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ふたたび、水やりの日。


2023.7.29.30

今年の7月は、雨が降らない。

暑いあついアツイ日が、

なんにちもなんにちも
なんにちも、続く。


わたしは、庭の村の天気を
iPhoneで、検索しては

嗚呼、と、嘆く。


38度、37度、
本日も明日も雨の気配、無し。


もはや、庭は、からから、に
乾ききっているだろう、と予想し、

みなさま、どうか無事で、と
願うばかり。



心配なココロで、
ウィークディを過ごし、

土曜日の日暮れ前、
ようやく、庭に着く。

庭にある、ふたつの水栓から、
ホースをくるくると長く伸ばして、

さっそく、水やりを、する。


16時の水やり。

ほんとうは、もうすこし
気温が下がってから、が、良いけれど、

そんなこと言っていられない。

レスキュー!

そう呟いて、思い切り、
水栓の蛇口を、ひらいた。


この日は、16時と19時、
2回、水やりをした。

共に、
一時間ずつ、水を撒き続けた。

が、庭の土は、

おおきな口をあけて
ごくごくと水を飲み込む
巨人みたい、に

いくらでも、水を吸った。



19時の水やりでは、

近所の広場で、
盆踊りみたいなものが
ひらかれているみたいで

炭坑節やら、東京音頭が
聞こえてきた。


母も父も、
いなくなってしまった庭で、

独り、それらを聴くのは、

なんだか切なく、

悲しみが
カラダに満ちてきそうで、

しっかりするんだ、と
ジブンを励ましながら、

ひたすら元気なエキナセアと、
干からびる一歩手前のコリウスに

水をやったところで、

反対側の水栓へ移動し、
ダリアやガウランディアの株元へ

水を、さわさわ、とかけていると、

ふいに、ジャズ演奏が始まった。


音源、では、なく
バンドの生演奏、である。

司会者の声も、流れてきて
その紹介によると、

どうやら、それは

村のなかの
老若男女で結成されている
ジャズバンド

による、演奏なのだった。


華やかで明るいジャズが
庭へ、流れこんできた。

月は明るく、

土は、ようやく
濡れた匂いをたてはじめた。


わたしは、暗闇の庭で
水を放つホースを持ちながら、

耳だけ、のひとになって

(まるで、耳なし芳一、だ)

ジャズバンドの演奏を、
植物さんたちと聴き続けた。



雨の代わりに、
音が降ってきたね。
すごく、良いね。
秋のあなたたちは
きっと、華やかになるね。
ジャズオーケストラみたいに。


わたしは、庭に
演奏が終わる20時まで、いた。


翌朝、7時前に、
もう一度、水を
たっぷり、庭にやった。

土の奥のおくに
たくさん沢山吸い込んでほしい、と
一時間、水をやり続けた。

水道代はこの際、気にしないぞ、と
じゃんじゃん、やった。


暑さに強いお方。
シソ科のアガスターシェさん。
こちらも暑さに強い
タイバジルさんとホーリーバジルさん。


蟻が住んでいる木。
百日紅さんの紅い花。
八重のホリホック。
疲れた美しいひと、みたいな花。
良い匂いの白い薔薇。
挿し木したものが、育って咲いた。


水やりをしてから、草取りや
切り戻しをして、

秋に向けて、すこしだけ、作業をした。


庭のナンニモナイトコロへ
秋蒔き種のための小さな花壇をつくった。

草を抜き、軽く耕し、
新しい土と肥料、石灰を混ぜて、

バーク入り腐葉土で蓋をし、

庭の隅に父が置いていた石を
境、として、半円になるよう、置いた。



10過ぎには、気温が35度を越え、
もはや、庭しごとはできなくなった。


昼には、土は乾きはじめ、
最高気温は、39度となった。


新たな小径づくりを目論むが
暑くて、なにも出来なかった。
タンジーの花が咲きはじめている。
秋立つ日も近い。


午後いちばんのバスに乗ることにして
庭を後にした。

バス停に立っているだけで、
わたしも、どんどん渇いていった。

来週も、水やりに来る予定である。

元気で待っててね。



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