【臨死体験】ひいひいおじいちゃんが地獄から生還した話

 まず最初に、私はお寺の娘などではないが、熱心な浄土真宗の家に生まれた。物心ついた頃から、いや、つくまえから繰り返しお念仏のみ教えとともに祖母や母に伝えられてきたことが、今回お話する「ご先祖様が地獄に落ちて生還した話」である。もしご先祖様——私の高祖父(ひいひいおじいちゃん)がこの臨死体験をしていなければ、私にとってお念仏のみ教えはなかなか信じがたいものであっただろうし、宗教的な物にそこまでの思い入れはなかったであろう。その臨死体験があったからこそ、死後の世界は本当にあるのだ、人間は死んだら皆地獄へ行くのだということを受け入れることができた。
本題の臨死体験「ひいひいおじいちゃんが地獄へ落ちて生還した」話だが、代々私の生まれた家で口承されてきた。高祖父から直接話を聞いた曾祖母も亡くなっているため、話を文章にするにはだいぶ苦労したが、母がメモ書きのように書いておいてくれたため、今回それを小説風にしてみた。今まで家族と親戚以外に話が伝わったことはないが、昨今の世界の情勢を目の当たりにし、命がいかに儚いものであるかを私同様に感じられた方が多いのではないか、早く皆様に後生の一大事——死後の世界に気付いてほしいという思いから今回広く公表しようと考えた。

登場人物・・・野中藤吉(高祖父)・キネ(藤吉の後妻)・不思議な占い師・村人たち    ※全て仮名

 それはとても暑い日であった。とある杉山の木陰で占い師が涼んでいた。そこは昔から追い剥ぎが出るような場所であった。藤吉が前を通りかかると、あんたも涼んでいかないかと声をかけられた。藤吉が横に座ると「手相をみてあげよう。金はいらない。タダでみてやろう。」と言うので、手を差し出した。
「あんたは信心を聞く人だ。今の嫁とは別れるだろう。そのあと西の方の森の下に住む女(後に妻となるキネのこと)が妻になる。また、39歳の時に生死に係わる大病をするであろう。」
占い師にそう告げられた藤吉は、どうしたら大病を免れられるのか尋ねた。
「それを免れるためには、お稲荷さんを申し受けて、毎日拝みなさい。」
 さっそく家に戻り、お稲荷様を祀るために、まず融合水(川の水と水が合流するところの水)を汲んでみたのだが、不思議と幾度汲んでも濁って黒いままであった。おかしいなと思いつつ、やっとのことで綺麗な水を汲み、神棚をこしらえてお稲荷様を祀り、初水(その日に使う最初の水である)の願掛けが始まった。毎朝欠かさず、初水を神棚にお供えして拝んだ。また、藤吉は占い師の言うとおりに妻と別れることとなり、キネという後妻を迎えた。かわいい数人の子供たちにも恵まれた。

ここから先は

2,416字 / 1画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?