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メランコリックテクノと、The Streets 「FOR THOSE I LOVE」 【ANTENA #10】

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※投稿時点

近しい人が突然いなくなってしまった時、愛する人はいつかいなくなってしまうということを強く実感する。
そして少しの時間を開けて大事なことを忘れた頃、人は日常に帰っていく。

今回紹介するのはイギリス・ダブリン出身のプロデューサー、デビッドバルフェによるソロプロジェクト「For Those love」(私の愛する人のために)。
今年3月に同名タイトルのアルバムがリリースされデビュー作となったが、2019年に完成した作品らしく、今回フィジカルリリースされたことで正式なデビューとなった。

彼の音楽性はクラブミュージックやヒップホップなどからインスパイアされた陰鬱的だがオシャレなエレクトロニカに、ザ・ストリーツを彷彿とさせるラップのようなアクセントの効いたスポークンワード(語り)が乗っかってくるというなんともクールなサウンドが特徴。

本作は、18歳の頃から音楽活動をともにしていた友人の死を悼み、彼へのオマージュを込めたもの。美しくもなんともメランコリックな作品はそんなバルフェの心境をアウトプットしたものになっている。

このように自分にとって悪いことのように思えるものをアートして昇華することで、内に閉じ込められていたものを解放するし、いわゆるセラピー的手段としても用いたり、打算的でない共感を経ることもできてしまうのは芸術活動(幅広い)の素晴らしいところだと思う。

元々、パンクバンドに所属していたようだがバルフェのこのプロジェクトでは、語るように歌うスポークンワードを、アーバンなエレクトロニカ(テクノ)とUKガレージの上に乗せて表現する。
彼の独特なアクセントで語られる言葉は、The Streetsを彷彿とさせるようなラップ的でもあり、テクノによく登場する無機質なアナウンスのようでもある。

ちなみにSpotifyにはインストゥルメンタル版のアルバムを配信されているので、純粋にテクノ/エレクトロニカ作品として聴いてみても面白いかもしれない。

彼の映像作品を見ても、Youtube上にアップされた16:9の映画画角、モノクロで撮影され、色という色彩情報がないことでより楽曲のクールさとメランコリックを引き立てる。

NMEの記事で発見して依頼ここ数日ずっと聴いているのだが、テクノやエレクトロニカにとどまらず、ロックやHIP-HOP好きにも幅広く受け入れられてしまうアルバムだと思う。
あまり陽気な夏に聴くという感じでもないが、ちょっと内省的な気分の時のお供にぜひ聴いてもらいたい作品だ。

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