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母の名は。 第6回・ノーザンルビーとシャドークイーン

回を追うごとに

マニアック度が増していくかもしれない、この「母の名は。」

今日はカラフルなお芋

ノーザンルビーシャドークイーン

を取り上げます。

シャドークイーンはシネマ芋先輩のマガジン記事(ここ最近のじゃがいも料理まとめ(2020年8月「地いも」「シャドークイーン」「アンデスレッド」)で

品種解説を託されたような気がするので、

任せろー!頼まれていなくてもしゃべるぞ


むらさきの姉妹


ノーザンルビーとシャドークイーン

なぜ同時に取り上げるのかといえば、

文字数稼ぎ……ではなく

このおふたり

姉妹である(性別は私の感覚なので気にするな)

しかも浪漫を感じる姉妹なのだ。

私の好きな血族の話なので、ちっと我慢してね。

明治時代中頃まで栽培されていた北海道の主要な品種に「根室紫(ねむろむらさき)」という品種があった。

DNAを調べたところ、この根室紫は

日本に初めてまたはごく初期に伝来したじゃがいもに由来する品種であるらしい。

日本に初めて伝来したじゃがいもは、1600年頃ヨーロッパからジャカルタを経て長崎にオランダ商船でやってきた。

さらに!この根室紫は南米から初めてもしくはごく初期にヨーロッパに伝わったじゃがいもの直系の末裔であろうと推論されている。

ちなみに、埼玉県の大滝村に伝わり、今も育てられている在来じゃがいも「紫いも」も同じ遺伝子マーカー型だったらしい(探しに行きたい)

うわー、根室紫、はじめちゃんの系譜じゃん。

そんな原種に近い根室紫の、子供でもなく孫でもなく【ひ孫】に

キタムラサキ

というじゃがいもがいる。

カルビーのスナックでじゃがポックルと同じシリーズの

じゃがピリカというお菓子に使われている。

キタムラサキは

皮も肉も紫色なのだが、

これは根室紫の系統に由来する。

はい、

で、

そのキタムラサキの「開放受粉種子」を1993年に採種して選抜し、

2006年に品種登録されたのが

ノーザンルビーとシャドークイーン

なのだ。

はじめちゃんの系譜を受け継ぐ2つのカラフルポテト

それぞれの特徴を紹介する。

北の紅玉


カラフルポテトとは、

アントシアニン色素によって赤や紫に色づいた品種である。

ご当地アンデスにも存在していて、

「母の名は。 第5回・インカのめざめ」でちびっと紹介した「インカレッド」「インカパープル」は日本で初めて誕生したカラフルポテトだ。

「インカのめざめ」の濃い黄色もカラフルといえばカラフルよね。

親であるキタムラサキは果肉が紫色だが、

ノーザンルビーは赤紫というかピンク色


形は「メークイン」に似た長楕円

目が浅く滑らかな皮は赤色で、さつまいものように見える。

ブルーベリーなど紫のものによく含まれるアントシアニンは熱を加えると抜けることが多いが、

ノーザンルビーにおいては

加熱調理をしても色が落ちずに綺麗なピンクに仕上がるので、

ゆめかわなポテトサラダやポタージュが作れる。

シンプルに食べるなら茹でるより蒸す方がべたっとしない印象

そのままだとだいぶあっさりしていて、ほのかに芋臭さもあるので

煮崩れしない性質を生かして煮込み料理にするのもよい。

実際に料理に使ってみて思ったのは

「めっちゃベーコンみたいに見える」

ということである。

角切りや細切りにして焼くとパット見ただけでは区別がつかない。

食べてみるまで、芋か肉かわからない混乱

ノーザンルビーを入れるだけで肉ましましに見える一品に。

果肉はピンクなのに、

お花は意外にも白色

ジャガイモシストセンチュウ抵抗性ありです!


闇女王



シャドークイーンは

紫色がめっちゃ濃い

キタムラサキの3倍のアントシアニン色素を含有していて

健康食材としても期待されている。

形は「クイーン」らしく長楕円で、皮は暗い紫

こちらも加熱しても色は鮮やか


いつものジャガイモ料理が

ハロウィンパーティーに早変わりである


サツマイモのような食感で

やっぱりポテサラにするとばえる。

ジャガイモシストセンチュウ抵抗性なしです!(なんでだよー)

ちなみにこの写真の


どれがノーザンルビーでどれがシャドークイーンか

わかるかいそんなもーん!

て感じなのだが

芋研ゼミ生はなかなかの正答率をたたき出すので驚きである。

私のTwitterのつぶやきを読んでいるだけなのに……?怖い。

答えは

長楕円ですこし赤みがかった右上がノーザンルビー

長楕円でよく見ると具合の悪そうな左下がシャドークイーン

2つの芋と黄色い肉のじゃがいもを取り混ぜて

サラダにしたり、揚げたりすると、

じゃがいもだけでもテンションの上がる一皿になる。


その色に、はじめはぎょっとするかもしれないが

使ってみればどちらも料理しやすいお芋なので

カラフルポテトを食卓に取り入れる楽しさが

広まるとよいな~


シャドークイーンが登場するSS

「アレは確かにわたくしだった、わたくしの暗いひずみが溢れ出てしまったもの」
 泥の跳ねたドレスを握りしめるメークインの手が震えている。
「女王が悪いのではありません」
 隣に座した男爵は労わるように指を重ねた。稲妻のごときシャドークイーンの襲来、敵味方の兵が入り乱れる中、伯爵の采配で、二人は王室の隠し扉から城の外に逃れた。幾重にも分岐する地下通路を奥へ遠くへ、時折窪みに身を預け、上がった息を整えた。シャドークイーンは場に存在するだけで紫煙を漂わせ、触れたもの全てに蠱惑の色を移した。付き従うのは地面から掘り起こされたとは思えぬ白肌白毛、男爵と生き写しのホワイトバロン。シャドークイーンが生み出したホムンクルスであるそれは、なんびとも闇女王の邪魔はさせぬと冷徹に剣を振った。
「欲望は汚いもの清く正しく凛とあれと教わってきたけれど……悪とは美しいものね」
 思い出す女王の唇からため息が漏れる。
「ぞっとするほど綺麗に見えた」
「我が女王」
「でもね」
 女王は立ち上がり、進むべき方向を見据える。
「王国の民を守るためならば、わたくしは戦いましょう」
 揺らがないのだ、五月の女王はたとえ煮え湯の中でも崩れることがない。同じ年に優良品種に選ばれ一世紀近くを連れ添った男爵にはその強さが眩しい。
「お供します」
「自分で自分を斬りつけるような思いをするかもしれない」
 眉をしかめる女王に笑いかける。
「承知の上。私はあなたの男爵ですから」

今後書こうかなと思っている母の名は。ネタ(予定)

・シンシアとフランスのお芋

・メークイン/熟成された女王

・ながさき黄金と北海こがね

・ドラゴンレッドとさやあかね

・俵の一族

・とうやときたかむい

・さやかとはるか

・在来じゃがいも

・カルビーポテト

まあ、気まぐれに全然違う品種を語るかもしれないし、

書く前に飽きちゃうかもしれないので、気が向いたときにお付き合いください。

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BOOTH⇒『The Hidden Treasure われは妹思ふゆえに芋あり』

母の名は。バックナンバー

第1回・キタアカリ

第2回・スノーマーチ

第3回・男爵いも

第4回・紅丸

第5回・インカのめざめ

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