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天才作家の妻 40年目の真実

恵比寿ガーデンシネマで鑑賞。仕事がぶっちぎりでまったく映画館行けてなかったので、ひっさびさの新作。正月の「来る」以来です(雪の華はノーカン)ネタバレ感想です。

あらすじ:現代文学の巨匠ジョゼフがノーベル文学賞を授与されることになり、ジョゼフと妻のジョーンは息子を伴い、ノーベル賞の授賞式が行われるストックホルムを訪れる。しかし、そこでジョゼフの経歴に疑いを抱く記者ナサニエルと出会い、夫婦の秘密について問いただされる。実は若い頃から文才に恵まれていたジョーンは、あることがきっかけで作家になることをあきらめた過去があった。そしてジョゼフと結婚後、ジョーンは夫の影となり、世界的作家となる彼の成功を支えてきたのだが… 映画.comより

感想:こうはなるまい


公式サイトが「天妻」 http://ten-tsuma.jp/ なのです。このダサさ加減、たまらないね!

名優グレン・クローズ&ジョナサン・プライスが夫婦を演じてるのですが、ボンクラ扱いされる息子デイヴィッドにマックス・アイアンズ。なんとジェレミ・ーアイアンズの実息子です。インディペンデント作品な割にキャスティングが豪華。

作中何度も抱き合うふたり。絵になる夫婦

とにかく、感情が忙しい映画だった。老夫婦のロマンスかな?あれ、ヒューマンドラマ…いや、サスペンスほどはいかない。なんだこれ。ブラックコメディか。妻は昔、才能ある小説家の卵だったけれど当時女流作家はまともに扱われないため、夫の名前で本を出版。夫がプロット、妻が構成・編集まで手掛けた小説はベストセラーを重ね、ついにノーベル文学賞を受賞。ストックホルムに向かう途中、ジョーの伝記を書きたがるジャーナリストに「ねぇ奥さん、ゴーストライターである事実を公開したら?」と詰め寄られたり、父を尊敬するがあまりこじらせてる息子と衝突したり、授賞式の前日に孫が産まれたり(おいおい)ジェットコースター感のある舞台劇でした。

夫婦や子どもたちとの描き方がリアル。体つきもや寝床のやりとりも、なんとはなしに言った言葉がおっそろしい地雷だったり、我慢に我慢を重ねた妻の爆発具合とか、浮気の道具にクルミをいっつも忍ばせてるジョーの情けなさとか、人間、こうはなりたくないものだな、と真顔でみていた。

底意地悪そうなジャーナリスト、ナサニエル(クリスチャン・スレーター)の革ジャンとダークグリーンのタイとシャツがツボでした。クリスチャン・スレーターって「薔薇の名前」でコネリーの弟子やってたひと。キャリア長いね。あと若きジョーン(アニー・スターク)がグラマラスで惚れた。アニーってグレンの実娘ですって。頬骨の形といい、首から胸の丸みといい、似てるわけだ!

不倫から結ばれた若きジョーンとジョー。この角度、グレンそっくりですがな

稀代の文筆家、ジョーはなんとも愛すべき情けない男で、前妻キャロルとの関係性からみても、家庭にじっとしていられないタイプなんだろう。自分の作品内容をおぼえてないとか、かつて教授を務めあげていたとは思えないていたらくぶり。浮気の時も、相手が誰であろうとアプローチ変えずにウン10年。勝ちのパターンから抜け出せぬままなのかと思うと、うんと若い子しか相手できないのも納得。カメラマンの彼女との逢引きはジョーに同情する瞬間だった。人生の最高潮でこの世からおさらばとは、神様は優しいな…


ナサニエルとバーで語る場面はジョーンに惚れた。信用ならないひとね、というとこが好き。信用できる人と秘密の話はできないからね。帰りの機内でCAと話すジョーンのみを映していくやり方、バーでジョーンの背後に絵画のような人物を映すやり方、舞台劇のような、美術のような、なんともいえない映像表現でした。とても好き。物語はごくごくシンプルで、カップラーメンつくってる間に説明できるのに、この技術。すごい。

主演女優賞確実、とまでは思わなくとも、グレン・クローズのガラスの意思、雪の華のような美しさ(マジで)タバコの仕草など魅力テンコ盛りで、外見はこんな風に歳を重ねたいと思いました。まる。

おまけ:恵比寿ガーデンシネマにあったジョーン。お上手!

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