津和野町の教育②~自由を操る芸術士~
Moi!
フィンランド🇫🇮に来て12日がたちました!
最初の興奮した気持ちも良い意味でだいぶ醒め、これから10か月の中長期戦をどう過ごしていくか、図書館に籠もって真っ白いノートを前に1人ぼーっと考えております。
突然ですが、私はダイソーの黄緑色の表紙の、罫線の入っていないまっさらなノートがお気に入りです。
フィンランドに来るときも使いかけの1冊と、新品5冊をスーツケースに詰めてきたのですが、今数えてみたらフィンランドに来てからすでに40ページ書いていました(笑)
それくらい新たな気付きや、考えさせられることが多い毎日です。
ノートと言えば、
私はまっさらなノートを前にすると、自然と手が動き、気づいたらそのページが自分の表現で埋まっている、ということがよくあります。
罫線が入っていたり、何か模様が書いてあったりするとダメ。
何もない真っ白なノートだからこそ、何の制限も遠慮もなくありのまんまの今の自分をぶつけることができる。
真っ白なノートは、私にとって自分を自由に表現する1つの手段なのだと思います。
皆さん一人一人にも、このように何か自分を自由に表現できるもの、あるのではないでしょうか!?
…さてさて!またもや前置きが長くなりました💦
今回は子どもたちの「自由な表現」を導く
島根県津和野町のユニークな教育者
「芸術士」
について、芸術士3年目の方から聞いたお話を元に紹介していきます♪
私もお話を聞いていてワクワクが止まらなかった芸術士さんのおしごと。
実は、日本では2019年8月現在香川県高松市と島根県津和野町にしか存在していないのですよ!
(訂正:活動は少しずつ広がりを見せ、今では坂出市、観音寺市、さぬき市、三豊市財田町、四国中央市、徳島市、岡山市にも芸術士がいるそうです!)
まさに教育界では激レア中のレア職業。
(津和野町ってどこ?っていう人は前の記事をどうぞ!)
それでは見ていきましょう~✨
【1. アートで育む!自己表現力 ~自由を操る芸術士~】
皆さん、芸術士と聞いて、どんな人を思い浮かべますか?
美術や工芸の専門家かな?
学校の先生には教えられない高度な技術を教える人かな?
、、、、惜しい!
だいぶ違います(笑)
確かに、芸術士は小学校の図工の授業や、中高の美術の授業を担当することもあります。
でも、彼らは「教える」人たちではないのです。
芸術士とは、ズバリ
子どもたちが、自らの心を外に出す楽しさを学ぶお手伝いをする人
ということができます。
は?なんじゃそれ??
という人のためにもう少し説明しますね。
皆さん、小学校の頃の図工の授業を思い出してみてください。
先生が前に立って、
「今日は○○を使って△△を作ります」
と言って一通り方法を説明した後、
子どもたちは先生の説明に従って作品づくりをしていたのではないでしょうか。
ここで行われていることは、先生が図画工作における基本的な知識や技術を教え、子どもたちが実際にやってみる、という過程です。
一方、芸術士が行う授業(ワークショップ)では、技術的な指導や知識の提供はほとんどありません。
なぜなら、芸術士の目的は、あくまでも「子どもの自由な表現を引き出すことで、子どもたちが主体的に人生を歩んでいく手助けをすること」であるからです。
人間は誰しも成長過程の中で、自己中心的な世界観から離れ、他者とともに生きることを学んでいきます。
そして人生の最も早い段階で、他者との共生を学ぶ大きな役割を担っているのが、保育園や学校教育の場ということができます。
そういう意味で、学校教育は、社会にとっても個人にとっても重要なものであると言えるでしょう。
けれどその一方で、子どもたちの中には、過度に他者を意識するあまり自分を奥へ奥へ押し込めてしまう人も出てきます。
生まれたときには誰しも持っていたはずの「自己を自由に表現する力」を、だんだんと失っていってしまうのです。
自分を押し殺すことで他者とうまくやっていくことを学んでしまった人たちは、ずーっとそのやり方で生きていきます。
人生の色んな段階で気付いて自らの力で変えられる人も中にはいるかもしれませんが、ほとんどの人が自分で自分を犠牲にしているのにも気付かず、自分の身に起こるあらゆる出来事を自分以外の何かのせいにして生きていきます。
なぜなら、彼らは常に他者の軸で物事を考え、自分が周りにポジティブな影響を与えられることを知らないからです。
芸術士の仕事は、成長段階で失われがちな「自分の心を自由に表現する」ということを、「芸術」という手段を用いて育むことです。それによって、子どもの豊かな感性と集中力、表現力を養い、彼らが主体的に未来を切り開いていけるような力をつけることを目的としています。
【2. 具体的な芸術士のお仕事が知りたい!
どこでどんなワークショップをしているの?】
それでは、芸術士は具体的にどんなことをしているのでしょうか?
私がお話を伺った島根県津和野町の芸術士の方は、現在
・保育園
・小学校(図工)
・中学校(美術)
・高校(美術)
でワークショップを開いている、とのことでした。
ただ、小中高の授業においては、あくまでも学校の先生がT1(全体指導をする人)であり、芸術士はT2,T3として授業をサポートする、という立場を取っているとのことです。
そのため、芸術士は単独で授業を持つことはできず、毎回企画書を書いて学校の先生と話し合い、合意の上で授業を行っているようです。
また、図工や美術の授業の中でも特に「造形」という最も自由にできるパートを担当させてもらっているよう。
それに加えて、図工や美術の指導に悩んでいる先生方の相談に乗ったり、自分が担当しない他の授業についても提案したりしているそうです。
【3.自由って、時には難しくない?】
自由すぎると、逆に何も表現できない子も出てくるのではないか?
そのとおり。
だからこそ、芸術士のワークショップでは、たくさんの選択肢を用意するそうです。
絵の具、粘土、紙、セロファン、毛糸、etc...
1つの選択肢しか与えられないと何も表現できない子も、いくつも選択肢が用意されていると自然と何かを選び表現しているそう。
その時の心の気分に合った手段を選べるように、道具の準備から工夫しているわけですね。
しかし、ここで問題点。
毎回毎回、こんなにたくさんの選択肢を用意するとなると、いちいち車に積んで運ぶのが大変、、。
そこで!町の予算で芸術士専用の車「夢色アートワゴン」を用意してもらったんですって!
このかわいい装飾は全て子どもたちが。
夢色アートワゴンには、いつでもどこでも表現の場を用意できるように、ワークショップに必要な全てのものが入っています。
まさに夢みたいですね♪
【4. 芸術士のしくみついて】
最後に、芸術士の簡単な歴史・しくみについてお話させていただきます。
芸術士は、2009年にNPO法人アーキペラゴが高松市から委託を受ける形で、派遣が始まりました。
近年注目を集めている、イタリアの「レッジョ・エミリア教育」を高松市でも実現したい!という想いを持ったアーキペラゴのメンバーが、高松市に芸術士派遣の企画書を提出したのが始まりであるようです。
そこから活動がどんどん広まり、今では24人の芸術士が、主に保育所・子ども園・幼稚園を中心に活動しています。
島根県津和野町に芸術士が来たのは、今から3年ほど前。
高松市の芸術士活動に共感した津和野町が、島根県の「地域おこし協力隊」という身分で芸術士を募集し始めたのが始まりでした。
津和野町では、現在3人の芸術士が活動しています。
ただ、県が管轄の地域おこし協力隊は、3年で任期終了となり、その先のキャリアは各々に任されています。
これでは、3年間経験を積んだ芸術士たちが外に出て行ってしまう。
私が今回お話を伺った芸術士さんはそこに危機感を持ち、継続的に芸術士を津和野町に置くしくみづくりを模索している、と話してくださいました。
[5. まとめ]
いかがだったでしょうか?
常識、ルール、秩序、手順…
私たちが共に生きていくためには、もちろんこれらも必要です。
けれど、いったんそれらを取り外してみて、自由に遊んでみる。表現してみる。
そんな体験は、子どもの想像力、可能性を広げ、未来を自由に描いていくための、大切な根っこになるのではないでしょうか?
ああ、芸術士と関われる子どもたちが心底うらやましい…!
私も、フィンランドという地で、日本の常識やルールから1歩じゃない、もう1000歩ほど離れて自由を堪能してきたいと思います!
芸術士についてもっと知りたい方は、アーキペラゴの芸術士についてのHPがわかりやすいので、ぜひチェックしてみてください✨
http://geijyutsushi.archipelago.or.jp/?page_id=701
また、津和野の芸術士さんへのインタビュー記事も読んでみるのもオススメです!
http://tsmoyo.jp/post-5610
さてさて!次回は、私が今絶賛インターンシップをしているNPO法人Teach for Japanについて書いていきます。
「教室から世界を変える」
をビジョンに掲げるTeach for Japan。
インターンシップも、とっっても学びに溢れるものでした!
次回もぜひぜひ、読みにきてください~😊
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!!
それではMoi moi!😄
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