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【Tree of Savior M 攻略】「おみくじ」の効果の計算

 オンラインRPG「Tree of Savior M」でクラス「巫女」が使うスキル「おみくじ」について、その効果を計算してみました。

 「おみくじ」は、「特性」(スキル効果拡張オプション)を全て習得した場合、「50%の確率で『小吉』バフ、30%の確率で『中吉』バフ、20%の確率で『大吉』バフを、自分を含むパーティーメンバー全員(厳密には自分を含む5人まで)に付与する。『小吉』は与ダメージ量を12.5%、『中吉』は25%、『大吉』は62.5%増加させる。各バフの効果時間は30秒、スキルのクールタイムは60秒である。」というスキルです。
 たとえば「大吉」が出た場合、次に「おみくじ」が使えるまでの60秒のうち前半の30秒間、与ダメージが1.625倍されます。
(画像に載っている数字は、「特性」を取る前の数字です。)


1.統計的には常時何%アップの効果をメンバーにかけ続けることに相当するか

 まずは、「統計的には常時何%アップの効果をメンバーにかけ続けることに相当するか」を計算してみました。そして一般的な状況の場合(具体的には、観測時間が30秒であるとき以外の場合)、その値をAとすると、それは次の公式、

$$
A=\frac{26.25-6.25p}{(2-p)(1-q)}
$$

で与えられるという結果を得ました。ここで$${p}$$と$${q}$$は装備オプションからくる値です。このゲームの装備の中には「おみくじ」の効果を向上させるような効果(オプション)を持ったものがあって、それらは「小吉が出た場合◯◯%の確率でCT(クールタイム)がリセットされる」というものと、「スキルCTが△△%減少される」というものとの2種類です。前者の確率(◯◯%)を$${p}$$、後者の減少率(△△%)を$${q}$$としました。ただし確率論の慣習に従い、確率は%ではなく$${0\leq p\leq1}$$の数字で表すことにしました。なので例えば「25%」だったら$${p=0.25}$$です。また、式を見やすくするために$${q}$$のほうもそれにならい、$${0\leq q\leq1}$$の数字で表すことにしました。例えば「10%減少」なら$${q=0.1}$$です。

 これらの数値を上の公式に代入することで、$${A}$$が求められます。例えば$${p=0.25}$$、$${q=0.1}$$の場合(これはどのプレイヤーも比較的容易に揃えられるオプションです)なら、

$$
A=\frac{26.25-6.25\times 0.25}{(2-0.25)(1-0.1)}=15.674603…,
$$

となります。つまり、この場合「おみくじ」は統計的にはパーティーメンバー全体の火力を常時15.67%増加させる(1.1567倍にする)ことに相当します。

 前述の通り「おみくじ」では「小吉」が出て増加量が12.5%であるときもあれば、「大吉」が出て62.5%であるときもあります。またそれらは常時かかっているわけではなく、$${q=0.1}$$ならば54秒中30秒だけです。しかし統計的には、15.67%の増加を常時かけ続けるのと同じになる、ということです。

 ただし、観測時間が30秒であるという特殊な状況(例えば、「今この瞬間からの30秒が大事なのであって、その後のことは一切考えない」という状況)では、以下の式で定義される$${A(\tau=30)}$$を用いるのが妥当です。

$$
A(\tau=30)=\frac{52.5-12.5p}{2-p}=2\times\frac{26.25-6.25p}{2-p}
$$

式の最右辺を見れば分かるように、これは上述の$${A}$$の約2倍の値になります。

 公式の導出過程の説明は、書き始めてみたら長くなってしまったので、別紙としてPDFファイル(omikuji.pdf)にまとめました。

 ちょっと長いですが、上述の公式の導出だけなら数ページで終わります。長くなったのは、その式の妥当性を確認するための様々な考察や計算が、それなりのボリュームになってしまったからです。
 後半は数式が複雑になってきますが、基本的に高校数学の知識があれば理解できる内容です。数学に抵抗がないという方や、上述の公式の妥当性について疑問が浮かんだという方は、ぜひ読んでみてください。

 具体的にいくつかのpとqの組み合わせについて計算したものを表に載せます。ただし比較のため、別の計算結果も並べて示すことにします。表には$${A_a}$$と$${A_b}$$という2種類の値が示されていますが、それらのうち、$${A_a}$$が上の公式の$${A}$$であり、「小吉を引いてクールタイムリセットが生じた場合、ただちにおみくじを引き直す」とした場合の値です。他方$${A_b}$$は、「その小吉のまま30秒を過ごし、それが切れてから引き直す」とした場合の値です。
(ただし上でも述べたように、観測時間が30秒という特殊な場合は、$${A_a}$$としてはここに載せた数値の2倍の数値を用いるのが妥当です。また実は$${A_b}$$もそれと同じ値になります。詳細は上のPDFを参照してください)

$$
\begin{array}{llll}
p&q&A_a&A_b\\\hline
0&0&13.125&13.125\\
0.25&0&14.107&14\\
0.3&0&14.338&14.189\\
0.35&0&14.583&14.384\\
0.4&0&14.843&14.583\\
0.45&0&15.121&14.789\\
0.5&0&15.417&15\\
1&0&20&17.5\\
\end{array}
\quad\quad
\begin{array}{llll}
p&q&A_a&A_b\\ \hline
0&0.1&14.583&14.583\\
0.25&0.1&15.675&15.441\\
0.3&0.1&15.931&15.625\\
0.35&0.1&16.204&15.813\\
0.4&0.1&16.493&16.001\\
0.45&0.1&16.801&16.204\\
0.5&0.1&17.123&16.406\\
1&0.1&22.222&18.75\\
\end{array}
$$

$$
\begin{array}{llll}
p&q&A_a&A_b\\ \hline
0&0.2&16.406&16.406\\
0.25&0.2&17.634&17.213\\
0.3&0.2&17.923&17.384\\
0.35&0.2&18.229&17.559\\
0.4&0.2&18.555&17.736\\
0.45&0.2&18.901&17.918\\
0.5&0.2&19.271&18.103\\
1&0.2&25&20.192\\
\end{array}
\quad\quad
\begin{array}{llll}
p&q&A_a&A_b\\ \hline
0&0.3&18.75&18.75\\
0.25&0.3&20.153&19.444\\
0.3&0.3&20.483&19.590\\
0.35&0.3&20.833&19.737\\
0.4&0.3&21.205&19.886\\
0.45&0.3&21.601&20.038\\
0.5&0.3&22.024&20.192\\
1&0.3&28.571&21.875\\
\end{array}
$$

 見ると分かるように、p=0以外のあらゆる組み合わせで、$${A_a>A_b}$$となっています。なので小吉を引いてクールタイムリセットが生じた場合、ただちにおみくじを引き直すのが合理的であるということになります。そこで冒頭では$${A_a}$$を与える式を公式として示したわけです。
(ただし、観測時間が約60秒の場合は例外的にAa < Abとなります。詳細はPDFをご覧ください)

2.「おみくじ」クレリックはパーティーの総合火力にどれだけ貢献できるか

 「巫女」というクラスは「クレリック」というキャラクターに属するクラスです。「おみくじ」というスキルを使う場合、この「クレリック」を自分の操作キャラクターに選び、その使用スキルの中に「おみくじ」を組み込んで使うことになります。「おみくじクレリック」とここで呼んだのは、戦闘中に使うスキルのひとつとして「おみくじ」を持ってきたクレリックのことです。しかし戦闘中に使うスキルとしてスキルセットの中に組み込める数には限りがあるので、「おみくじ」を入れるとそのぶん他のスキルが使えなくなります。そこで「おみくじ」を入れようかどうしようかと悩みが生じるわけです。

 「おみくじ」は基本的にはパーティープレイにおいてパーティーを火力面で支援するという位置づけのスキルですから(もちろんソロで使ってもいいですが、ソロで使うには効果が薄い気がします)、「おみくじ」を入れようかどうしようかと悩むのは基本的にパーティープレイのときでしょう。
 では、おみくじクレリックはパーティーの総合火力にどれだけ貢献できるでしょうか? そのひとつの指標となる計算を行ってみました。

 このゲームにおけるパーティープレイでは、パーティー人数は基本的に4人です(一部、10人というコンテンツもあります)。そのうち3人の枠に純火力職が集まってきたとします。そして4人目にクレリックが来たとします。ここで純火力職の火力を100とした場合、4人目にクレリックが来たことによってパーティーの総合火力が400を超えるならば、クレリックは火力面でもパーティーに貢献できたことになります(そうでなくても、回復その他の支援スキルにより防御面やプレイの快適さの面で貢献できるのですが)。400を超えないならば、少なくとも火力面だけを見る限り、その4人目の枠にはクレリックを入れるよりも他の純火力職を入れたほうがよかった、と言われてしまうことになります。

 では「おみくじ」はその基準を達成させうるでしょうか?

 まずは第一の例として、「おみくじ」の効果を向上させる各種装備オプションを何も持っていない場合を考えてみましょう。このとき、上述の公式にしたがって「統計的には常時何%アップの効果をメンバーにかけ続けることに相当するか」の値$${A}$$を求めてみると、

$$
A=\frac{26.25-6.25\times0}{(2-0)(1-0)}=13.125
$$

となります。このとき、総合火力が400を超えるために「おみくじ」クレリックが自分自身でも出さなければならない火力はどれくらいになるでしょうか。その値を$${x}$$とすると、方程式は、

$$
(300+x)\times1.13125\geq400
$$

となります。これを解くと、

$$
x\geq53.59
$$

となります。つまり「おみくじ」クレリックは、純火力職の53.59%以上の火力が出せていれば、火力面でもパーティーに貢献できるということになります。約半分の火力が出せればOKなのです。必ずしも無理な数字ではないですね。

 ところで、パーティーにとんでもない高火力の人がいたらどうなるでしょうか。一例として、パーティーに純火力職が3人いてその中の1人が一般の人の5倍の火力をもった人だったとしてみましょう。このとき「4人目も(一般人の)純火力職を入れたほうがよかった」と言われないために「おみくじ」クレリックが出さなければならない火力はどれくらいでしょうか。それを$${x}$$とおくと、方程式は

$$
(500+100\times2+x)\times1.13125\geq(500+100\times3),
$$

となり、これを解いて

$$
x\geq7
$$

となります。つまり一般の純火力職の7%の火力が出せればOKです。だいぶ楽ですね。

 さて、上の計算結果は「おみくじ」の効果を向上させる装備オプションが何もない場合でした。しかし普通にプレイしていれば、$${p=0.25}$$および$${q=0.1}$$というあたりの数字を達成することは難しくありません。その場合はどうなるでしょうか。上と同じようにして計算してみると、まず純火力職3人がいずれも普通の人たちだった場合、

$$
x\geq45.80
$$

となります。ハードルが下がりますね。さらに、3人の中の1人が普通の人の5倍の火力を出す人だった場合、

$$
x\geq-8.41
$$

となります。なんとマイナスです。一切攻撃に参加しなくても構いません。何ならちょっとぐらいモンスターの方を回復しちゃっても構いません(笑)。その回復量が一般火力の人の与ダメの8%を上回らなければ大丈夫です。

 最後に、$${p=0.4}$$、$${q=0.2}$$の場合を見てみましょう。ゲーム内で実際そういう人がいました。このとき、上の各数字はどうなるでしょうか。まず純火力職3人がいずれも普通の人たちだった場合、

$$
x\geq37.40
$$

となります。そして3人の中の1人が普通の人の5倍の火力を出す人だった場合、

$$
x\geq-25.21
$$

となります。

3.「貢献度」に換算するとどうなるか

 「貢献度」に換算するとどうなるでしょうか。このゲームではパーティーでのダンジョンクリア時にメンバー各員の「貢献度」というものが%の数字で表示されます。この「貢献度」の正確な計算式は不明なのですが、おおよそ「ダンジョン攻略中に敵に与えた総ダメージ量のうちそのプレイヤーが与えたのは何%か」であろうと思われています。私も、正確な情報がないので何とも言えませんが、多分そうなんじゃないか、少なくとも火力と強く相関している量なんじゃないか、と思っています。仮にそうだとして計算してみます。そのとき例えば上述の、純火力職の45.80%の火力を出していたクレリックの貢献度%は、

$$
\frac{45.80}{300+45.80}\times100=13.24%
$$

となります。もちろん、パーティーの中にとんでもない高火力を出している人がいてその人が圧倒的に高い貢献度の数値をたたき出していたならば、この数字はもっと低くなってもいいでしょう。この「13.24%」という数字は、「パーティー4人の育成進度が同等である場合」の目安と言えます。

 ところで、「おみくじ」の効果そのものを「貢献度」に換算することはできるでしょうか。再び上の例(「おみくじ」の効果を向上させる装備オプションの数値が$${p=0.25}$$、$${q=0.1}$$である例)をとるならば、自分以外の3人の貢献度のうち、それぞれの15.675%ずつは、自分の「おみくじ」によるものであると言ってよいでしょう。なので、100から自分の貢献度を引いたもの(つまり自分以外の3人の貢献度の合計)の15.675%を、自分の貢献度に加えてよいと思います。

 例えばパーティー4人の貢献度が「50%、35%、10%、5%」(最後の5%がおみくじクレリック)だったしましょう。この場合は、

$$
(100-5)\times0.15675+5=19.89
$$

となります。他の3人の貢献度は逆にそれぞれ15.675%ずつ差し引かれて、大体「42%、30%、8%、20%」というのが、ある意味での「実質貢献度」となるでしょう。最初の数字だけ見るとクレリックは他の人達に比べて全然貢献していないように見えるかもしれませんが、こうして見るとちゃんと貢献していますね。


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