ場所から⽣まれてきているんじゃないか」「⼀番奥深いところまで潜ったら、何があらわれるのか」ー前者に関しては私もまったく同じ考えで、共通文字なのか抽象的な絵なのかというだけで、メッセージデリバリーという点では本も美術も同じ人種だと思うのだ。後者については、Deep Diveしていくにつれみえる未知の景色はときに怖く、ときに蠱惑的だ。深層に向き合い本質を妥協せずに削り出すのはクリエイター、アーティストとしてとてもむつかしいことなのだと。


展示を堪能したあとは1階のKITANO SMITH COFFEE で休憩。ブラックスミスラテ(名称がツボ)と南瓜とゴルゴンゾーラのキッシュ、しめて870円也。美味しい。美術館の半券で100円割引してもらえた。ありがたい。

カフェで1時間ほど休み読書の時間に突入。3階の映画、音楽コーナーで3冊ほど読了。夕方のりょうもうで東京へ帰宅。全席指定なので快適!

メモ:北千住駅はハトが多い

思い立ったが吉日、美術館巡りとしては最高の体験だった太田市美術館・図書館。10月20日まで佐藤氏の展示をやっているので、時間を見つけて再訪したい。もういちどあの昏い森にのまれたい…というのが本音。12月からはイタリア・ボローニャ国際絵本原画展もはじまるので楽しみがつのる。


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