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ストライカーとして前進することが大好き。今治のために全力を尽くす#FC今治でプレーする ヴィニシウス・アラウージョ

ユニフォームを引っ張られながらも倒れることなく、ゴールに向かって突き進む。デビュー戦となった奈良クラブ戦で、ヴィニシウス・アラウージョ選手が見せてくれたラストプレーは圧巻でした。経験豊富で、実績も十分な頼もしいブラジル人ストライカーが、昇格を目指すFC今治への100%の貢献を約束してくれます。

FC今治の一員になったのが9月のことでした。その前に所属していたのがカタール・リーグのウム・サラルで、リーグが6月に終わってから、どのようなプラン、選択肢とともに準備をしていましたか?

カタール・リーグが終わったあと、ブラジルに帰って家族との時間を過ごしていました。今回、その時間がいつにも増して大切な意味を持っているのは、奥さんが2人目の子どもを妊娠しているからです。それからパーソナルトレーナーとともにトレーニングを再開して、オファーに応えられる準備をしていました。

カタールを含めていくつかのオファーを受け、その中にはJ1のチームもありました。しかし奥さんの体調が少し安定せず、タイミング的にそれらのオファーは見送ることになりました。奥さんの体調が良くなったときに届いたのが、FC今治からのオファーだったんです。当初は日本に戻る予定ではなかったのですが、FC今治のプランがとても良いものだったので、受けることにしました。

私はモンテディオ山形、FC町田ゼルビアで3年間プレーし、日本に暮らしていたことも、今回の決断の理由の一つです。安心して暮らせる日本のことが、私も奥さんも大好きですからね。

FC今治にはJ2、そしてJ1と昇格していくためのしっかりしたプランがあり、それを実現させるための良い選手が集まっています。実際、今シーズン、昇格する可能性が十分にありますからね。それから日本は、家族と暮らすにはとても良い環境です。今は、自分が先に今治に来て1人で暮らしていますが、こうしたことが決め手になりました。

J3というカテゴリーについては、どう判断されましたか?

気になりませんでしたね。繰り返しになりますが、FC今治のプランはとてもしっかりしたものです。近い将来、J2、J1を戦う可能性は非常に高いと判断しました。

そして実際にプレーするようになって、J3は決してレベルの低いリーグでないことがすぐに分かりました。それどころか、勝っていくことがとても難しいリーグです。勝点差が詰まっている今の順位表が示す通り、チーム同士の力は拮抗していて、本当にわずかなことが勝敗を分ける。FC今治でプレーすることに、大きなやりがいを感じていますよ。

昇格を果たせるかは、自分たち次第です。ファンやサポーターのみなさんが、チームに本当にポジティブなエネルギーを与えてくれているのは、とても力になっています。私がFC今治の選手として初めてプレーしたのはアウェイの奈良クラブ戦(第26節△1-1)でしたが、たくさん応援に駆けつけていただいたし、奈良まで来ることができなかったみなさんの応援も感じることができました。

今治里山スタジアムにポジティブなエネルギーが満ちあふれているのは、言うまでもありません。ここに来てまだ1カ月しか経っていませんが、チームと街が一体になっているのがよく分かります。

プレシーズンのキャンプ抜きで、シーズン途中に加入するのは簡単ではないと思います。しかも、アラウージョ選手もよく知っているように、日本の夏はとても暑いですからね。

確かに、その大変さはありました。日本のサッカーは、練習も試合もとても強度が高い。来る前から、最初は難しくなるのは分かっていました。

しかしコンディションは上がってきていますし、これから秋になって気温も下がってきます。その意味で、夏の終わりに今治に来ることができたのはラッキーでした。チームメートと同じ強度でプレーするためにも、できるだけ早くコンディションを100%にしたいですね。

コンディションを万全にするために心掛けていることは?

毎日、チームの練習が終わったあとにフィジカルを強化するジムワークをしたり、食事に気をつけています。重要なのはけがをしないことで、そこは本当に気を使っていますね。シーズンも残り少なくなってきて、ここでけがをしてしまったら大変ですから。

居残りでシュート練習をしている選手たちの中にアラウージョ選手の姿がないのは、フィジカルを上げるためのトレーニングをしているからなのですね。

もちろんボールを使ったり、シュートの練習をすることも大切です。でも今はコンディションが最優先です。それから、試合の後半に出場することが多いのもあります。ピッチに入った瞬間から爆発的なパワーを出す必要があるし、そのためにもジムでのトレーニングが大事になってきます。

今治で一人暮らしをしながら、食生活はどうしていますか?

夕食は基本的に自分でつくっています。その方が栄養などいろいろコントロールしやすいですからね。

食事で一番、気をつけているのはバランスよく食べることです。それから、体を強くすること。いくらバランスよく食べても、体重や筋肉が落ちてしまってはだめですからね。次の日の練習に必要なパワーを補給するために、気をつけながら食事しています。

得意料理はありますか?

難しいものは作りません。簡単に味付けするだけですが、ほぼ毎日、鶏肉を食べています。主食はごはんとジャガイモが交互で、それからサラダは絶対に食べるようにしています。

FC今治への加入がリリースされて、SNS上では山形や町田のサポーターのみなさんが、「アラウージョ選手は家族が来日して一緒に暮らすようになるとゴールを量産する」と発信されていました。

本当ですか(笑)? 山形の1年目(2020年)は新型コロナウイルスの影響で家族の来日が遅れて、特に難しいシーズンだったんです。愛する大切な家族と一緒にいると、やっぱり落ち着くし、安心もします。ポジティブなエネルギーももらえますし。実際、そのおかげでゴールを決めることができます。

今シーズン中に、ご家族は今治に来られますか?

それが、出産の予定が10月なんです。それを考えると、今シーズン中はちょっと難しいですね。でも、大丈夫。インターネットがありますから。まるで家族がすぐ隣にいてくれるような環境で暮らすことができていますよ(笑)。

トレーニングが終わって、どのような時間を過ごしていますか?

ほとんど家の中で体を休めています。インドア派なんですよ。出かけるのは食料品を買いに行くときくらいで、ずっと家にいて映画を見たり、本を読んでいます。

映画はアクション系のものが好きです。気分がスカッとしますからね。それから今、読んでいるのは、バスケットボールのスーパースター、マイケル・ジョーダンの伝記です。

まだ半分ほどしか読んでいませんが、彼がいかに努力家であったかに驚かされます。そして常にポジティブで、大きな目標を達成するために小さな目標を掲げ、ひとつひとつクリアしていった。だからこそ、あれだけの偉大な選手になることができたのだと納得です。

勝負へのこだわりも強烈で、勝利のためのスピリットがすさまじい。読書を通してできる限り多くのことを彼から学び、吸収して、試合で実践したいと思います。

今治の街については、どう思いますか?

とても気に入っています。そこまで大きな街ではありませんが、優しくて、温かい人ばかりで、外から人を受け入れるのがとても上手な街だと感じます。

もちろんサポーターのみなさんは、常にポジティブに優しい言葉を掛けてくださいます。私は都会より、今治のように温かく、落ち着いた街が好きなんですよ。

デビュー戦となった奈良戦では、1-1で迎えた終盤に交代出場。相手選手にユニフォームを引っ張られながらも力強くボールを持ち上がり、最後は千葉寛太選手のシュートにつなげたラストプレーのインパクトは強烈でした。一方で、ボールを持つとシンプルにパスするプレーも少なくありません。どのようにバランスを取っていますか?

今のコンディションが関わってきます。自分のプレースタイルは、奈良戦の最後のようにグイグイと前進することです。

もちろん状況を見て、パスを出す方が効果的な場合もあります。ですが、ストライカーとして前進するのが大好きなんです。どんどん自分から仕掛けられるように、早くコンディションを100%に戻したいですね。

FC今治では、たくさんの国の選手がプレーしています。トレーニング風景で印象的なのが、同じブラジル人のマルクス・ヴィニシウス選手だけではなく、他の外国人選手とも親密にコミュニケーションを取っている姿です。

チーム内での関係性はとても重要です。ヴィニや言葉が通じるスペイン人のジョン(セランテス選手)はもちろん、オランダ人のラルフ(セウントイェンス選手)、ポーランド人のフィリップ(ピシュチェク選手)、そして日本人選手とのコミュニケーションを、私は非常に大切にしています。

私たちはFC今治という家族なんです。毎日のトレーニング、週末の試合と、実際の家族以上にチームメートと一緒に過ごす時間は長いですからね。家族のような関係性を持てないと、なかなか物事はうまく進んでいきません。勝利するためにはディティールが重要になってきますが、家族のような関係性も、そんな細部の一つなんです。

J2昇格に向かって勝負の終盤戦です。意気込みを聞かせてください。

ここから本当にプレッシャーがかかってきます。その中で、自分たちからバランスを崩してはいけません。この先は、よりミスが少ないチームが上位に生き残っていくと思います。ホームでは絶対に勝たないといけないし、だからといってアウェイで負けていては意味がない。ホームで勝ちながら、アウェイでも着実に勝点を積んでいきます。昇格に向かって、前へ、前へ、進んでいきましょう!

取材・構成/大中祐二

以下の動画は、ヴィニシウス・アラウージョ選手がラジオ番組「FC今治のカナイがイカナイト」に出演した際の放送アーカイブです。ぜひご視聴ください。