医学部小論文「清潔について述べよ」

清潔ってなに?

「清潔について述べよ」
昔の和歌山県立医科大学の小論文試験で実際に出たお題です。

「単科医科大学では取っ付きにくいお題が出ることがある。」
と駿台講師が雑談で言っていたことを鮮明に覚えています。

「いやいや!答え教えてよ!実際出題された時なに書けばいいのよ!」
結局私は小論文が課されない国公立の医学部を受験し合格することが出来ました。

医学部5年生として病院実習で手術見学をしたときに上記のお題が意図するものが分かりました。
医学部の教授先生たちが想起する「清潔」とは、
手術前に滅菌されたガウンや滅菌された手袋を装着したりする「清潔操作」のことを指していたのです。

私ならこう書く、という回答は後ほど記します。
さて、まずは脱線気味に前提の話をしていきたいと思います。

医学知識が合否を分ける事実


非医療従事者が想像する清潔と、医療従事者が想像する清潔は全く違う概念です。
このようなことはままあって、「貧血」「ショック」などが代表的です。
医療従事者の常識は非医療従事者の非常識なのですが、出題者側の医学部教授先生はこれを意識していません。

医学部受験において医療知識を知っているか知っていないかで合否が分かれることがしばしばあります。
私が合格した時の医学部英語入試でも、認知症の徘徊老人が電車に轢かれる話が出題されました。
医学部の同級生は「あの話知ってた」という者が多かったです。

この文中にはdementiaやcerebral cortexなど中々レベルの高い単語も散りばめられており、
このエピソードや医療英単語を知っていれば本番で速く正しく解けて合格にかなり近づけるのです。

医療知識の有無で合否を分けることも十分あるのに、予備校講師や家庭教師が決まって言うセリフは
「自分で本などを読んで知見を広げましょう」

これって結構無責任じゃないですか?
私なら生徒に、知っていれば合格に限りなく近づける知識は教えたくなります。
という訳で医学部受験生に向けてこれからコツコツnoteを書いていこうと思います。

医学部小論文を書くための準備


さて「清潔」について300文字の小論文を書いていきたいのですが、
手がかりは「出題者側が意図している意図は手術の時などに使う清潔操作じゃないか」という点です。
小論文で大切なのはtake home message(自分がイイタイコト・自分のアピールポイント)を上手いこと盛り込むことです。

さて、今回のtake home messageは何にしましょう、難しいですね。
自分が書きやすくて、なおかつ良い感じにアピールできそうなtake home messageを頑張って探しましょう。
医療倫理とかがお題なら「患者さんの気持ちが分かる優しいお医者さんになりたい」とか言えるのに・・・

患者さんに優しいお医者さんになりたい+清潔操作、で考えた時に思い浮かぶのは「不潔」の概念です。
医療現場においては滅菌処理された「清潔」なもの以外は全て「不潔」です。

患者さんの擦り傷などを拭く時に看護師さんに「先生、清潔なガーゼ出しますか?」と聞かれて、
擦り傷程度であれば高価な滅菌ガーゼは必要ないので、「あ、不潔なガーゼで大丈夫です〜」
と患者さんの目の前で言ってしまうと患者さんは汚染されたガーゼを出されてしまうのかとギョッとしてしまいますよね。
このような事が起こらないように「普通のガーゼで大丈夫です」とあえて言うように心がけています。

今回のtake home messageは、
「日常語と専門用語で患者さんを不安な気持ちにさせないよう配慮できる医者になりたいです」
これが一番書きやすいかなと思います。私が浪人生の時にはこんな発想絶対に思いつきません。
しかし、医療現場では常識で普段から口うるさく言われている事です。

医者の常識は非常識
医学部入試にも受験生にとっての非常識が出題されてしまうこともあるのです。
では私の書いてみた300文字の小論文を記します。

解答例



医療現場では、体内で使用しても感染症を起こさないように滅菌処理されたものを「清潔」な物と呼び、それ以外のものを「不潔」な物として扱います。これは非医療従事者にとっては馴染みがなく、「不潔」と聞くと汚染された物を想像してしまっても仕方ありません。
私が医師となり、医療現場で実際に働く際には医療スタッフ同士の会話では清潔・不潔の概念を用いて円滑なコミュニケーションをする一方で、
患者さんに説明する際には相手にとって分かりやすい平易な言葉を使いたいです。
時間の許す限り丁寧な患者さん思いのインフォームド・コンセントを行い、
患者さんから信頼されるような臨床医になれるように日々精進していきたいと思っています。(300文字)

これから一緒に医学部小論文のトレーニングをやりましょう


いかがでしょうか。到底高校生が書ける代物ではありませんね。
しかし適切なトレーニングを積んでいけばこの程度の文章は書けるようになると思います。
これから必要な医療知識や医者の常識、小論文の論理構成などnoteであげていければなと思っています。

「清潔について述べよ」という難解なお題が和歌山県立医科大学で過去に出題されたことは事実であり、
問題製作者の医者が考える「清潔」とはこれ以外にはありません。

加えて非医療従事者である予備校講師はこの事実を知る由もありません。
「自分で本読んで調べましょう」としか言えないのは教えることが出来ないからなのです。
質問がございましたら是非お気軽にご連絡ください。

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