FATFとは?G20で注目のFATFと仮想通貨の関係について改めて解説します

はじめまして。Fintertechマネジメントグループの新藤です。

自己紹介

以前は大和証券で法務業務を担当していました。入社後しばらくはコーポレート法務(株主総会運営、当局対応、諸規程整備等)を担当し、その後米国へ留学しニューヨーク州弁護士資格を取得。帰国後は当社に入社するまで国内外のトランザクション法務(マーケット部門、主にデリバティブ回り)を担当していました。
ブロックチェーン、仮想通貨関連業務等との関わりは、前職時代にデリバティブ取引に関する契約交渉をブロックチェーン上に載せて効率化を図ろう!というプロジェクトに参加したことがきっかけでした。
2018年よりFintertechに所属。現在は主にリーガル、法規制調査等を担当しております。

G20にてFATF新基準が事実上承認される

現在リーガル回りを担当しているということで、FATFより6月21日に公表された新基準(ガイダンス・注釈)仮想通貨交換業者に新たなマネーロンダリング対策(ex.送付者及び受領者の名前・ウォレット等の情報収集)を求めるニュースについては注目してフォローしております。
この新基準については、丁度先週末6月28~29日に行われたG20において確認及び事実上承認されましたので、このFATF新基準及びその背景等について簡単に説明したいと思います。
なお、新たに求められるマネロン対策の実行可能性・技術的困難性については、すでに多くの方がコメントされていますので、今回の記事ではFATF基準及びFATFの活動、それらがどのように各国の法令及び仮想通貨交換業者等の活動に影響を及ぼすのかを中心に説明したいと思います。

FATFとは?

FATF (The Financial Action Task Force)とは、1989年に設立された国際政府間組織であり、現在30を超える加盟国から構成されています。主な活動としてマネーロンダリング・テロリスト資金供与対策(AMT/CFT)の国際協調促進、具体的には当該分野の法制度システム等に係る基準の提言及びそれらに基づく加盟国審査を行っています。
FATFは国際組織ですので、当然ながらそこで作成された基準が各国で行われているビジネスに直接法的効力を及ぼすものではありませんが、審査において不備を指摘することにより、実質的な法整備の促進機能を有しております。この基準の設定⇒審査・結果公表という規制整備プロセスは、FATFのみならず多くの国際規制機関(ex. Basel委員会、FSB)でも採用されている方式であり、“Name and Shame”と言葉で端的に表現されることもあります(不備の指摘・低評価を受けた国は、実際には“Shame”では済まずにクロスボーダー取引等において不利益を被ることもありますが)。
なお審査方法は大きく2つ、その国の法的整備状況等を審査する「テクニカルコンプライアンス審査」各業界の具体的な取り組み・成果を審査する「有効性審査」があります。
現在日本では既にFATF第四次審査が開始されておりますが、実際に金融業者(仮想通貨交換業者含む)に立ち入るオンサイトの「有効性審査」については、今年の10~11月に行われることが予定されています。

FATF基準の構成

FATFが作成している基準としては、大きくFATF RecommendationsとFATF Guidanceの2つがあります。
FATF Recommendations(日本語訳だと“勧告”)は、AML/CFTとして加盟各国が導入すべき法制度の指針、40項目の勧告が明記されており、FATF Guidanceは上記の FATF Recommendations上の適用・解釈を具体的に提示するものです。ざっくり言いますとFATF RecommendationsがFATFにおける法律、FATF Guidanceが政省令又はガイダンスのようなイメージでしょうか。
2015年6月公表のGuidanceにおいて、加盟各国に対し、仮想通貨交換業者への登録・ライセンス制導入を含む規制対応の要請が明記されましたが、その上位規程に当たるFATF Recommendationsにおいて仮想通貨関連業務が言及されたのは、2018年10月と比較的最近です。

今回公表された基準について

今回6月にFATFからAML/CFTとして公表されたのは”Guidance”及び”Interpretive Note to Recommendation15”(INR.15)ですが、特に後者のINR.15の内容が注目されています。
上記で述べた通り、FATFにおける法律的な位置づけのFATF Recommendationsは、40項目の勧告から構成されていますが、このうちの15番目の項目“New Technology”は新規テクノロジー・プロダクトに関する対応策を規定した勧告であり、仮想通貨ビジネスも当該勧告でカバーされています。
従来の勧告15においても、一般論として仮想通貨交換業者はAMT/CFT規制が課される旨は明記されていたのですが、今回の”Interpretive Note“(解釈上の注釈)により具体的な仮想通貨の送付者及び受領者の本人確認義務が明示されました。

今後の流れ

上記で述べた通り、FATF基準(Recommendation及びGuidance等)については、それ自体で各国に直接法的効力を及ぼすものではありません。しかし先週末に開かれたG20で採択された首脳宣言において、今回のFATF改正基準が是認された(注1)以上、日本を含む各国において当該改正基準を踏まえた法規制整備が進むものと思われます。

なお技術面等から本当にFATFが求めるような対応策が可能なのか、関係者間でまさに議論が行われている最中ですが、当社自身も仮想通貨関連業務に関するマネロン対策・その技術の進捗について調査・研究しているところであります。その辺につきましては、別途エンジニアからの記事を私自身も楽しみにしたいと思います。

注1 首脳宣言原文:“We reaffirm our commitment to applying the recently amended FATF Standards to virtual assets and related providers for anti-money laundering and countering the financing of terrorism. We welcome the adoption of the Financial Action Task Force (FATF) Interpretive Note and Guidance.”

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