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MEXのETH調達レートが示唆するもの (前編)

Twitterの方で「記事を書こうかな」、と呟いたら、しょーぐん氏とNISHI氏に煽られまくって後に引けなくなってしまったのでがんばる。

なお、証券会社を辞めたので遠慮せず「断定的表現」を使っていくが、世の中に100%は無いので全て「可能性が高い」程度に聞いておいてほしい。

MEXのETHはド変態

まずはこちらの過去記事を一瞥いただいて。

大事なのは 1.00ETHをMEXで取引する為の約定枚数は

N = 1/B x 1,000,000
N : 約定枚数
B : 米ドル建てBTC価格

であり、また損益は

 ( P' - P ) x 100sat x N
P : エントリー時のETH価格
P' : 手じまい時のETH価格
N : 約定枚数 (ショートの場合はマイナス)

で計算される。

つまり、この記事で言わんとしている事は、BitMEXでETHUSDを買う事による経済効果と、現物のETHを買う事による経済効果は全然別物ですよ、という事だ。

(レートを最近のレンジに更新して) 取引例を試算すると、

現物:
1ETHを$100で1枚ロング。$150に値上がりしたときに売却すると、$50儲かる。(とっても単純)

BitMEX:
(XBTUSD価格が $4000 だとして) 1ETH = 250枚を$100でロングエントリー。

再掲
MEX ETH必要枚数 N = 1 / BTC価格 B x 1,000,000
N = 1 / 4,000 x 1,000,000
N = 250

$150に上がった時にポジション解消すると、0.0125BTCの儲け
(後で書くけど、0.0125BTC=$61の儲けっぽい。)

損益
Profit = (P' - P) x 100sat x N
Profit = ( 150 - 100 ) x 100sat x 250
Profit = 0.0125BTC

で、MEXの場合、もしBTC価格が$4000から変わっていなかったとすると$4000 x 0.0125 = $50 なので収益が現物と同じになるのだが、問題は1ETHが$100→$150に上がるような局面で、BTC価格が$4000にステイし続けるだろうか? という疑問が残る事だ。

BTCが上がればETHも上がるよね

ここで、BTC と ETH を単純に線形で回帰分析してみよう。
結論を先に述べると、読者の皆様の感覚通りと思うが、とにかくBTCとETHの相関は高い (BTCが上がればETHも上がる!) 。

上段のグラフは、BTCの日次リターンを縦軸に、ETHの日次リターンを横軸に取ってx-yプロットしたものである。また、中段にはBTCの価格とETHの価格を同じくx-yプロットした。さらに、日次リターンについて、1カ月ローリングの相関係数をF列に取った。これらのグラフからみてわかる通り、BTCとETHの相関は極めて高いと考えてよい。

乱暴に価格の回帰式からETH=$150の時のBTC価格を見ると、$4900あたりに着地しそうである。(グラフ見る限り、あながち外れてない!)

MEXのETHロングは常に現物投資より有利?!

先の例では、MEXでは0.0125BTC 儲かった事になっていたが、もし1ETH=$150の時に1BTC=$4900だとすると0.0125BTC=$61儲かった事になる。現物なら$50しか儲からない相場環境で$61儲かるのだから、じゃぁ、現物買わずにMEXでETH買えばいいじゃん?と考えるのは自然な流れだ。

他方、もし相場が逆に行っていたとするとどうなったか?

現物:
1ETH = $100 で買い、$50 で売却したとして、$50の損失

BitMEX:
1ETH = $100 で250枚買い、$50で売却したとして、0.0125BTCの損失。
先ほどの回帰式に入れると、ETHが$50の時、BTCは$2300 の為、$28の損失。
(乱暴な回帰につき、有識者の突っ込みはご遠慮ください・・・)

あれ?今度は現物$50損失に対して、MEXは$28の損失で済んでるの?

やっぱりMEXのETHの方が現物投資より有利なのだから、現物買わずにMEXでETH買った方がいいじゃん、となる。

MEXのETHが現物よりも高く取引されるワケ

もう答えは上に書いてしまったが、つまりMEXでETH買うと現物よりも有利なのだ。もうちょっと言うと、MEXでETHを買って、信用取引とかで現物ETHをショートして両建てポジションを作ると、常に儲かるポジションが作れてしまう。ETHが値上がりし、BTCも同時に値上がりした場合、MEX ETHロングからの収益は現物ETHショートの損失を凌駕する。またETHが値下がりし、BTCも同時に値下がりした場合には、MEX ETHの損失は現物ETHのショートから補填され、さらにお釣りが来るのだ。しかし、そんなおいしい話が転がっていたら、みんなやっている。ましてやBitMEXは世界中から猛者が集まってきており、超絶の流動性を誇る市場だ。そんな投資機会が転がっている筈はないのである。

つまり、MEXのETHをロングし、現物のETHをショートするという禁断のポジション取りには「痛み」が伴わなくてはならない。それが「調達レートの支払い」だ。つまり、

1) MEX ETHのロング対現物ETHのショート、両建てポジションからの儲け
2) 現物ETHショートの為の現物ETH調達レートの支払い
3) MEXロングで負担する調達レートの支払い

の期待値がプラマイゼロに釣り合う所で調達レートが定まると筆者は考えている。

後半へ続く・・・

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