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Mr.ラッキー:オリジン

 「あんたは運がいい子だ。街を飛び回ってるマントの変人どもに負けないくらいにね。それがあんたのパワーさ」
 77歳のときに7階から落ちて死んだばあちゃんの言葉を真に受けた俺が間違いだった。
 俺はツイてると信じ続けて人生を転げ落ち、この前博打で全財産をスった。そして今は銀行強盗の真っ最中だ。
 「撃て!撃て!こいつだって当たれば死グゲッ」
 赤い影がひらりと舞ったかと思うとリーダーのゼフがレッドフェザーの蹴りを受けて吹き飛び、書類の上に落ちて気絶した。鳥を模した赤いコスチュームを着たレッドフェザーが冷徹に俺たちを見据えた。
 もう終わりだ。逃走経路を覚えてるやつは他にいない。第一、そんな頭がある奴はスーパーヒーローを出し抜いて銀行強盗をしようなんて考えない。
 隣のアンヘルは札束の入ったバッグを持ったまま周りをきょろきょろ見回している。大方、誰を頼ればいいのか無い頭で考えているのだろう。札束の入れすぎで閉まらないバッグはやつの太ったマヌケ面にそっくりだった。
 ヤケになったキムがマシンガンを乱射した。だがレッドフェザーは軽やかにそれを避け、奴に回し蹴りを見舞った。キムは壁に打ち付けられてそのままノビた。
 だが思わぬことが起きた。キムの銃弾が偶然近くの消化器に当たった。噴き出した消火剤が俺とレッドフェザーの間に煙のカーテンを作った。
 逃げられる。そう思った。ばあちゃんの顔が目に浮かんだ。俺のパワー。俺はこのラッキーに賭けることにした。
 俺はアンヘルを突き飛ばして走り出した。よろめいたアンヘルは煙の中に突っ込んだ。不意をつかれたのか、レッドフェザーはやつともみ合っている。アンヘルの無様な悲鳴が聞こえた。
 俺はガラス張りの壁に向けてショットガンを撃った。強化ガラスにヒビが入る。そのまま突っ込むとガラスは粉々になり、俺は歩道に投げ出された。俺はすぐに立ち上がり、そのまま走り出した。

【続く】

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