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【美少女ゲームレビュー】素晴らしき日々~不連続存在~

お笑いをしたりキモオタをしたりしている古野崎標識です。こんばんは。

せっかく美少女ゲームをプレイしているにも関わらずレビューを投稿しないのはあまりに勿体ないということで、今回から書くことにしました。"ガチ"で沢山の方に本作をプレイして頂きたいのでネタバレは可能な限り無しで、かなり手短にレビューを交えた紹介をしていきたいと思います。最後まで読んでいただければ幸いです。

今回紹介する作品は
「素晴らしき日々~不連続存在~」です。

2010年にケロQから発売された作品ですが、私がプレイしたのは素晴らしき日々10thAnniversary特装版に同封されているフルボイスHD版です。無印とこちらのバージョンの違いは後ほど。

~あらすじ~


“Down the Rabbit-Hole”  
”It’s my own Invention”
“Looking-glass Insects” 
“Jabberwocky”
“Which Dreamed It”
“JabberwockyII”

それぞれの物語は旋律。
それらの旋律はさらに大きな物語として共鳴してゆく……。

「空と世界」「終わりと始まり」「文学と化学」「救世主と英雄」「兄と妹」「向日葵と坂道」

言葉は旋律となる。素晴らしき日々とはそういった物語。


素晴らしき日々公式HPより引用


あらすじから名作の香りがプンプン漂ってきますね。私は一生モノの厨二病なので事前情報からワクワクが止まりませんでした。
多分初見だと上記のあらすじはよく分からないと思うのでかいつまんで説明すると、「ある一つの大きな事件を様々な人物の視点で追体験する物語」という感じでしょうか。
全6章構成で一部分岐もありますが基本は一本道のシナリオです。選択肢も比較的少なくて読ませるのが目的のゲームなので普通に攻略サイト見ながらやっちゃって全然問題ないです。

~本作に含まれる要素、注意点~

本作は良質なシナリオゲーである反面、電波、ホラー、いじめ、胸糞、陵辱、薬物、犯罪行為etc.が含まれており、かなり人を選ぶ作品です。Hシーンも純愛Hもありますが、半分以上は陵辱かアブノーマルなナニコレ?って感じの気持ち悪いものだったりします。
特にホラー表現は結構ブラクラに近いものがあり、心臓の弱い方にはオススメ出来ません。グロも軽めですがちょっとあります。苦手な方は注意しましょう。

~良かった点~

まずはシンプルにストーリーが面白い。序章はかなりほのぼのしていて、まんがタイムきららかな?というレベルだったにも関わらず1章では初っ端人が死にます。エ!?本当に同じ作品!?2章から3章は人によっては苦行レベルのホラー電波胸糞のハッピーセット。勘弁してくれ状態から4章突入してすぐ今までの伏線がドバドバ回収されます。
人生で味わった伏線回収の中で一番楽しい伏線回収でした。4章開始30分はずっと「エッ!?エー!!?」とちいかわみたいな声を思わず上げてしまいました。情けのない。
4章以降は全体的に暖かさを感じるシーンが増えてきますね。電波はかなり控えめ。所々かなり泣きました。「2章と3章では精神に負荷を与えてごめんね(´・ω・`)」と美味しいお菓子をくれるような感じでした。(本当にどうでも良いですが2章のifエンドでもアホほど泣きました)

2つ目は哲学要素です。この作品、とにかく小説からの引用が多い。エロゲは文学とはよく言ったものです。単純なオタクなので引用された元ネタの書籍結構買ってしまいました(照)
特にウィトゲンシュタインの「論理哲学論考」はかなりの頻度、というかこの作品自体がウィトゲンシュタインの思想がベースになっているなと感じました。
勿論引用だけでなくこの作品ならではの”幸福について”がふんだんに描かれています。
涙腺が緩いのでしょっちゅう創作物で泣いてしまうのですが、「物語とか関係なく自分の人生において慢性的に感じていた不安や不条理を改めて言語化されてしまい泣く」という経験は初めてでした。忘れられない思い出です。
不幸や理不尽を過剰なほど生々しく描いた作品から導き出される幸福とは何か……。是非体感して頂きたいです。

3つ目
キャラクターが良い。
ネタバレを避けたいのでこのキャラがこうだとか詳しくは書きませんがマジで良い。
作品性質上、屈折した性格の持ち主が多いのですがそこが良い。共感できるラインの人間の嫌な部分の描き方上手すぎます。それぞれの正義、葛藤、希望が好きにならざるを得ない。サブキャラクターもかなり良い味を出しています。単なるギャグ要員のようなオカマや胡散臭いジャーナリストまでが余すことなく魅力的です。

4つ目
音楽が良い。
音楽詳しくないので説明難しいですが、最高です。やはり美少女ゲームの醍醐味はBGMですね。特に不気味なシーンで流れるBGMの不穏さと電子ドラッグ感ったらないです。気持ち悪いし怖いのに思わず聞いてしまう中毒性があります。綺麗なBGMも作品に浸れて素晴らしいです。
今作は章ごとにエンディング曲があるので、美少女ゲームの中でも結構ボーカル曲多い部類に入ると思います。特にOPの「空気力学少女と少年の詩」はこのゲームとか関係なく誰が聞いても名曲です。(勿論ゲームプレイ後に聞くともっともっと最高)

5つ目
キャラクターデザイン。ザ・萌え絵って感じです。好みの問題もあるので一概に言えませんが、私は2010年前後の萌え絵が1番好きなのですば日々のキャラデザ超好きです。陰影がハッキリしてる塗りと躍動感のある立ち絵が大好きです。

~気になった点~

あんま無いですが、強いて言うなら、このゲームはTRUEエンドが3つあって、2つクリアすると最後の1つが解放されるんですか、その最後のエンドがちょっと人によっては胸糞が悪く感じるかもしれませんね。「え?」って感じで終わります。しかしプレイヤーに解釈が委ねられるので最後のエンドを鵜呑みにする必要は全くないし、やはりただのシナリオゲーとは一線を画すのでこういう描かなくても良い部分描くのがこの作品エンタメとして正しいな…とも思うので一概に悪いとは言えません。個人的にはちょこっと胸糞悪かったです。嫌いじゃないのですが……。面白いけどさぁ…、面白いけどさぁ……!!!!
あともう一つ、TRUEエンド(最後のでは無い方)をクリアすると解放される追加シナリオのHシーンの喘ぎ声がやや苦手でした。にゃんにゃん喘ぐんですよね。まぁこれに関しては好みなのでなんとも言えませんが、一応気になったのはこの二点だけですね……。
他の方のレビューだと良くなかった点に「プレイ時間が長い」というのが結構書かれているのですが、かなりのめり込んでプレイしたのでそこまで長さは気になりませんでした。時間ある時に2、3時間ずつチマチマやって2ヶ月で完走しました。強いて言えば2章だけめちゃくちゃ長いんですよね。逆に2章以降は結構短いです。
   

※追記
最後のエンドが胸糞と書いていましたが、時間をかけて咀嚼した結果あのエンドがあるからこそのこの作品なのだと理解できました。この作品が哲学と言われる所以はあの終わり方なのだなぁと。
哲学とは、人間の存在や宇宙、道徳、知識、真理などについて深く考察する学問です。考察する学問……その中でプレイヤーからするとちょっと嫌かもしれない、けれど証明は出来ないので様々な自称に基づいた考察を行い仮説を提示して終わる。そしてそれはあくまで仮説だけどあまり考えたくはない説。それらを逃げずにしっかり形として残すことこそが素晴らしき日々という作品の”筋”だと感じました。

~追加シナリオについて~

最初の方でちょっと書いた部分なんですが、今作は2010年に発売された無印版、2018年に発売されたフルボイスHD版、2020年発売された10thAnniversary特装版が存在します。

そしてTRUEエンドの後日談を描いたルートはフルボイスHD版にて追加されたシナリオです。なのでうっかり2010年版をプレイすると見れません。FANZAでは両方購入することができますが、正直2010年版を購入するメリットは薄いです……。フルボイスHD版買いましょう。そして追加シナリオは最後まで行かなくても解放されますが、最後追加シナリオやった方が絶対に後味が良いのでオススメです。(フルボイスHD版と10thAnniversary特装版に同封されているもののの違いはUIくらいなので大差ないです、追加ルートもあるしHDだしフルボイスです)

~最後に~ 

今までプレイしたゲームの中でも三本の指に入るレベルで面白く、心に残る作品でした。
多少ホラーとか電波とか胸糞苦手でも是非最後までプレイして欲しいです。最後の最後は作中最も好きなの名言を貼って締めます。




人は死を知らず、にも関わらず人は死を知り、そしてそれが故に
幸福の中で溺れることを覚えた
絶望とは、幸福の中で溺れる事が出来る人にだけ与えられた特権だな
だからこそ人は言葉を手に入れた
空を美しいと感じた。よき世界になれと祈れるようになった
言葉と美しさと祈り
三つの力とともに、素晴らしい日々を手に入れた。

人よ、幸福たれ!







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