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投資で稼ぐ力をつける その1:自分が本能に縛られていることを認識しよう

第二幕 2-8 レディネス④ 資産収入:投資で稼ぐ力をつける その1

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損したくない

そもそも人間は投資に向いていない
まずはベーシックなところで、利益を得ることよりも損を回避することを重視する「損失回避性」という心理作用が働くことがある。定量的には、利益を得ることに対して、損をすることの心理的インパクトは2.25倍というのが研究結果でわかっている。

たとえば、定期預金が大好きな人に、いくら話しても株式投資の魅力が伝わらないのは、ある意味仕方がない。説得しようと思った場合は、「最悪100万円損することがあるけど、普通に行くと225万円は儲かるよ」というと、ちょうど釣り合うということである。

「損失回避性」は仕事にも影響を与える。この心理作用を使って、仕事をつまらなくするのは簡単である。仕事を減点方式にすればよい。ただでさえ利益よりも損を回避したいと思っているのに、さらにその損が減点されるとなると、その回避本能は果てしなく大きくなる。結果、チャレンジングなことは一切やらなくなるだろう。

一方で、今はデジタル化社会が進み、ビジネスも何が当たるかわからない、リスクを取ってチャレンジしないといけない、という風潮が強くなっている(実際は、いつの時代もそういわれていることだろう……)。
こうなると「損失回避性」を回避しないと、成長がなかなか難しい。そこで、失敗を許容しようといったムーブメントが大きくなる。

投資についても、同様に失敗許容ムーブメントを広めることができればとは思う。ただ、お金が絡むので、そう無邪気にできる話ではないとも思う。

焦ってしまう

次に、『ファクトフルネス』で指摘されている「焦り本能」も、人間が投資に向いていないことに影響している。焦り本能とは、「今すぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込みである。

日々、我々は焦り本能に急かされている。ダイエットしかり、子どもの勉強しかり、老後の2000万円問題しかりである。

ビジネスの現場で考えると、焦らないと買わない典型的なサービスとして、コンサルティングビジネスがある。一般的には不要不急で、かつ中身もわかりにくい。コンサルティングビジネスを売る場合の常套手段のひとつとして、ホラーストーリーを語るといったやり方がある。「このままいくと御社はこうなっちゃいますよ」と怖いストーリーをリアルに語り、サービスを買ってもらうといった鉄板の売り方である。これは正に、「焦り本能」に火をつけている。

損したくない+焦ってしまう

投資に目を向けよう。投資の場合、さらにやっかいなのは、「損失回避性」に「焦り本能」がもれなく、くっついてくることである。結果何が起こるかというと、損が出たときに、すっごい焦っちゃうことである。とくに、なんらかの外部環境変化が起こっている場合は、その傾向が顕著になる。「コロナの影響で、このまま株価が落ち続けちゃったらどうしよう……」と思い、ついつい売ってしまう。外部環境で株価が落ちたときは逆に買い場だと、金融のプロの方々は指摘されていると思うが、本能なのでなかなか抵抗が難しい。

「損したくない」への対抗策

損失回避性と焦り本能、これら2つにどう対抗するか? そのカギはデータである。

損失回避性は心理作用であり、事実とは違う。事実は利益も損も同じ重みづけである。利益と損失の関係を示したのが下図になる。

利益と損失の関係

直線1は、利益=損失を示す。直線2は、利益=2.25×損失、これは損失回避性の心理作用で、喜びと苦痛が釣り合う状態を示す。

直線1の左上の領域(赤色+青色)は、利益>損失になるため、本来は利益を選択すべき領域である。ただ、実態は損失回避性の心理作用により、直線2の左上の領域(赤色)のみで利益を選択している。青色の領域は、本来利益を選択すべきなのに、選択していない領域で、すなわち取れるべき利益を失っている領域を示す。

上図のケースで、利益と損失の上限がそれぞれ10万円で計算すると以下になる。※単位は、万円の二乗。数字自体には意味はない。

①本来取れるべき利益領域(赤色+青色):50
②実態としての利益領域(赤色):22.2
③失っている利益領域(青色):27.8

③÷①は56%であり、なんと本来獲得できる利益機会の半分以上を失っている計算になる。これはもったいなくないか? データの力で、損失回避性の心理作用に抵抗して、利益獲得の機会を増やそう。

「焦ってしまう」への対抗策

次に、焦り本能への抵抗である。これについては、『ファクトフルネス』の著者である故ハンス・ロスリング氏が明確に答えを出している。それは、「データにこだわろう」ということである 。

緊急で重要なことならなおさら、データを見るべきだ。一見重要そうだが正確でないデータや、正確であっても重要でないデータには注意しよう。正確で重要なデータだけを取り入れよう

『FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP)

「データFirst、行動Second」である。投資において、焦って行動せざるを得ない状況に陥らないように、まずは自分で自信をもって判断できるデータを整えることが重要である。その上で自分の頭で考えて判断できるようにし
よう

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