月と螢

自分の灯りだけでは寂しすぎるから
空に浮かぶ月を見ていた
ぽつんと光る月を見て 霞んだ灯籠は燻った

僕が微かな命を灯そうと
誰かといる僕しか見てくれなくて
後ろの電燈は消えかけた
パチパチ音を立てて泣いていた

離れてみると全て綺麗に見えてしまう
近ずくと醜く見えてしまうのだ

誰も僕を見つけないまま
ただ光に見惚れては息を吐く
夜の淵願った言葉は噤んだまま
ただ光る僕を見ていてほしい

自分の灯りだけでは寂しすぎるから
少しも着飾らない月を見ていた
君は充分綺麗だけれど
少し掠れた色で灯る僕だ

何が違うのだろう 君と僕は
同じ様にも思えてしまうのは傲慢だろうか
深い暗闇の中独りの光だ
パチパチ音を立てては泣いていた

言い出せない本音 作り笑いも
全て「愛しい」と笑っておくれ
静かに灯る痛みさえも切り離せず今日も
それら全てが僕だと笑っておくれ

光がないと誰も僕に気付かない
月も皆もきっと一緒だ

誰も僕を見つけないまま
ただ光に見惚れては息を吐く
夜の淵願った言葉は噤んだまま
ただ光る僕を見ていてほしい

月と螢


【独白】
群れで輝きを生む螢と大々的に独りで光る月のお話。


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