最後の太陽_昭和基地

極夜の入口

#10年前の南極越冬記  2009/6/1

ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。

◇◇◇

5月30日を最後に、昭和基地は長い夜に入った。

これからは蜃気楼で浮かび上がりでもしない限り、太陽が全く昇らない極夜期になる。最後の太陽は、水平線の上に少しだけ顔を覗かせて滑るように西へと移動し、そして見えなくなった。

朝焼けと夕焼けの境目なんてそこには無く、オレンジ色の灯火が、南極の広い空をゆっくりと染め上げ、そしてまた暗闇の中へと静かに消えていった。

これから続く長い夜が明けると、僕らはみな越冬経験者だ。

自分の意志とは関係なく、僕自身も、もう頼られる立場になる。

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