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かしかり

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フィナンシェヤクザは一度だけカヌレを匿ったことがある。

焦げ臭くグニャグニャ釈然としないギャング連中とは距離を置いていたが、旧市街の水場に行き倒れた女はひどい傷を負っていた。

切り裂かれたマントの下はぐっしょりと濡れ、抱き支えると洋酒の香りが移った。

ほど近くのモザイク装飾が施された塀門を叩く。

「しばらく預かってくれ」

厄介な頼みを前にしても、バクラヴァは断らなかった。

ヒジャブの奥の緑の瞳がカヌレを一瞥し、従者に素早く手当の指示をした。

「貴方には借りがある」

バターを融通したときの話だろう。

「悪いな、追手はこっちでどうにかするから」

「来たものは助ける、”箱”の中の物は守る」

扉が締まると青い箱は沈黙した。

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