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林業女子目線で林業機械・器具を改善してみよう!

こんにちは、林業女子会@高知「現場部」です。

林業現場で日々木を育てて伐っている女子や、林業に関心のある女子で「林業現場」についてあれこれ語ったり、悩み相談をしたり、ツッコミを入れています。

林業の道具って、重たくないですか!?

これまで2回の「現場トーク」を通して出てきた思い・・・それは、

林業機械とか道具って、ちょっと重たすぎじゃない・・!?

最近は、林業現場にも油圧ショベルに便利なアタッチメントを搭載したマシーンが入ってきて、大きくて重たい木材(丸太)を伐ったり運んだりする作業は機械化が進みつつあります。山の中に林道がついて、何時間も歩かなくても車に乗って現場へ行くことも多くなりました。

でも、どうしても人力で運ばなければならない滑車とか、燃料タンクとか、いろいろな道具は、まだまだゴッツくて重たいんですよね・・・!

これって、林業女子だけじゃなくて、林業男子にとってもシンドイ事だと思うんです。

林業で使う機械や器具がもうちょっと軽くて使いやすくなったら、林業もはたらきやすい仕事になるんじゃないかな。そう思って、まずは器具についての勉強と意見交換をしてみることにしました。

女子がはたらきやすい仕事場は、男子にとってもはたらきやすいはず!

第3回の現場トークの様子をお伝えします。


女子目線で、林業機械・器具の改善!

今回の現場部会は、2019年5月25日(土)に開催しました。

この日の現場部会にご協力いただいたのは、土佐山田にある高知県立森林技術センター

林業に関する研究や指導をされる機関で、日ごろから研修などでお世話になっているメンバーも多いです。すぐ近くには、高知県立林業大学校もあります。

はじめに、高知県立森林技術センター森林経営課チーフの山﨑敏彦さんに

「各種けん引具および器具の取り扱いと体験で学ぶ力学について」

というタイトルで、林業現場で使うさまざまな道具、とくにワイヤなど架線を使って集材するための器具について基礎知識を教えていただきました。

(むむ、難しそうなタイトルです)

この日の参加者は、高知や岡山、愛媛の林業女子、そしてその家族やお友達の林業男子もご一緒に。

まずは架線集材の原理から。模型を使って実演してくださいました。

日本の林業では急峻な地形が多いために、ワイヤロープを山に張り巡らせて丸太を吊って運んでくる「架線集材(かせんしゅうざい)」という方法が発達してきました。ワイヤを何本張って、どんなマシン(搬器)をつけてするかなど、いろいろなやり方があるんですね。

とくに高知県は山が険しいので、昔から架線集材の技術が高いといわれているんですよ。

↑これは「H型」という高知発祥の特殊な架線の張り方を説明するジオラマです。UFOキャッチャーのように自由自在に位置を動かして丸太を集めることができる仕組みです。

※その横でユンボのおもちゃに夢中な未来の林業男子くん、今日は林業女子のママと一緒に参加中。

さて、この架線を張るためには、予想以上にたくさんの器具が必要です。

何tもある重たくて巨大な丸太を安全に吊り上げるためには、ワイヤにどんな大きさの力がどの方向にかかるか計算しながら、滑車を使って力を分散させたり方向を変えたり。

「ガイドブロックが負担する力はロープ内角が狭くなるほど強くなる」

「主索の張力が支柱に及ぼす力は内角の大きい方へ倒れようとする」

「ガイドブロックを取り付ける時はスリングの長さを巻き付け径の9倍の長さにするのが理想」

などなど・・・途中からまるで物理の授業になり、林業は肉体労働と思いきやとっても頭を使うお仕事なんだということを、あらためて痛感しました。

だんだん頭がこんがらがってきたところで、外へ出て実際に器具に触れましょう!

林業器具に実際に触れてみよう

ここからは、さっき習った器具に実際に触れながら体感していきます。

日頃から現場で扱っている林業女子もいれば、初めて触れる人もいます。

おぉぉ!倉庫にズラリと並んだ色んな形の器具たち。

写真で見るだけでは使い方がさっぱりわからなかった器具も、山崎先生が実演してくれると、ようやく仕組みがわかってきました。

しかし、持ってみるとどれも重たいですね・・・!

林業女子が持ってみると、まるで大きいカバンのようではありませんか(笑)

これを持って、ほかの荷物もどっさり持って山の斜面を駆け上がると想像すると、少しゾッとします・・・。


林業女子A「チルホールってこんなに重たいんですね!小さいのでも7kgもある。」

林業女子B「そうそう。しかもチルホールを使うにはワイヤを張るのに滑車(数kg)も必ず2つセットで要るから、さらに重くなっちゃうんだよね。」

林業女子C「かかり木1つ処理するのに、いちいちこんなに重たい物を運ばなきゃいけないのは、しんどいよね。特に間伐現場だとかかり木はよく発生してしまうし。何とかならないのかな~?」


素朴なアイデアや疑問をぶつけてみよう

林業女子「やっぱり、林業で使う器具は軽い方がいいと思うんです。
たとえば鋼鉄のワイヤロープ(写真右)に代わって最近普及してきたのが、樹脂繊維でできた繊維ロープ(左)。ワイヤの1/6くらいの軽さだし、柔らかいし、とっても扱いやくて助かってます!
チルホールでは、繊維ロープは使えないんですかね?」

山崎先生「チルホールにロープを通すときに、繊維ロープだと柔らかいので通らないのが問題です。また、操作するときに潰れてしまって、うまく噛ませることができないかもしれない。」

林業女子「確かに。でもロープを通すときに、現場でシュッとふりかけて繊維ロープを固められるスプレーとかがあったらいいのにな!」

一同「それは面白いね!」


林業女子「あとは、巨大すぎる滑車!どうにかならないのかな。
ほかの産業では技術開発が進んでいろいろなことがデジタルや自動化になったり、省力化されているのに、林業の世界ってまだまだとってもアナログ。」

山崎先生「丸太のように重たい物を扱うには、それだけ大きくて頑丈な器具がどうしても必要になってしまうものではあります。」

林業女子「それなら、重たい器具を運ぶためのドローンを開発した方がいいのかも、という議論もありますよね。」

林業女子「ただ、そうすると今度はドローンがどんどん巨大化していきそうだけど(笑)」

山崎先生「ちなみに海外では、上の写真のように、こんなにおしゃれでコンパクトなものも発売されています。」

林業女子「え~、おしゃれ!!アウトドア用品みたい。」

山崎先生「日本製の滑車は金型プレスで作っているものがほとんどなので、ある程度量産しないとコストが合わないという事情もあります。新しいものを開発するにはそれだけのニーズが必要です
そもそも林業器具を作っている会社が全国的に減少してしまっているのですが、高知県は珍しく2社もメーカーがありますので、恵まれていると思います。」


「繊維ロープ」を例に考えてみよう

ここで講義室に戻って、繊維ロープのメーカーさんからロープの解説をしていただきました。

ロープ加工技能士1級の方による、ロープ加工の実演です。繊維ロープはワイヤと違って普通のハサミで切ることができ、ロープの中にロープを通すと摩擦で固定できるので、自分で加工して輪っかを作ることもできる優れもの。

軽くて扱いやすいというメリットの反面、摩耗や熱に弱いといった弱点もありますが、それをカバーする新商品も開発されているそうです。

林業女子「繊維ロープも、出始めた頃はワイヤの何倍もの値段だったし、重たい丸太を扱うのに強度は大丈夫なのかという意見もあったけど、実際に使ってみたらもう手放せない!リピート率は100%だと思います。」

山崎先生「繊維ロープはその扱いやすさはもちろんですが、万が一ロープが切れた時にも、ロープがはじけて飛んでこない、人に当たってもダメージが少ない、という安全面でのメリットもありますね。」

林業女子「ワイヤロープは、切れた時に大怪我につながったという話も聞いています」

山崎先生「繊維ロープは当初は価格が高かったですが、需要が増えることでだいぶ安価になりました。
もし新しい林業器具や資材を開発するとなると、出だしはどうしても値段が高いものになりますが、それでも誰かが声を上げて開発していくことが必要なんでしょう。」

林業女子「こんな器具がこのくらいの値段であったらいいな!というイメージはあります。メーカーさんに協力していただきながら、林業女子会で何か一つは新しい器具を開発して形にしたいと思います!」


まとめ

今回は高知県立森林技術センター、そして林業器具・資材メーカーの林業男子のみなさまにもご協力いただきながら開催することができました。

・林業器具の基本的な知識を勉強しました

・実際にいろいろな器具に触れて体感しました

・林業女子目線から意見交換ができました

ここに書ききれなかった内容もありますが、これからも現場部会を重ねて、何か一つ、新商品を作りたいと思います!

部会の後は近くの古民家レストランでランチ会♪
真面目なお話も、まったりお楽しみも大切に。

林業女子会は、林業のプロだけでなくすべての女性の参加を歓迎しています。興味のある方はfacebookでイベント情報をチェックして、参加してくださいね、待っています!


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