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アメリカの民話 ポール・バニヤンのお話

目次

アメリカの民話 ポール・バニヤンのお話

ウィスコンシン大学夏期講義

チャールズ・E・ブラウン

州歴史博物館主管
ウィスコンシン州マディソン、1922年

ポール・バニヤンのお話

木こりの神話的な英雄はポール・バニヤンであり、その力強さとすばらしい功業の話は、メインからオレゴン、ワシントン、そして、カリフォルニアに至る伐採キャンプの飯場の火のそばでこれまで語られ、今も語られている。

「すべての木こりは、彼が本当に生きていた人物であり、木こりの国の先駆者であると信じているか、信じているふりをしていて、年老いた者たちの中には彼を知っていたと主張したり、彼の仲間であったと主張する者さえいる」。ウィスコンシンには、彼の作業場の一つが「ラインラント[ウィスコンシン北部の町]の西45マイル[75km]」にあったと言われている。

ポール・バニヤン

「ポールバニヤンは力強い巨人であり、身長7フィート[2.1m]であり、一歩の幅は7フィート[2.1m]である。彼は木こりがいる地域全体でその卓越した身体の強さのおかげで有名であった。彼の心肺能力は非常に優れていたので、木のうろ穴に息を吹き込むことで仲間を夕食に呼ぶことができた。彼が話すと枝がしばしば木から落ちた。彼のパイプを満たすためには、1人の枝払いの人夫がスコップを使ってかかりきりにならなければならなかった」。彼は文字が書けなかったので、望み通りの絵を書いてキャンプに必要な物資を注文した。ある時、彼が臼石を注文すると、チーズが届いた。彼は穴を描くのを忘れてしまった。彼は木片に刻み目を入れて仲間たちの時間を管理した。

いかなる仕事であれポールにとって大したものではなかった。木こりは、彼はノース・ダコタまで木材を切り出しに行ける男だとと言っている。

また彼が掘った穴はスペリオル湖[北米五大湖の一つで世界最大の淡水湖]になった。これは木こりの道を氷結させるために必要な水を貯めておくのに使われた。ミシシッピ川は、彼の雄牛が足を滑らせた時に覆った水槽に端を発する。

彼の木こり仲間

ビッグ・オニオン川にいる彼の木こり仲間は、1862年、もしくは1865年頃の「青い雪の冬」に非常に数が増えて三つの集団に分かれた。一つ目の集団が仕事に向かっている一方、二つ目の集団は作業を進め、三つ目の集団は仕事を終えてキャンプに向かっている。そのおかげで料理人たちは大忙しであった。というのは料理人たちが一つ目の集団のために朝食の準備を終えると、今度は二つ目の集団のために昼食、また三つ目の集団のために夕食を準備しなければならなかったからだ。

斧を鋭くするために男たちは、険しい丘の斜面に丸石を転がして、走ってそれを追跡して、回転する石に刃を押し付けて研いだ。

ジム・リバプールは跳躍が得意だった。川岸に足を置けば、彼は3回の跳躍で川を横切ることができた。

ブラック・ダン・マクドナルド、トム・マケイン、ダッチ・ジェイク、レッド・マーフィー、カーリー・チャーリー、イエローヘッド、 そしてパツィ・ウォードは、彼の恐れを知らない仲間たちの中で非常によく知られた面々であった。 男たちの中の1人に何でも噛める二組の歯を持っている者がいた。ある夜、眠りながら歩いている時に臼石にぶつかったので彼は目覚める前にそれを食べ尽くしてしまった。

キャンプ

料理人の小屋は非常に大きかったので、その外周を回るのに半日もかかった。大きな調理用ストーブの火を燃やし続けるために三つの森が毎週消費された。火を熾すには1コード[3.6㎥]丸々の薪が必要だった。パンの塊は巨大であった。男たちがパンの中を食べてしまうと、パンの皮は宿泊所(飯場とも言われる)を作るために使われた。

ある日、料理人のジョー・マファロンがパンをオーブンの中に入れて、反対側に回ってそれを取り出そうとしたが、彼がそこに到着する前にパンは焦げて消し炭になってしまった。パンケーキを作る前に、彼は2人の黒人の助手の足にハムを結びつけ、油を出すためにそれをストーブの上で焼いた。

ある日、視力が悪かったせいで彼はバターと火薬を混ぜてしまった。それが爆発して黒人の助手たちは屋根を突き破ってしまい、二度と戻ってこなかった。それが「黒い雪の冬」だった。

7人の男が一輪車を使って余分な石をキャンプから取り除こうと忙しく働いていた。シマリスがその石を食べてしまってトラのように大きくなった。

ポールは料理人たちと衝突した。彼はいつも新しい料理人を雇わなければならなかった。1人の料理人がジャガイモの袋と小麦粉の袋の間で迷って、発見されるまでに飢えて死にそうになった。男たちを食事に呼ぶためにポールや料理人が使っていた角笛はあまりに大きく、 ひとたびそれを吹けば10エーカー[4ha]のマツがなぎ倒された。次に料理人が角笛を思いっきり吹くと、サイコロンが発生した。

食堂はとても大きく、一方の端で1人の男がほら話をしゃべると、反対側にそれが届くまでにあまりに大きくなったので、シャベルですくい出さなければならないほどだった。

2人の男がドーナツを肩に担いだ棒に通して台所から運んだ。時にドーナツはテーブルの上を転がされ、男たちは転がってくるドーナツを掴んだ。 鍛冶屋のビッグ・オールは穴あけ器と大ハンマーを使ってドーナツに穴を空けた。

青い雄牛

巨大な青い雄牛のベイブがバニヤンの伐採作業を手伝っていた。バニヤンはベイブをとても気に入っていた。この雄牛は馬9頭分の力を持ち、 その重さは1万ポンド[4t]に達した。両目の間は斧の柄七つ分あった。その角はすごく大きかった。男たちは角の先に紐を繋いで、服を吊るして乾かした。その動物のもともとの色は純白だった。ある冬、7日間にわたって青い雪が降り、冬の間中ずっと雪の上に横たわっていた雄牛は青く染まってしまった。雄牛とともにバニヤンは家を丸ごと丘の上に運び上げ、それから地下蔵も続いて引きずりあげた。丸太をきれいに削りたくなった時、彼は一方の端に雄牛を繋ぎ 、反対側の皮をしっかりと掴んだ。

雄牛が引っ張ると、丸太は「とてもきれいに」なって出てきた 。時にベイブはへまをやらかした。ある夜、ベイブは逃げ出してしまって曳き綱を200フィート[60m]も食べてしまった。時にベイブは男たちの後ろに隠れて川の水を飲んでしまって川筋を干上がらせてしまった。ウィスコンシンとミネソタにあるいくつかの湖は、ベイブの蹄によって空いた穴にできた。

バニヤンはベイブの他にもたくさんの雄牛を飼っていた。雄牛たちが一列に並ぶとその長さは州の半分に及んだ。雄牛たちの軛を積み重ねると100コード[360㎥]の薪になった。ある日、彼は大きな川に倒して渡した丸太の上を雄牛たちに渡らせた。雄牛たちが通過した後、数えてみると何頭か足りなかった。彼は、雄牛が丸太の空洞の中に迷い込んでいるのを見つけた。

ビッグ・オール

ビッグ・オールは、ビッグ・オニオンのキャンプにいるバニヤンの鍛冶屋である。彼は非常に力強い男であり、彼が金床で金属の輪を打つと、その音が隣の国まで響いたという。雄牛のベイブに蹄鉄を1人で履かせられるのは彼だけであった。ある時、彼はベイブの蹄鉄を1マイル[1.6km]も運んだが、一歩ごとに硬い岩に膝がめり込んだ。雄牛に新しい蹄鉄を履かせようとすれば、新しい鉄鉱を開かなければならなくなった。

ピラミッド状の森

37地区にあるラウンド川には、ピラミッド状の森があって、全面に木が鬱蒼と茂っている。その頂上を見極めるには「1週間」も要した。頂上は「20人もの男が面会できる」ほどの広さだった。バニヤンと仲間たちは「青い雪の冬」 の一冬をかけてそこを掃除した。そこから彼らは1億立方フィート[280万㎥]の木材を切り出した。斜面の片側で一冬の間ずっと働いていたせいで男たちの中には片方の足が短くなってしまった者もいた。

ラウンド川の川筋

仲間たちはピラミッド状の森で切り出した丸太を川岸まで転がした。それから春になって丸太を川に流した。製材所まで丸太を運ぶのに早くて「2週間程度」はかかった。そこで彼らは丸太を処理する。川が実は丸くなっていて流出路がないことに彼らが気づいたのは自分たちのキャンプを何度か通り過ぎた後だった。

フォーティー・ジョーンズの冒険

ある日、小頭のフォーティー・ジョーンズが川の近くでシカの痕跡を見つけた。彼が見張っていると夜になってシカが水を飲みにやって来た。そこで彼は、40フィート[12m]の高さに積み上げておいた丸太の山から1本引き抜いた。丘を転がり落ちた丸太の山は200頭のシカを殺した。

キャンプでは去年の冬の間ずっと十分な肉にありつけた。

シカ皮の牽引具

小頭はシカ皮で青い雄牛用の牽引具を作った。それからピンクアイ・マーティンが薪にするために丸太を運び込もうとした。彼が荷運びを始めようとした時、雨が降り出してシカ皮が伸びてしまった。彼がキャンプに着いた時、ベイブはそばにいたが、積荷は森の中に置き去りになっていた。彼は雄牛を繋ぐと食事に行った。

彼が食事をしている間に太陽が昇ってとても暑くなって牽引具が乾いたおかげでキャンプまで丸太を運ぶことができた。

豆のスープの湖

ラウンド川の近くに温泉があった。ある日、 たくさんのお豆を運んでいた荷運びの一団が温泉の近くで転倒して豆をぶち撒けた。豆をだめにしたせいで御者は解雇されることになりそうだった。料理人のジョーは塩、胡椒、そして、豚肉を豆の中に投げ込んだ。そのおかげでキャンプは冬の間中ずっとうまいスープにありつけた。しかしながら料理人の助手たちは、スープをキャンプまで運ぶのに3マイル[4.8km]もの道のりを毎日往復しなければならなかったので怒った。

このお話の別の版によれば、荷運びの御者は豆を満載して凍った湖を横切って進んでいた。すると氷が突然割れて雄牛が溺れてしまった。バニヤンが湖をいったん堰き止めて、岸辺で木の枝を燃やしてから湖の水を川に流したので、雄牛の味が少しついた豆のスープが仲間たちのもとに届いた。

男たちがキャンプから少し離れた場所で働いている時、調理人はスープを棒やロープにつけて凍らせて彼らのもとに運んだ。

野生動物

たくさんのすばらしい動物たちが伐採キャンプの周りの森林を徘徊していた。動物たちの中には非常に荒々しく獰猛な物もいたが、無害な物もいた。 丘を転げ落ちないようにするために正方形の卵を産む鳥がいた。アップランド・トラウト[空想上の生き物]は高い木の上に巣を作るので捕まえるのが難しかった。サイドヒル・ドッジャー[空想上の生き物]は、上り坂のほうの足が短くなっている。ピナクル・グラウス[空想上の生き物]は片方の翼しかない。そのせいで円錐状の丘の頂上付近で一方向だけにしか飛べない。スノー・スネーク[空想上の生き物]は冬に最も活動的になる。スノー・スネークは、暗くなってから森の中をさまよう者たちを獲物にする。ランプティフューゼルとホダグは非常に残忍な野獣だ。

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