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歯の隙間を埋めたら

上の歯が元々2本無く、乳歯が抜けてから大学2年までずーっと前歯がすきっ歯だった。

割と救いようのないくらいの隙間が空いていて、ご飯も細めのうどんも隙間から食すことができた。(めっちゃ嫌)
食べ物が挟まるだけならまだいいのだが、1番はやはり見た目が嫌だった。

口を開けて笑うとなんともだらしない歯並びが見えて、前歯をどうにか見えないようにしようと話す時は手を前に持ってくるようになった。
写真を撮られる時は少し横を向いて隙間があまり見えないようにしてみたり、口を閉じて笑ったりしていた。
父親からの遺伝で私は口角が上がらない。
どれだけ笑顔になっても口が漢字の一の形になる。
なので口を閉じて笑うと頑張っても仏頂面のようになってしまう。 

とにかく歯をどうにかしたかった。
歯医者にも行っていたけど、矯正をしても歯が生えそろっていないので難しいし親知らずが生えてくるのを待てばいいと言われた。
歯医者へ行く度に母親から歯並びのことを言われるのが鬱陶しくなり、また情けなくて途中から矯正したいことは口にしないようにしていた。

ただ、大学に入りバイトでお金を稼げるようになってからやっぱりすきっ歯治したい!と強く思うようになった。
ちょうど思いが強くなっていた時期、バラエティ番組で整形特集をしていた。
私よりも難しそうな歯並びの人が綺麗になっているのを見て、勇気を振り絞り両親に矯正したいことを伝えた。

勝手にやれば、的なことを言われたのでお金は援助してほしいと伝えると喧嘩になった。
私の言い分としては、虫歯など自分の過失ですきっ歯になったのではなく生まれつき歯が無いのだからそっちにも責任があるというなんともバチ当たりなものだった。
普段口出ししない父親にも怒られたが、事実は事実であるし、お金もそんなに無いので頑固に突き通した。

3つの歯医者を回って、一番信用できそうな歯医者を選んだ。
歯を抜くこともなく、インプラントをするでもなく、少し歯を削ってプラスチックを詰めることとなった。
それまでに半年間ワイヤー矯正をし、費用は50万円だった。

そこの歯医者は学生だから、支払いを2回に分けていいよと言ってくれた。
1回目の支払いは親にしてもらい、2回目は自分で払うつもりだったが2回目も母親がこそっと10万出してくれた。

そんなこんなで無事に上の歯が隙間なく並んだ。ワイヤーが取れてから2年経った今も毎朝鏡の前で感動する。
どれだけこの歯を望んでいたか
矯正が取れても寝ている間はマウスピースで固定していなければいけないが、そんなのすきっ歯のままでいることを考えれば容易すぎるくらいだ。

未だ癖で話す時に手を前に持ってきてしまうが、写真撮影の時は何も考えず笑えるようになった。
写真の時だけでなく、普段の笑顔も増えたと彼が言ってくれた。

歯の隙間が無くなったからといって、超絶美人になったわけでも、突然モテ始めたわけでもない。
でも、隙間を埋めたことで、案外母親が優しいことに気付けた。
自分の笑った顔をちょっと好きになれた。
長い間悩んでいたことも、一歩踏み出せばわずか半年で解決することを知った。


2本歯が生えてこなくてよかった
と少しだけ思えた。

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