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とらのあな婚活ビジネスで浮き彫りになった婚活市場の欺瞞

Twitterで大きな話題となりましたが、とらのあなが突如婚活サイト「とら婚」をはじめました。
オタクのための婚活サイトとして充実の(かなり迷走した)サービス、そしてオタクが安心して登録できるように簡単な診断テスト。それだけにとどまらず、オタク達は目ざとくこんなものを見つけました。

「デート密着アドバイス」「セックスしたら成婚扱い」オタク専用婚活サイト「とら婚」がいろいろすごい

賛否両論が飛び交ったこのサービス、婚活業界では常識となっていることのようですが、多くのオタクは知らなかった衝撃の事実。
やってみようと思う人、冷ややかな目で見る人、それぞれの意見から、婚活市場の様々な実態が浮き彫りになってきました。


恣意的に結婚観として刷り込まれた年収至上主義

婚活の入口を阻んでいるものの最たるものがこれです。結婚には色々とお金が掛かりますが、共働きが当たり前の現代において、男性の収入だけを頼りとするのは時代錯誤です。
しかし婚活市場はわざわざ選択肢を用意して、女性に男性の希望年収を答えさせます。こうしてでっち上げたデータを積み重ね、低所得の男性を婚活市場から弾き出すのです。

■夫婦の相互扶助は一般論として認知されている

ですが、実際は「夫の収入だけに頼らずに自分も稼ごう」という結婚観は多くの人が持っています。

ちょうどとら婚が話題になる直前にはてブで見つけた水谷さるころさんの漫画によれば、

「フリーランスで家にいるから旦那のごはん作って当然」
「フリーランスだから結婚は逃げの選択」
要は
「嫁がフリーランス=旦那の経済力があるはず
という結婚観が世間一般に浸透しているというのです。

Twitterではこれに違和感を覚え、彼女に共感する人がたくさんいます。

旦那の収入に縛られた考えの人も確かにいますが、共働きで助け合う考え方も一般的な結婚観として確立しています。しかしどうしたわけか、婚活市場ではこのような結婚観は認められません。

■年収至上主義は現実世界ではあまりにも強すぎる

経済的相互扶助の結婚観は、漫画にも如実に表れているようにネットの世界のマイノリティ。現実の婚活市場は、トラブルを未然に防ぐためなのか、低所得の男性には容赦しません。どこの婚活サイトもまず年収で男性を見ます。夫婦共働きで助け合う結婚観では門前払いされることも普通にあるのです。

このような年収至上主義は、ハイパーガミー(上昇婚)とも呼ばれています。

ハイパーガミーとは、元々はカースト制度において、女性が上の身分の男性と結婚することを指していたとされています。これを日本に当てはめれば、家長制度をつくった要因であると推察できます。
手堅い職業が良しとされ、そのような男性のもとに嫁ぐ結婚が幸せの条件のように思われてきて数十年。現代では安定雇用が崩壊しているにもかかわらず、依然として昔ながらの結婚観が根づいているわけですね。

※上のツイート内容は運営が是正しました。追記を参照。

※noteに打ち消しの機能がないので、打ち消しの文章は画像に差し替えました。どうか実装してください…。

【2/28追記】

とら婚の入会資格が是正されました。フリーランスクリエイターが入会可能であることを示したものになり、とら婚の加盟しているIBJ(日本結婚相談所連盟)確認済みとのこと。

この内容、気になるのはあくまでIBJのルールに則っていること。実際にこれがどれほどフリーランスに歩み寄ったものになっているでしょうか。IBJルールは融通が利くのか、というところが焦点になりそうです。


純潔を背景とした成婚率の水増し

結婚相談所の中には、成婚率70%や80%といった高い成婚率を謳うところがあります。これには様々なカラクリがあると聞きますが、とら婚が話題になったことで、その手口のひとつが明るみに出てきました。
それが今回話題になった、とら婚の「セックスしたら成婚扱い」の件。

交際期間中の注意事項ルール上、結婚、婚約又はそれらと同等の成果(「結婚の口約束」「宿泊を伴う旅行」「婚前交渉」「同棲」「交際期間を延長し通算6ヵ月を経過した場合(交際期間は原則3ヵ月)」など)は「成婚」とみなします。トラブルを避けるため、交際期間中の旅行や婚前交渉は禁止です。なお、お二人で外泊や旅行へ行かれた場合、又は、婚前交渉の事実が明白になった際には、成婚のご意思の有無に関わらず、成婚とみなし、成婚退会手続きを行っていただきます。金銭の授受・貸借もトラブルのもとですので禁止です。

とら婚はIBJに加盟しているので、これはIBJのルールに則っています。成婚料は相場としては普通です。
しかしこれは、成婚条件のほうに問題があります。Twitterの反応を見ても、多くのオタクが疑問に思っているのは成婚条件のほうです。

同棲と婚約を結婚と同等の成果と見なすのはいいでしょう。しかし一泊デートとセックスを結婚と同等の成果とするのはいかがなものでしょうか。
そもそも結婚まで純潔を保つという風潮は古くからあるものではなく、そのルーツは近世まであった「夜這い」の風習を明治の政治家が野蛮だと決めつけ、海外に追いつき近代化する妨げとなると考えられたことから廃止されたことに端を発するものです。つまり、高度経済成長期が終わった時点で純潔の考え方はその役目を終え、既にオワコン化していたのです。
しかし、もはや純潔の思想は日本に完全に根づいてしまっています。海外で主流のデーティングとは完全に逆行しています。諸々の制度もそれに伴って制定されるのは当然の話で、日本は恋愛市場がガラパゴス化してしまっているのです。

IBJの言い分は、結婚前に事に及んだら責任を持てというにあります。しかしそもそも、一泊デートやセックスくらいで責任を持つほどのことでしょうか。避妊と性病予防をしっかりしてお互い楽しむ限り、取り返しのつかないことになるのは稀なはずです。
初めては好きな人と…そんな考えの人も確かにいます。しかし現実はそれで上手くいくことは稀で、恋愛やセックスの正しい予備知識もないのに上手くいくはずもありません。恋愛やセックスのお手本がないことが重く見られてホワイトハンズという団体があるくらいですから、セックスのサポートも必要な時代にみんなが純潔を保つのには無理があるでしょう。
純潔を保つといえば聞こえはいいですが、一泊デートやセックスを自己責任として、成婚扱いにして放り出すのがIBJの実態です。ルール違反ならそう示せばいい話を成婚扱いにして成婚率を水増しにするのは、婚活業界にあっては不誠実と言わなければなりません。


婚活業界は性と向き合うことを恐れている

この2つの欺瞞に共通することは、婚活業界が性を蔑ろにしていることにあります。
男性には年収と清純という甲斐性を、高額な会費や、女性と比較してべらぼうに高い参加費という見える形にして求めています。男性を食いものにする構図が完成していて、これを資金として運営されているわけです。
そして女性との連絡先交換や出待ちはイベント出禁対象となることもあります。トラブル防止の観点は理解できますが、男性がトラブルを起こす可能性があるのは、思春期に性知識が不足し性を蔑ろにされてきた結果です。そこを隠して、女性を釣りやすい年収にフォーカスを当てているから欺瞞だというのです。

また、男性の参加費を高く設定する狙いには、ヤリ目的の参加者を排除することが含まれています。しかしこれは、女性の性欲を否定することに他なりません。
女性には、結婚後には出産という人生の一大イベントが控えています。が、とりわけ結婚相談所は婚前交渉を嫌う傾向にあり、セックスの相性の合致を抑圧することになります。そうすると子作りの為のセックスすら苦痛になることにもなりかねません。結果的に女性に精神的苦痛を強いることになるのです。
そもそも婚活イベントを実施する時点で、参加費でフィルターをかけずとも真面目な参加者を募る仕組みは完成しています。自治体婚活イベントが男女同額の安価な参加費で無事に運営されているのが、その証左です。

日本にあっては「性=リスク」が一般論です。しかし結婚は性と離れることはできません。一般論に疑問を投げかけることもなく前に倣って、女性を餌にして男性から搾取する。これが婚活業界が性と向き合うことを恐れ、リスクとして忌避した成れの果ての姿なのです。


婚活攻略の方法論

このようながんじがらめの婚活市場でも結婚することは十分に可能と考えられます。
結婚相談所における本当の成婚率は、大手でも10%前後だと言われています。この数字を逆手に取ればいいのです。結婚相談所が一泊デートとセックスで(要は、結婚までいかなくても客観的に「付き合っている」といえる状況で)成婚率を80%まで水増しできるとすれば、成婚退会カップルの8組に1組が結婚しているので、経験人数が8人に達すれば結婚できる計算になります。
方法としては婚活サイトや結婚相談所を使うも良し、自分で出会いを探すも良しですが、この経験人数8人という仮説を立てられれば、コストを想定することができるので、婚活の見通しが立ってくるでしょう。それだけでも随分と変わってくると思います。もう闇雲に婚活することはないのです。

まずはこの「結婚条件経験人数8人説」を私自身が検証してみたいと思います。

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