トップ画像引用：JRA　4月壁紙カレンダー

■ 23フェブラリーS→24高松宮

2024年3月25日（月）午後7時
－東京都某区　スナック忘れな草－

「あちゃー、ファストフォース関連は登録なしだな」

タコ社長が渋い表情で言った。高松宮記念は、昨年のフェブラリーステークス優勝騎手、坂井瑠星騎乗のマッドクールが勝った。単純に、それならば昨年の高松宮記念関連馬がいたら、大阪杯で注目してみようと思ったという。

2023　フェブラリーS
（外）レモンポップ（坂井瑠星）

2024　高松宮記念
（外）マッドクール（坂井瑠星）

2023　高松宮記念
ファストフォース
（団野大成・西村真幸・安原浩司）

2024　大阪杯
西村真幸・安原浩司：いずれも登録なし
団野大成：netkeiba.comでは想定騎手に名前なし

「ま、そんなんで当たったら苦労はしねえがな」

タコ社長は自嘲気味にそう言うと、眞露の水割りをぐびりと飲んだ。

「それはそうと、この桜の強調はなんなのかしらね？」

ギョニ子が言った。JRAホームページのトップ画像と4月の壁紙カレンダーが、いずれも桜を背景にした昨年の大阪杯だったことが気になるという。

「たしかに・・」

右隣にいた真一郎が同調した。

「4月壁紙カレンダーの場合は、来週の桜花賞も兼ねていると捉えることもできます。ですがトップ画像の大阪杯の画像でも桜を強調しているとなると、何か意図があるんだと思います」

「カレンダーのタイトルは『桜の祝福』ね。サクラサクから新人騎手、新人調教師なんてどうかしら？」

水仕事がひと段落ついた麗子ママが、タオルで手を拭きながら言った。

■ 吉村誠之助

「新人騎手と言えば、昨日の阪神メインでデビュー初勝利を挙げた吉村誠之助騎手。史上6人目の記録だそうですよ」

マスターがグラスを磨きながら言った。初勝利がメインレースというのは非常に珍しく、JRA競馬学校を卒業した騎手では2002年の鈴木慶太騎手以来22年ぶり、史上6人目の記録だという。

＜JRA競馬学校卒業騎手　初勝利がメインレース＞

1989　小池隆生
1993　伊藤直人
1994　幸英明
1997　武幸四郎
2002　鈴木慶太
2024　吉村誠之助

【六甲S】吉村誠之助　メインレースでのJRA初勝利
「周りの方が声をかけてくれて勝ったと」

「おお！武幸四郎のはあれだよな？」

タコ社長がお通しのマカロニサラダに手を伸ばしながら言った。

「マイラーズカップのオースミタイクーン。それを含めてもたったの6人か・・・なにかあるのかもな？」

■ ドラゴン桜

「違ってるかもしれませんが・・・」

真一郎が遠慮がちに切り出した。

「トップ画像も壁紙カレンダーも、背景に山が見えます。仮にその山を六甲山とすると、東京六大学を示唆・・・・・ちょっと無理っぽいですかね？」

「東京六大学？」

マスターが興味を示した。

「しんちゃん、もうちょっと詳しく教えてください」

「は、はい。ええと六甲ステークスで初勝利を挙げ、史上6人目の記録を作った吉村誠之助騎手。数字の『六』を強調・・・ジャックドールはもちろん大阪杯。桜は来週の桜花賞です。3週連続の日曜阪神メインが、六甲、大阪、桜。最初の文字をつなげると『六大桜』となるんです」

＜3/24～4/7　日曜阪神メイン＞

3/24（日）
【六】甲ステークス

3/31（日）
【大】阪杯

4/7（日）
【桜】花賞

【六】【大】【桜】→六大桜

「なるほどなあ！それからどうなるんでい？」

今度はタコ社長が喰いついた。

「うまい具合に、大阪杯のゲストプレゼンターが長澤まさみ。ドラマ版の『ドラゴン桜』に出てるんです。『ドラゴン桜』といえば、落ちこぼれが東大を目指す・・」

「東京大学！やるじゃんしんちゃん。浮上してくるのはこの2頭ね」

真一郎が全部言い終わる前に、ギョニ子が口を挟んだ。東京六大学の、というより日本の最高学府の中でもトップといってよい東京大学。それがサインならば、東京優駿勝ち馬のタスティエーラ、東京ホースレーシングのルージュエヴァイユだろうという。

ドラゴン桜→東京大学
タスティエーラ　　　東京優駿（ダービー）勝ち馬
ルージュエヴァイユ　東京ホースレーシング　

「タスティエーラはともかく、前走2番人気で8着のルージュエヴァイユ。ここは狙いどころかもしれないわね」

麗子ママがそう言うと、みんながうんうんと頷いた。月曜日の時点では、タスティエーラとルージュエヴァイユに注目しようということになった。

■ 伝説のダンス

2024年3月26日（火）午後7時
－東京都某区　スナック忘れな草－

常連客が全員揃うのを待っていたかのように、その男はやって来た。くろたんだった。今日は昭和のような古臭いレオタード姿で、髪は聖子ちゃんカットのようなこれまた昭和のアイドルといった雰囲気だった。

ボックスのような足元がおぼつかないステップのダンスを踏みながら、何やら英語の歌詞の歌を歌っている。

「おちゅてまふぇーん、ふぉらいびよめーん♪
　そーとぅないうぃ ごなだん らなうぇい♪・・・」

「懐かしいなあ」

タコ社長が目を細めながら言った。

「井森美幸の伝説のダンスだろ、くろたんさん？」

「ちゃうわい！！円ショップのCMじゃい！」

「ああ！円ショップ武富士ね・・・それはギリギリわかったけど・・・？？？」

麗子ママが首を傾げた。

「ああもうじれったい！」

くろたんはそう言うと、つなぎになっているレオタードの上半身側を脱いだ。背中には黒の油性マジックで「110」と書いてある。

「ああ！これは失礼しました」

マスターが深々と頭を下げた。

「わかればよろしい」

くろたんは満足そうに頷くと、タコ社長の右隣りに腰をおろした。

「あ、警察の方ですか？今うちの店で上半身裸の男が俺を捕まえてくれって・・・」

「やめんかい！！」

くろたんはマスターのスマホを奪い取り、あわてて電話を切った。

「誰が『110番』してくれって頼むかっちゅーの！『110年ぶり』！武富士からの尊富士（たける ふじ）でしょうが！！」

「あら？くろたんってスリムだから、尊富士には見えなかったわ・・」

ギョニ子がくろたんをしげしげと眺めながら言った。

「むしろ華奢なその体・・・あれよあれ、沢田亜矢子のマネージャーから、プロレス界にデビューした人・・」

「ゴージャス松野！！」

タコ社長とマスターが同時に声を張り上げた。タコ社長がポンと膝を叩きながら言う。

「なるほどくろたんさん。ゴージャス松野からの、ミッキーゴージャスってことだな？」

「ちゃうわい！・・・・ていうか馬はそれでいい！！ミッキーゴージャスの推しネタは・・」

ミッキーゴージャスの推しネタを披露しようとしたくろたんを、麗子ママがさえぎった。

「さあくろたんさん。能書きはあとで聞くからまずはこれを食べて」

今日のお通しはほろほろに煮込んである豚の角煮だった。一口食べて響のロックで追いかけたくろたんは目を見張った。

「ウマい！！こんなうまい角煮は初めてだ！！」

結局、響のロックを2杯と豚の角煮を堪能したくろたんは、ミッキーゴージャスのサインを披露するのを忘れ、また来るぜと言って店を出て行ってしまった。

↓　↓　↓

ミッキーゴージャスの推しネタ　くろたん　X

■ デルマソトガケ

「麗子ママの勝ち～～！！」

タコ社長が相撲の行司のような身振りと発声で言った。

「『突き出し』からの『送り出し』ってところだな？」

「うまいこと言いますね」

マスターがニヤリと笑った。突き出しは関西方面でいうところの『お通し』に当たる。相撲の決め技『突き出し』に掛けているという。

「え？ちょ、ちょっと待って！！」

ギョニ子が素っ頓狂な声を挙げた。みんなが何事かと注目する。

「昨日、トップ画像と壁紙カレンダーから、『東京六大学』ってワードが出たわよね？」

みんながうんうんと頷く。

「そして、くろたんさんがコスプレで示した大相撲ネタ。相撲関連の馬にデルマソトガケっていたわよね？・・・この馬って、東京六大学の馬とどこかでつながってたような気がするの・・・ええと、なんだったっけなあ・・・」

ギョニ子が全部言い終わる前に、何かを察したマスターがパソコンをカタカタと動かし始めた。数分後、マスターの手が止まる。

「ケンタッキーダービー！！去年のケンタッキーダービー、デルマソトガケが6着だったレースで、勝ったのがアメリカの『メイジ』という馬だったんです！」

みんながおおという歓声を挙げた。『メイジ』ならもちろん東京六大学のひとつ明治大学につながる。だが、この『メイジ』が何を指すのかに気づくには、あともう一日要することとなる―

■ バイオレットステークス

2024年3月27日（水）午後6時半
－東京都某区　スナック忘れな草－

ギョニ子と真一郎が一緒に店にやって来たとき、客はタコ社長だけだった。タコ社長は、気持ちよさそうに桑名正博の『セクシャルバイオレットNo.1』を歌っている。わざとらしい巻き舌がなんとも気持ち悪い。

ギョニ子と真一郎に生ビールを配りながら、麗子ママが小声でささやいた。

「かれこれ10回は歌っているかしら？最初は手拍子していたテーブル席の客も、5回目あたりから次々と帰っていったわ・・」

そう言って眉間に皺を寄せる麗子ママは、心底迷惑そうな顔をしていた。なんだってそんなに同じ歌を歌っているのかというギョニ子の質問には、マスターのほうが答えてくれた。

「大阪杯がある日の阪神9Rに、2008年以来16年ぶりにバイオレットステークスが組まれているんです。そこからの『セクシャルバイオレットNo.1』。もうちょっと上手だったらまだいいのですが・・」

10回目の『セクシャルバイオレットNo.1』を歌い終わったタコ社長は、満足そうにいつもの席へ戻った。すっかり氷が溶け切った眞露の水割りをがぶがぶと飲み干す。

真一郎が言った。

「社長さん、お疲れさまです！歌を聞きながら桑名正博のことを調べてました」

耳がどうにかなりそうなギョニ子、麗子ママ、マスターを差し置いて、真一郎はケロッとしていた。調べものに集中していて、難を逃れたのだろう。

「そしたら面白いことに気づきました。桑名正博って、一時期名前の漢字を『将大』にしていたそうなんです。『将軍』の『将』に『大中小』の『大』。これで『まさひろ』と読ませるのは、マー君と同じですよね？」

みんながうんうんと頷いた。楽天イーグルスの田中『将大』であれば、確かに桑名将大と同じだ。

■ まさひろNo.1

「ってことは、バイオレットステークスが久しぶりに組まれるのは、『将大No.1』を示唆するんじゃないかと・・」

「おおお！『将大No.1』かい？10回も歌ったのにそこには気づかなかったぜ！マー君が日本一になったのは、甲子園で二度、楽天ではあの『11.3』だよ・・」

タコ社長が全部言い終わる前に、マスターがパンパンと手を叩き大きな音を出した。そして、3秒ほど天を仰ぐ。

「ど、どうしたんでい！？」

タコ社長が声を掛けると、マスターはゆっくりと顔を戻しみんなを見渡した。

「明治ですよ！明治！マー君こと田中将大投手が胴上げ投手になった日本シリーズ第7戦。11月3日は文化の日・・・そう、明治天皇の誕生日です！」

みんながおおという歓声を挙げた。

「そしてそして、昨日出てきたケンタッキーダービー！あの日、日本で行われたGⅠがNHKマイルカップだったじゃないですか！1着シャンパンカラー、2着ウンブライル。その馬単の出目が！」

「・・・11番3番！？」

全員がほぼ同時に声を挙げた。そしてすぐに各自スマホで結果を確かめる。間違いなく11番3番の明治天皇馬券だった。

2023/5/6（土）
ケンタッキーダービー
1着　メイジ
6着　デルマソトガケ

日本時間同日　5/7（日）
NHKマイルC
1着：6－11　シャンパンカラー
2着：2－03　ウンブライル
3着：5－10　オオバンブルマイ

馬単：11→3　
（11.3＝文化の日＝【明治】天皇誕生日）

■ ドラゴン桜2

「まとめますね」

マスターがやっと落ち着きを取り戻し、言った。

「トップ画像と4月壁紙カレンダーが示唆する『東京六大学』。バイオレットステークス復活が示唆する『田中将大No.1』。共通点は『メイジ（明治）』・・・隠し味はデルマソトガケという相撲馬名。田中がナンバーワンになるなら・・・」

大阪杯
リカンカブール　（田中克典）
ローシャムパーク（田中博康）

「2択になりますかね・・」

ところがマスターの2択説を一蹴したのは、対面のギョニ子だった。

「いや、マスター。その2頭ならローシャムパークの1択よ！想定騎手は戸崎圭太。けいた君でしょ？もうひとつ、東京六大学が入ってるわ」

ローシャムパーク
戸崎圭太→けいた君→京王線（慶応）

みんながおおという歓声を挙げ、そして拍手した。

「明治の明と慶応の慶・・・」

真一郎がニヤリと笑いながら言った。

「先週引退式を行ったメイケイ（明慶）エールの置き土産かもしれませんね」

みんながうんうんと頷き、麗子ママがとどめを刺した。

「ローシャムパークの函館記念。プレゼンターは長澤まさみだったのよ。長澤まさみが出演した『ドラゴン桜』・・・2021年に『ドラゴン桜2』が放映されているの」

マスターが後を受けてまとめた。

「そして大阪杯もプレゼンターは長澤まさみ・・・桜の女神がローシャムパークを再び祝福するのかもしれませんね。そして、社長さんが月曜にあげてくれた昨年のフェブラリーステークスからの流れ・・・レモンポップの坂井瑠星と田中博康。坂井瑠星が先週の高松宮記念を、田中博康が今週の大阪杯という流れがあるのかもしれません」

2023　フェブラリーS
（外）レモンポップ（坂井瑠星・田中博康）

2024　高松宮記念
（外）マッドクール（坂井瑠星）

2024　大阪杯
ローシャムパーク（田中博康）？

みんながうんうんと頷き、スナック忘れな草の本命馬が決まった。

スナック忘れな草
大阪杯　本命馬　
ローシャムパーク

桑名正博 - セクシャルバイオレットNo 1