見出し画像

増水の沢で

某日、私は長野県のとある水系へと足を運んだ。
夜から林道に車を停め、翌日の早朝から目的の沢を釣り上る予定だった。

しかし、日付を跨ぐ頃から雨音が聞こえ始める。
眠りにつく頃には、雨音は轟音となって車内に響いていた。

翌朝、雨脚が弱まるのを待って沢の様子を見ると、濁流。
ここでの釣りは諦めざるを得ない状況であった。

仕方がないので、釣りのできる川を探して右往左往するも、周辺の川は増水と濁りで壊滅的な状況であった。
一縷の望みをかけて川を探し回った末、とある細い沢にたどり着いた。
平常時なら無視するような規模の沢であったが、増水のおかげで竿が出せる。
また、流程が短いためか、浅いためか、濁りもそれほど気にならない。
ここまで約半日。
残り時間も短いため、テンポ良く釣り上がっていくこととした。

すると、思いのほかイワナの反応が良い。
増水が良い方向に作用していたようであった。

友人が僕のために作ってくれた小型のミノーをキャストすると、じゃれつくようにイワナが顔を出す。
大型は出なかったが、たまにはこのような釣りも面白いものだ。

釣りの良し悪しは、釣果だけではない。
ましてや、釣れた魚のサイズではない。
その一匹に辿り着くまでのプロセスや、思考の過程、使う道具など様々な要素が詰まっている。

この日遊んでくれた可愛いイワナたちには、そのサイズを超えた価値があったのだと思う。

使用ルアー
Candy40S (友人の自作ルアー)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?