恋のままで

思いが生じた時の「思う」だけの鮮度を保っておけない事がとても不満だった。
思うだけでいいのに、なぜ次から次へと欲は湧くのか。

好きになれば、声を聞かせてほしいと思い、話がしたいと思い、一緒にいたいと思い、関係を築きたいと思い、関係に名前をつけたいと思い、ルールを作りたいと思い、結末までも欲しがる。

なんでだろうか。
あの一瞬、ただの恋。というあの瞬間を鮮度を保ち保ち続ける事は出来ないんだな。と思った。

顔の形になぞった骨の形がとても愛おしいと思い、近くにいる時より向かい合って50センチの距離がある方が恥ずかしくなって、自分が晴れた日を大喜びするような女じゃない事を後ろめたいと思い、会話に相槌を打つ事だけでこの時間の思い出だけでずっと思っていられると思って。

あの時の鮮度が欲に塗れていくことになんの心地よさも感じなかった。

それはきっと互いの持つ気持ちの名前が一方だけが恋ではなかったんだと思うのだけど。

ただあの時のただの恋だったって時間はいつまでも幸せな恋だ。これは。と思えた事は確かでしょう。

恋が終われば思い出となりわたしの身体のどこかにしまいこまれてまたたまに違った気持ちで思い出す。

そんな思い出のうたです。

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