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那波加神社

 那波加神社は滋賀は大津の苗鹿に坐すお宮です。延喜式内社で、雄琴を統治した小槻氏の氏神です。小槻氏はもともと滋賀の草津のあたりを統治していましたが、仁寿元年に雄琴をも拝領されたのでありました。
 御祭神は天太玉命と申し上げます。
 天太玉命と申しますと忌部氏の祖で、徳島あたりにお祀りされているのと、あとは伏見の金札宮などを私は思いますが、どうしたことでしょう。忌部の人々は大昔には苗鹿に縁があったものでしょうか。

 那波加神社は荒御魂をお祀りする上の宮と本宮である下の宮に分かれます。ふたつのお宮は道を跨いですぐ近くにあり、どちらも木の黒ずんだ垣と社殿がはなはだ渋く美しくおわします。上の宮の裏手からは瑞垣の内側にある霊石が遥拝できます。なんとも独特な、てっぺんが平たい形のちいさな石で、側面が鋭角なのがなんとなく春日のご本殿下や水谷社下の漆喰で鋭角に固められた磐座を連想しましたが、磐座とは実に小さいものがあるのは不思議なことです。鹿島香取の要石や、椿大神社の御船磐座、三輪明神の少彦名命を祀る磐座神社など、現代人の目にはちいさい石と見えても遥か昔から特別な磐なのは、やはり目に見えぬ何かを感じていたからでしょうか。
 本宮に天太玉命がいつから坐すのかはわかりませんが、上の宮は大同2年に斎部宿禰広成が創建したものと伝わります。そうすると、苗鹿のあたりはやはり忌部の所領であったのでしょうか。忌部氏の後退に伴って小槻氏が新たに苗鹿、雄琴に入ったものでしょうが、忌部氏のことも少しずつ学びたいと思います。
 いずれにせよとても麗しいお宮でした。
 お宮に駐車場は無かったように思われます。駅からも遠く、なかなかお参りするのが困難かとも思われます。しかし那波加神社の坐す前の道は旧道と見え、堅田から坂本に至るまで大変あちこち名所旧跡の多うございますから、散歩して見るのもとても楽しいものと思います。

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