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高知の林業女子13名で本音の「現場」トークしました<第1回>

はじめまして、林業女子会@高知です。

私たちは、林業に従事していたり、関心がある女性でつくるグループ「林業女子会(りんぎょうじょしかい)」です。

とにかく森や木や、林業が好きな女子の集まりです。世の中にはマニアックな”女子会”もたくさんありますが、そんなワンカテゴリと思っていただけたらいいと思います。

林業女子会は、2010年に京都で発足してから各地にジワジワ広がり、今では日本国内23の都府県と海外1団体を合わせて、ぜんぶで24箇所になっています。

その活動目的は、

①林業の魅力を伝える情報発信

②林業女子どうしのネットワークづくり

の2つですが、活動内容は基本的に自由なので、地域によってとてもバラエティがあります。詳しくは林業女子会ポータルサイトもご参照ください。

●どんな人がいるの?
林業女子とは、林業を愛しアクションする、すべての女子のこと。
メンバーはプロの林業士や林業ファン、学生からママまで、林業だけでなく木材や建築に関わる人など、職業も年齢も問いません。
●どんなことをしてるの?
活動内容は、イベント開催、情報誌の発行、グッズ販売、勉強会、気軽なお茶会・・と、さまざまです。
日本の林業が地域によって個性があるように、林業女子も地域のカラーを出して、活動しています。

関心がある女性なら誰でも入れてしまうこの女子会には、林業や木材関係を仕事にしている人のみならず、学生や主婦、異業種までいろいろな女子がわいわい集まっていて、一般になじみのない林業への入り口として、とても敷居が低いのが特徴です。

その中で、2018年には高知県で「林業女子会@高知」が立ち上がりました。すでに30名ほどの女子が集まっている「@高知」ですが、メンバーには現場でチェーンソーを持ってはたらいている人や、林業事業体の経営者や社員、公務員や専門職など、日頃ガッツリ林業に携わっている人が多く、これまでにないガチな感じの女子会になっています。

その「@高知」の活動の3本柱には、さきほどの2つに加えて

③林業界への提言

というもう1つの活動目的が盛り込まれています。

これまで林業女子会は、一般の方に向けた発信や、林業女子どうしの楽しみを大事にしてきたのですが、いよいよ女性目線から業界に対して何か投げかけてみようではないか、という試みを始めようとしています。

(↑土佐湾のクジラと、高知県の森をイメージしたロゴマーク。)

いわずもがな、林業界は男性が圧倒的多数の世界です。

その中でも、自分の好きや熱意を持って現場に飛び込んでいる女性や、家業として自然な流れで林業に携わることになった女性もいます。また最近では、大学などで林業を勉強してこの世界に足を踏み入れる女性や、異業種の仕事をしながら何か関わってみたい、消費者として林業を知りたい、という女性も増えてきていると感じています。

そんな女性たちの目から林業を見つめなおしてみたら、何か業界にとってのヒントがあるかもしれない。

素朴な疑問や違和感から、新しい発見があるかもしれない。

そう考えた私たち林業女子会@高知では、まずは林業の現実とか問題点について、林業女子どうし本音で話し合ってみることから始めました。

この記事では、11/24に定例会でトークした内容をまとめました。第1回ということでまずはざっくばらんにテーマが出たところですが、林業界のみなさまにはぜひご一読いただけたらうれしいです。

参加者の女子13名はこんな顔ぶれでした

林業経営者【A】さん:高知県内で林業会社を経営しています。

林政アドバイザー【B】さん:高知県に移住して3年間の地域おこし協力隊で自伐型林業に取り組み、今は林政アドバイザーを勤めています。

林業研修生【C】さん:今日は飛び入りで初参加です。大阪府に住んでいますが、異業種の会社を辞め、今ちょうど高知で林業の研修に参加しているところです。

森林組合職員【D】さん:愛媛県の森林組合に勤務しています。

森林組合職員【E】さん:民間の林業関係会社を経て、高知県の森林組合にヘッドハンティングされて勤務しています。

異業種【F】さん:仕事は異業種ですが、親戚が林業に携わっていて、興味があって参加しています。

研究者【G】さん:働く女性の研究をしていて、一次産業に携わる女性のことを知りたいと思っています。

木材販売会社勤務【H】さん:愛媛県で木の仲買人をしています。現場のことを勉強したく参加しています。

森林所有者【I】さん:母が小規模な山林を所有していて、高知県にはこういった山林が多くあると聞いています。所有者側が動かなければ高知の山林は荒廃するのではないかと考え、ヒントを得に参加しています。

工務店勤務【J】さん:滋賀県出身。木造建築をする工務店の家に嫁いで高知に来ました。大学で林学を学びました。

林業修行中【K】さん:山形県出身で、実家は元々林業会社をしていました。自分自身も林業を学び携わりたいと思い、高知に移住していま現場を学んでいます。

林業経営者【L】さん&お嫁さん【M】さん:岡山県で林業会社を経営しています。今回は姑・嫁で参加しました。2歳のお孫ちゃんもつれてきました。

という女子13名+お子さんです。

いったんまとめ:
●女性の林業へのかかわり方には、こんなにバラエティがある
●今回は現場従事者ではない女子もトークに参加
●@高知メンバーには県外からの参加や移住者も多い

さて、次からトークに入ります!


林業女子のお悩みその1「体力的に山仕事についていけない」問題

(↑女子会の様子。高知市内のレストランをお借りしました)

K「いま林業現場で修行してる中での悩みなんですけど。まず、ずっと他の職業をしてきて初めて林業の現場仕事をしているから、体力が追いつかないこと。山を歩いたり、チェーンソーで作業したり、林業にはどうしても体力が必要ですが、みなさんそんなお悩みないですか?」

A「体力となると、まず男女どうこうはさておき、かなり個人差があるよね。うちにも女性の現場作業員がいるけど、最初はまずひたすら山を歩くことから始めてもらった。時間はかかるけど、トレーニングを続ければ、山を歩く力はちゃんと身についていくよ。
ただ、山で木を切ることだけが林業ではなくて事務や営業など色々な業務もあると考えたときに、雇用する側の組織や会社にそういう仕事もあって、女性を受け入れる体制があるかどうかは重要だと思う。これは経営者の視点から。
そして、もし自分が働く側(雇われる側)であれば、がんばって体力面を克服していくのか、それとも違う役割を果たしていくのか、どうすれば女性が林業の仕事で働き続けられるのかを自分で考えていくことも必要だよね。」

F「女性はある程度の体力はつけられても、やっぱり、重いものを持つとか、木を伐るスピードとか、そういう筋肉量とか体力面では男性に勝てないですよね。でも今の林業は林業機械に乗ったり、マネジメントや事務の仕事なども多いから、体力を使わない仕事もたくさんありますよね。組織の上部や上司が、そういう男女差に配慮した仕事配分をしてくれたらなぁ。」

K「みなさん色々感じることがあるんですね。わたし、今のままの状態では体力に不安があって、現場仕事を続けていくのは難しいんじゃないかと思ってるんです。それでも現場で働き続けるなら、機械を使う仕事とか、林業を幅広く捉えたうえで森林管理に携わる仕事をするとか、今後の自身の方向性を考えているところです。」

F「男性でも女性でも、やっぱり何か一つでも他の人よりも特化した技能とかを身につけると、周囲も認めてくれるんじゃないかな。私は林業に従事していないけど、仕事をしている中でそう思うことがある。」

B「わたしも現場に入るつもりで高知に移住したんだけど、やってみた結果、体力の限界を感じた。ただ、たとえ自分でそう感じていても、体力面で厳しいって自分から言ってしまうと、周囲からやる気がないと思われたり、評価が落ちてしまうんじゃないかと思って。それが嫌で、結局自分からは言い出せなかったの。
さらに、技術指導をしてくれる人が普段は直接会えなくて離れたところにいたから、そういう自分の状況が相手に伝わりにくかったこともあって・・・。
そんな私の経験からいうと、現場が不向きだと感じる人に対しては、指導者や経営者から肩をたたいてあげて、違う仕事を与えてあげる、そういう環境はあった方が良いんじゃないかな。」

A「なるほどね。でも私は雇う側の人間としていうと、せっかくやる気のある人に対して肩を叩くことは、やっぱりしたくないし、自分はしないかな。でも、声はかけてあげたい。
『人が3年でできることを5年かかってもいいから』って声をかけてあげた上で、能力よりも”意欲”を活かしていける現場作りをしたいと思う。
もちろん林業会社としては、体力の無い人を雇い続けることはデメリットでもあるんだけど、意欲を活かした職場づくりは、長い目で見て必ず、山にとっての利益を生むはずだと思うんだよね。」

(↑林業女子のお仕事現場)

C「そもそもなんですけど、女性が現場で働く必要性があるのでしょうか?と、自分も林業研修を受けてみて思いました。
事務仕事であったり、機械を使った仕事であったりと仕事は色々あるみたいだし、そういった体力を必要としない部分でこそ、女性は組織の力になっていくべきなのでは?」

A「これもそもそもの話なんだけど、林業界というのが、可能な限り素早く現場作業をしなければ利益を生めないような、そういう低い単価設定になっているのも現状だね。それは男性にとっても当然、負担がかかることだし。
そんな現場に女性が入ったとしたら。男性が木を100本伐る時間に、女性は50本しか伐れないかもしれない。でも、他の産業に比べてダントツにケガや事故が多い林業では、余裕を持った作業工程にすることが実は何よりの安全対策なんだよね。
それに、女性は男性より視野が広いと言われるから、現場全体に目配り気配りができたりと、女性が現場に入るメリットも多いと思う。女性が林業界に入ってくることで、業界自体が変わる時期に来ていると思う。」

L「私は今は林業会社を経営しているけど、たまたま林業の家に嫁いでから、未経験で林業を始めた。最初は、チェーンソーを振り回せる女になる!と思ってやっていたんだけど、結局、なれなかった(笑)
なんでかというと、チェーンソーを扱うのは主人で、重機での作業は私、って感じで自然に役割分担していたからね。でも、だからこそ、うまく現場が回っていたのかも。
M(お嫁さん)は林業やってみてどう?」

M「私も結婚してから初めて林業をして、今は保育作業(植林や下刈りなど木を育てる仕事)に携わってます。やっぱりどうしても体力的にきついこともあるけど、やりがいがあって楽しく仕事できているので、苦ではないかな~。
あとうちは家族経営だから、子育てしながら林業をするのもいろいろ融通が利くっていう、いい面があるかな。」

L「今は男性2名とお嫁さんと3人チームで仕事してもらってるけど、お嫁さんがどうしても男性より遅い仕事もあれば、男性よりも上手にする仕事もあって、引っ張ってくれている面もあるんだよ。」

A「女性自身が、『女性だから現場仕事が出来なくて当たり前です~』っていうスタンスでいたらダメだよね。どんな作業でも仕事でもいいから、他の人に負けないところを持つことは大事だね。」

C「Aさんのような会社組織や、Lさんみたいな家族経営もあるんですね。そういうお話を聞いていると、林業をするといってもどこで仕事をするのか、特に最初の組織選びは大事になりそうですね。女性がオペレーターできる林業機械を持っているかどうかとか、そういうことも含めて、組織側の体制が整っていないところに飛び込んだとしても、働き続けることは難しそう・・・。」

D「組織は大事ですよね。私は今勤めている森林組合で、初めての女性職員として採用されました。現場にも行くぞー!とやる気を持って入ったのですが、蓋を開けてみたら『女の子だから』というフレーズ付きで書類仕事ばっかり回されることが多くて・・・歯がゆい場面も多かったです。
それがくやしくて、同期の男性よりも仕事をやってやるって気持ちで、何かあったら『私やります!』ってどんどん積極的に手を挙げるようにしてました。そうしているうちに、書類以外の仕事を任せてもらえるようになったり、周囲からも可愛がってもらえるようになったかな。」

K「ちなみに体力以外で悩んだことですが、県外出身だから移住してきた当時は高知の言葉が分からなくて、指示が伝わらなくて・・・それで注意を受けてしまったりすることもありました(苦笑)」

A「言葉については、自身も県外出身だから、最初は土佐弁がきつく聞こえたり、意味がわからなくて大事なことを聞き漏らしているんじゃないかと不安だったな~。
そんなときも、やっぱり遠慮せずに分からないことはどんどん聞くことだと思う。夫にも”あれどういう意味だったの?”っていつも聞いていたよ。そうしているうちに、言葉もわかるようになった。」

このテーマのまとめ:
●女性も体力をつける努力は必要
●体力を必要としない仕事も林業にはある
●男女の自然な役割分担ってあるよね
●「女性ならでは」「自分だからこそ」の特技を1つでも持てたら強い
●はたらく人の適性に合わせて仕事を作れる組織体制も大事
●意欲と積極的な姿勢で周りの目や状況を変えることはできる!


お悩みその2「林業の業界慣習にびっくり」問題

E「森林組合に入って2年半になるのですが、森林組合は森林組合法という法律もあって、ルールに縛られて自由が利かなかったりする。でも、だからこそ守られている部分もあって・・・。木材を生産してなくても職員はお給料がもらえちゃうから、民間企業に比べて収益に対する意識が低いんじゃないかと感じてます。コツコツ意識改革を試みているけど、改善した人もいるし、変わらない人もいます。」

A「収益への意識は、目に見えるようにすることが大事。うちは、現場管理は目標と実績をグラフ化して、『現在○%の経費がかかっているので、1日○円切らなければいけない』ということがわかりやすくし、意識できるように工夫してる。最近はそういう便利なソフトもあるから、後で教えてあげる!
それにしても民間企業に比べて組合は、そういった意識が抜け落ちているところが多いのかな~。」

B「現場をやっている人には、これまでやってきたプライドもあるから、作業内容について指摘されるのは癪に障るかもしれないね。そこで問題点を指摘しちゃうんじゃなくて、逆に『この山でいくらの利益を出しましょう!』って目標を高めて、意識をあおるような形に持っていくと、かえってプライドが刺激されて良いんじゃないかな~。」

E「なるほどですね。でも現場には『数字のことは事務の仕事だ』て他人事な感覚の人もいるから、そういう意識を浸透させることは、なかなか難しいかなと。」

C「目標設定のやり方ですが、たとえば『一人あたり何㎥の丸太を出す』といったことを提示するのでしょうか?」

E「今は、ひと月あたり一人にかかるコスト(お給料など)から割出した、最低限の出材目標を提示しています。」

J「この問題は、男女どうこうというよりも、業界慣習から変えていく必要があるのかもしれないですね。そこで、意欲を持った女性が林業界に入っていくことは、一つのきっかけとなるような気がします。この特殊な業界にあえて飛び込んでいる女性だから(笑)、スタートラインから意欲が高めなのは間違いないと思うし。」

A「林業女子会には、せっかく異業種の人もいるから、外からの目線も盛り込んで林業界になにか提案していきたいね。」

このテーマのまとめ:
●林業界は収益の意識が低いところがあるのでは?
●数字の見える化や意識改革に奮闘している林業女子がいる
●意欲のある人や異業種の目線が改革のきっかけになるかも


お悩みその3「林業の未来はどうなるのか?」問題

(↑高知県の木になっている「魚梁瀬杉(やなせすぎ)」。樹齢300年もの天然杉の森が残されています)

H「少し大きな話になりますが。これからの林業は、伐採するだけじゃなくて次の世代の木を育てていくことも必要だけど、造林や保育に特化したビジネスも成り立つのでしょうか?現在の業界の流れとして、どうしても素材生産量(木を伐る量)ばかりが注目されているけど、10年後20年後、その先を考えた時に、林業が成り立っていくのかな。この先ニーズがあるのは、保育作業を行う業者じゃないのかなと。」

K「私の知人で地域に根差して林業をしている山師の方によると、今生えている人工林は伐って、自然更新させた方が良いんじゃないかという考えもありますね。将来的に木を伐る人がいなくなるような状況でいま植林したとしても、間伐されずに土砂災害を招いてしまうんじゃないかと。」

J「そういう視点も含めて、林業をしていても長い目で見通しを持っている人は意外と少ないですよね。
先日、地域の森林組合の理事会でこんな話があったそうです。理事の一人が、『日本の山の齢級構成を考えると50年後には伐採できる適齢の木がなくなる』という話をしたら、ほかの委員から『そんなことはない』『そんなデータは知らない』と言われたらしいです。私は林学を出てるからそんなことは当たり前に知られていると思っていたからびっくりして・・・。森林組合の理事も山林所有者ではあるけど、必ずしも林業経営のプロではないんですよね。ちなみにほとんどが高齢の男性。
これからは、女性も含めてちゃんと林業の勉強をした人がそういった組織に加わることで、変わっていくのかもしれないけど。」

A「長期スパンで山を見ている人は、実際、少ないね。でも、女性には長い目を持っている人が多いような印象があるの。だからこそ女性は、管理職に向いていると思う。
今度、森林環境税が導入されるけど、各市町村に長期の森林のビジョンを持てる人がしっかり腰を据えて、植付けから間伐、皆伐まで総括して管理することが必要だと思う。」

J「この話題は壮大なテーマですぐには答えが出ないけど、これから林業女子会でも話し合っていきたいですね。」

このテーマのまとめ:
●林業は伐るだけじゃなく、育林や防災の視点も必要
●長期的視点で林業を考えられるのは、女性かも!


お悩みその4「トイレ」問題

A「なんだかまじめで固い話になっちゃったね(笑)、現場でのちょっとした悩みは無いかな。例えば、トイレの問題とか。」

M「トイレをどこでするかはいつも困ってます。保育の仕事は皆伐した後の現場なので、木が生えてなくて隠れる場所が無くて。男性と働いているから、困る・・・。」

A「最近は携帯トイレとか、便利なグッズも色々あるから使ってみたらどうかな。トイレに問題があると、なるべくトイレに行きたくないから水分を取らないようになっちゃったり、特に夏場はしんどいからね。」

K「私は作業の時に、たまにツナギを着てみるのですが、トイレのために脱着するのに手間がかかっちゃいます。」

L「なんでツナギなんか着てるのよ!(笑)ツナギは一見するとよさそうだけど、林業の現場では着ない方がいいよ。それか、チャック付きのツナギにするとか工夫してみたらどうかな。」

このテーマのまとめ:
●トイレ問題はグッズや服装で改善できる
●そもそも話題にならなかったので、林業女子にとってトイレ問題はそんなに重要じゃないのかも


その他、いろいろなご意見

(↑林業女子会@高知の視察勉強会の様子。山で語り合っていきましょう)

G「私は女性の労働について研究していますが、全体的にお話を聞いていて、男性中心の現場に女性が参入していって、女性の仕事がどう形成されていくのか、そういうテーマだと思いました。
今の世の中の労働環境は、男性が働くことを想定したシステムで成り立っているから、そこをベースに女性が1人で孤軍奮闘するだけではなく、業界や組織が『その働き方は正しいのか?』という問いかけをしていかないと、女性が働きやすくはならないでしょう。そこには、女性の労働問題という意味だけではなく、林業界の進歩が遅れてしまっている構造の問題もあると思います。
生産量だけを優先して考えると女性の採用は少なくなってしまうかもしれないけど、本当にその形で良いのか、本当に体力を使う仕事でなくてはいけないのか、そういった見直しをするはたらきかけをしてもいいのではないかと思います。」

L「たしかに経験上、たとえば女性は集積・造材、男性は伐倒、という男女での役割分担は必要だと思う。」

F「私、以前は水産会社で働いていたのですが、海の神様は女性だからという理由で、女性は船には乗せてもらえませんでした。そんな慣習もあるんですよね。
また、いま子育てしているので働ける業種が限られるし、周囲の助けが無いと働けない状況です。仕事を頑張りたくても子育てを考えると残業が出来ないから、他の人材と比べられた場合に、自分は選ばれないかもしれない・・・。」

A「雇用する側としては、企業としてのメリットを何と考えるかだね。体力面や、育児・出産を考えると男性を採用する方がメリットを考えやすいけど、もうそんな時代じゃない。女性だからこそ見える視点があるし、これからの時代はそれが必要になる。そういう考えの企業が増えていかないと、林業界自体が変わっていかないよね。この場から訴えていくことで、林業だけではなくほかの業界にも浸透していくかもしれないね。」

F「林業女子会での議論からは、異業種で女性がマイノリティな業界や、子育てしながら働く女性にもヒントがもらえそうで、期待してます。」

A「それでもう一度、お金の話なんだけど。切り捨て間伐を例に挙げると、現行の単価では合わない仕事になってしまってる。受口・追口をちゃんと作って伐倒して、かかり木の処理も正しくやって丁寧に作業するのであれば、本当は現在の3倍のコストが必要になる。逆に、そうやって丁寧に作業できる単価がもらえるのであれば、男女のスピード差はそうクローズアップされる問題ではないと思う。
今の林業は、無理な労働条件を余儀なくされて当たり前の業界になってしまっている。結局問題はお金に直結していて、しっかりと利益が出る状況になっていくことが最優先だと思う。その上に立って初めて、安全に施業が出来る。国が出している林業の標準単価の『安全費率』も低い。そこの改善を見込めないことには、企業として労災保険料を大きくすることはできない。
そういうことも皆が分かっていながら、男性には声を上げない人が多いと思うの。だからこそ女性から声を上げて、女性でも働きやすい環境をつくり、林業を女性でもできる・男性なら当たり前にできる仕事にする。そのくらいを目標に改革していきたいよね。この場で生まれた意見を、全国に発信していくくらいの勢いで活動していきたい。」

J「今日は第1回の『現場トーク』ということでしたが、たくさんの課題やテーマがあることが見えてきました。今後ですが、林業女子会@高知の中に『現場部』という部会を作って、もっと現場のことを深めていきたいと思います。この『現場部』に入りたいという人、どのくらいいます?」

全員「はーーーい!!\(^o^)/」

J「じゃ、全員メンバーということで(笑)今後は、@高知から全国の林業女子会によびかけて意見をとりまとめたりして、提言していきたいと思います。今日はありがとうございました。」

まとめ:
●林業女子の労働問題を語ることは、林業界の在り方について語ること
●林業女子のはたらき方を考えると、異業種のヒントにもなる
●女性がはたらきやすい環境は、男性にとってもはたらきやすい
●林業女子会@高知「現場部」発足!!

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

これからも林業女子会@高知「現場部」では、女性目線から林業界への疑問・ヒントを投げかけていきたいと思いますので、ご期待ください。

私もトークに参加したい!という林業女子のみなさまのご参加をお待ちしています。

記録:押方、井上

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