一束

ほんの少し高い位置にある横顔が
月明かりに照らされて
まつ毛が作り出した小さな影は
寂しげで美しかった

2人分の足音と夜のざわめきが
とてもうるさく感じて
やっと捻り出した言葉は
下手くそな天気の話題

「ずっと一緒にいたい」なんて
自覚することを恐れた本音は
空気に触れず喉に溶けた

右手から伝わる生ぬるい熱が
今だけのものだとわかっているのに
擽ったくて
うれしくて
しかたない


またねって離された掌が
あまりに冷たくて
手を伸ばすのに
とどかないまま空を掴む

肩からぶら下がるだけの腕が
あまりに情けなくて
自分に同情した
右手に残る指輪の感触を
残して



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