遺失物ヤギの話。

ある日の朝。とある牧場の柵に二頭のヤギが繋がれているのが見つかる。

牧場でもヤギは飼っているが、もちろん牧場のヤギではない。 

年をとっていそうな年期の入った角。去勢していないオス2頭。しかし角の先は落とされており、目立った怪我もしていない。去勢していないオスというのは気性が荒かったりと手がかかるものらしいのだが、この2頭は年のせいもあってからとてもおとなしいし、人に慣れている。

きちんと管理飼育されていたようなので、長く飼っていたのが飼い主の病気などで飼育できなくなったために捨てられてしまったのか?朝方、二頭のヤギを連れたおじいさんが目撃されたとの情報もある。

しかし、年とった去勢をしていないオス二頭。飼育スペースも無限ではない。そこの牧場ではあちこちから家畜の預かりもしているため病気の心配もあるのでいきなり一緒にはできない。出所不明だし。もし具合が悪いせいで捨てられてしまったのなら、他の動物に近づけるのは絶対駄目。

迷い動物は警察の管轄。連絡された。

警察は遺失物として管理するのだが、生き物の管理は委託というみちをとることもある。小動物ならまだしもヤギ。しかも二頭。いきなり飼えるものではない。(私としては地域ヤギとして警察署の前辺りに繋いでおいてもいいのでは?とか思っちゃったりしたが)

いくつか近くの動物園や農家などに委託できないかと連絡したようだが断られたようだ。

でも仕方がない。もし飼い主が見つからなかった場合、そのまま引き取ってもらう流れになるのが一般的だ。子供産まない、乳もださない、年寄りの去勢していないヤギは魅力にかけるらしい。今の時期は子ヤギが産まれている時期だし、まだ増えるかもしれないところに預かるのも難しい。病気の心配はどこも拭えないだろう。

ヤギの行き先が見つからない。結果、あろうことか猟友会へ話が回ってきた。動物関連ならという発想なのだろうか?よくわからないが、あの人たちにヤギ預けたら行く先は……。

猟友会の中でヤギを飼っているということで小さな牧場へ話が回る。正直引き受けるには難色を示していた。でも、日頃お世話になっている警察にいい顔をしておいたほうがいいだろうという下心もあり預かることになった。

猟友会の方たち早速バラそうという雰囲気になっていたようだが、正式な警察からの預かりものである。バラしてはいけない。

おとなしいし、ヒゲ立派だし、しばらくいていいんじゃないとも思ったが、預かり期間が終わったら飼っているつもりはないようだ……。

時折、ヤギを売ってもらえないかと話が来る。ペットにしたい、除草ヤギにしたい。その他に外国人が来た場合はだいたい食肉だ。故郷の味が食べたくなるのだろうか?話が来ることがある。ヤギは美味しいらしいが。

そんな人たちに連絡する運命がなんとなくだが見えていた。

年寄り、去勢していないオス、長毛種、体格小さめ。あまり食肉にも向いていなさそうだけど。

ブロッコリーの茎をあげながら行く先を憂う。さながら動物園でネコ科の大型肉食獣に食べられる運命にあるヒヨコのふれあいコーナーを眺めているようだ。ちゃんとちびっこに今後についてを写真パネル付きで説明しろよなと見るたびに思う光景だ。

可哀そうだけじゃどうにもならないのが家畜なのだけれど。

しかし幸運が、警察から飼い主が見つかったという連絡があった。飼い主がヤギが逃げていることに気づいて警察に問い合わせてくれたようだ。飼育場所は普段人がいなかったので逃げたのに気付くのに時間がかかったらしい。

結局、捨てヤギでなく迷いヤギだった。

最初にヤギを連れたおじいさんは一体……?迷いヤギを見つけた人が牧場に連れて行ったのか?そこもよくわからないが飼い主は見つかって引き取りたいとのことで早々に引き取られていった。

良かった。捨てられたヤギはいなかったのだ。

バラされる前に間に合って良かった。良かった。

小耳に挟んだ話だと、その昔、食肉になる運命のところをかわいそうだからと引取られた経緯があるそう。だから2頭ともオスなのか。また難を逃れたらしい2頭。天寿を全うできるのか。

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ケノユメ

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