Miss女子会第六会公演『幸せであれ!』

Miss女子会第六会公演「幸せであれ!」を観劇してきました。
Miss女子会(ミスジョ)の再始動は、ゲストの役者さんを迎えての公演となりました。

ここはとある姉妹のおばあちゃん家。 そこに集まってきた8人の女たち。 恋愛、仕事、仲間、家族、お金・・・ そんなものに振り回されている女たちが集まりました。 なぜ彼女たちはここに集まったのか。 それはみんな自分なりに幸せになりたいからかもしれません。 彼女たちがどうやって幸せになっていくのか、そもそも幸せとは?

Miss女子会公式サイトより

白岩一葉(27) … 木村佳奈枝(Miss女子会)
白岩優実(18) … 石原桜彩
立花綾(27) … 北條愛実(Miss女子会)★
/西村麻里菜♪
河合真琴(27) … 神谷実玖(Miss女子会)
浪江静子(29) … 磯ヶ谷典華(Miss女子会)
草壁千紘(29) … 安齋真綿
佐伯晴香(24) … 青山絢香
後藤萩花(25) … 小山葵

脚本・演出 … 木村佳奈枝

コフレリオ新宿シアター 2022年7月14日~7月18日
★,♪はダブルキャスト


開演前に「携帯を切る、飲食禁止」といった観劇中の注意事項などが流れますよね。

そろそろそんな時間かなと思って座って待っていると、突然磯ヶ谷典華さんと安齋真綿さんが出てきて、

「どーもー!いいねいいよでーす」

漫才…コンビ?

注意事項にオモシロネタを交えつつ、ひととおり説明すると去っていきました。実は前説は前振りでもあったのです。


ストーリーダイジェスト


青天の霹靂

雑踏の中、携帯電話を取る佐伯晴香。

晴香「倒産?!いや…その…私は…クビ?…はい…」

電話を切ると茫然として…

晴香「どおすんのよぉ!!」

どうやら勤めていた会社が倒産して仕事を失ったようです。


駅前で拾った

どこかの一軒家の瀟洒なリビング。

白岩一葉がノートPCで仕事していると、河合真琴が入ってきます。

真琴「毎日毎日仕事たいへんだねぇ」
一葉「暇でいいですね」
真琴「暇最高!」

真琴の趣味は占い。
タロットカードを机の上に積むと、のんびりしたBGMを掛かけます。この曲で占うのが真琴の定番の様です。

一葉「毎回毎回その曲かけるのいる?」
真琴「いるー」

そこへ立花綾 が入ってきて新しくできた男について力説し、真琴に占えと迫ります。

一葉は、この家のいまのあるじ
一緒に住んでいる真琴と彩。今度の男は違うと意気込む綾を中心に延々と不毛な会話が続きます。

そこへ浪江静子と草壁千紘がリビングに出てきて

静子「じゃあ行ってきます、きまーす。」
千紘「静子待って、ちゃんと小道具持った?集合場所分かるよね?ついて行こうか?」

静子と千紘の二人は、この舞台の前説を担当したお笑いコンビ「いいねいいよ」。今日は静子がソロで仕事の様ですが、お出かけ姿がどう見ても幼稚園児です。それを送り出す千紘はまるでお母さん。

ちなみに今、「いいねいいよ」でウケてるネタは、コント中のこのセリフ

千紘「ちゃんとトーク内容まとめたの見ておくんだよ。ちゃんと『おいとまするでやんす』たくさん入れてきてね」
千紘「10回言って」
千紘・静子「1回使われる!」

ひとりで静子が出かけると、千紘が加わって会話が続きます。

綾「ここ、ひとりで住むのはもったいなすぎるでしょ!」

この家、元々は一葉がひとりで住むつもりだったので、綾や真琴ら同居人が居るのは光熱費を分担できてありがたいそうです。

もっとも、今月は千紘をはじめ、綾も真琴も光熱費を払っていない様ですが(それだと返って負担が大きくなる気が…)。

一葉は、最初は妹の優実と暮らそうと考えていた様です。

と、突然、なにかいると言い出す真琴。

真琴「さっむ。なんかいる」
一葉「やっぱりほんとにいるの?」
真琴「一葉、感じないの?」
一葉「感じないね。私は」
綾「どういうこと?」
一葉「優実は感じるみたいなんだけどね…だから、この家に」

なにか霊的なものが居ると断言する真琴と、それを聞いて激しく動揺する綾。真琴は自信満々に「霊的なもの」を語るので、綾は信じてる様です。

ところで、この幽霊話はこの後何度も話題に上ります。ところが一葉はその度につれない反応というか、まったく話に乗ってきません。綾の様な「幽霊こわい」や、それとは逆の「心霊現象なんてありえない」といった次元ではなくて、なにかこの話題は避けたい。という感じがありありと伝わってきます。


千紘が自分の部屋に戻る時冷蔵庫を開けると

千紘「わ。マカロンある」
綾「それ、私のなんで!絶対食べないでくださいね!それにマカロンじゃなくてトゥンカロンです!トゥンカロン!」

綾「名前書いとこ

この、名前を書いたトゥンカロンが後で綾に「災い」します。

綾にキツく警告されて、お茶だけ持って戻っていった千紘。入れ替わりに

優実「おじゃましまーす」

母親から渡された角煮をおみやげに、制服姿の優実が入ってきました。

一葉「お、ありがとう。角煮最高」
綾「今夜夕飯角煮?!」
一葉「うん、大量にあるよ」
綾「やったー!」
?「やったー!」

?。

からしが切れていたので、真琴が買いに出ようとすると

晴香「そうだと思って買ってきたよ!」

能天気な高身長女子が真琴の行く手を遮り、無邪気に「からし」を突き出してます。

?の声の主は、優実が駅前で「拾ってきた」晴香。冒頭で失業したあの佐伯晴香でした。

優実「駅前の不動産屋で『タダで住める家ないですかー!』って叫んでた」
優実「一部屋空いてるよね」

どうやら優実は、可哀想だと思ったのかそれとも面白半分か、部屋が空いているのでかまわないかと、捨て猫を拾う感覚で連れてきた様です。

勤めていた会社が潰れ、その寮からも追い出され、お金も無いので次の仕事が見つかるまでここに置いてと懇願しますが、やっぱり知らない人を住まわせる訳にいかないと、断られてしまいます。

すごすご退散というときに

静子「忘れ物した~」

静子と鉢合わせに。「いいねいいよ」の静子だと気付いた晴香は驚きます。

静子の声に千紘も出てきたのですが、千紘はなぜか晴香に向かって手を挙げてぎこちなく挨拶します。

千紘「(晴香に向かって)やあ」
一同「知り合い?」
千紘「ひ、久しぶり…」
晴香「え?」

ちぐはぐながら親しげな二人に、知り合いなのかとみんな訝かる中、千紘は晴香を端に引っ張っていって、ヒソヒソと思いがけない事を告げます。

千紘「(ここは)高校の同級生ってことで!」

千紘は先程の皆と晴香の会話を裏で聞いていたのでした。そこで、何か思うところがあって、別に知り合いでも無い晴香がここに住めるよう口裏を合わせて助け舟を出したのです。

千紘の知り合いならばと、皆は晴香を置いておくことにします。

真琴「気持ち的には嫌ですけど」

しぶしぶでしたが。


静子は忘れ物を持って再び出かけたところで、「入居」が決まった晴香に説明するかたちで、この家の状況が説明されました。

一葉「この家、私のおばあちゃん家なんですけど、最近彼氏ができて、この家が空いたから私が住んでます」
優実「おじいちゃん死んでから第二の人生だ、って言って!」

おじいちゃんが亡くなって、おばあちゃんが彼氏作って家を出て行ったこと。

真琴と綾は、一葉の同級生ということ。

静子は親戚で相方の千紘と上京してきたタイミングで住み始めたこと。

妹の優実はこの家から徒歩10分の実家に住んでいること。

優実がなぜここに住まないのか、それは「気配を感じる」からだそうで…

晴香に部屋を案内するため一葉と千紘の三人でリビングを出ていきましたが、残った優実、真琴、綾は「幽霊の話」を続けます。

真琴「この家の幽霊は昔からいるの?」
優実「んー。どうなんだろ?」
綾「え?」
優実「小さい頃はそういうの見えなかったから」

優実は、姉の一葉が部屋に居ないところで、所謂「霊感体質」になった原因を語り始めました。

それは、小学生の頃に交通事故に遭って、死にかけてから。

真琴によると「一度生死を彷徨うと幽霊がみえるようになることがある」らしいです。


いいねいいよの喧嘩

そんなこんなで晴香が引っ越してきて数日が立ったある日、「いいねいいよ」のふたりが不穏な空気のまま帰ってきました。

静子「ねえ、まってよ」
千紘「ムカつく!」
静子「あ、ただいまー」

どうやら仕事で何か失敗して、それが原因で空気が悪くなったようです。

静子「千紘ごめんなさい」
千紘「わかったから」
静子「うん…ごめんね」
千紘「…うん」

一度はなんとなく仲直りしたかの様に見えたのですが…

静子「(自分は)センスも才能も全くないし!本当に千紘のおかげだよ!ほんと感謝 感謝!」

持ち直した空気をもっと良くしようとしたのか、静子なりに言葉を尽くして千紘を持ち上げようとしたのですが、それが気に障った様です。

千紘「私がやんなきゃ誰がやるの?静子がコント作るの?やらないでしょ!」
静子「私なんかがコントを作っても面白くないよ」
千紘「そんなの逃げじゃん
静子「…ごめん」

千紘「売れるためにさ、今このチャンスを掴むためにさ、忙しいのも、大変なのもそんなの全然いいんだよ!」
静子「そっか、ありがとう」

千紘「それ!それが嫌なの!ありがとうとか、ごめんとか、そういうならさ、その言葉に責任持ってよ!そういうのってさ…」

千紘は自分には才能なんてないが、自分がやるしかないからやっている。大変なのも全然構わない。

でも、静子が感謝してると言うのなら、その場の言葉だけじゃなく行動でも示して欲しい。溜まっていたものを爆発させてしまった千紘でした。

ここで何も知らない晴香が入ってきて、大声で放ったひとりごとが、図らずも千紘の言葉の続きを引き取ってしまいました。

晴香「最低だ!人として終わってる!」

晴香は面接官の名前を間違えた自分を責めただけだったのですが…

この余計な一言で二人は決定的に決裂して、千紘は外に出て行ってしまい、静子も自室に行ってしまいました。


「空気が読めてない」と言われた晴香がとった行動が、その場をもっとおかしな空気にしてしまいます。

そして、気まずくなった晴香の提案で、仕事中の一葉と自室の静子を残して、夕方のまだ明るい時間ながらビールを飲みに出かけていきました。
どの流れでそうなるんだ?!とボヤかれながら。


幽霊

一葉が仕事を続けていると、急に天気が悪くなり、雷鳴などが聞こえます。

優実「んあぁぁ!もうっ最悪!お姉ちゃん!」

優実が急に降り出した雨を避けるため、家に飛び込んできました。
すると直ぐに大きな雷が鳴って停電。

一葉「優実、大丈夫?ちょっとブレーカー見てくるね」
優実「お姉ちゃん、ちょっと待って!」

夕方なので薄暗い部屋に、優実一人で残されてしまいます。

優実「え?…誰…ですか?」

「幽霊」を見てしまった優実。

電気が点くと、一葉が戻ってきました。茫然としている優実を見て

一葉「どうした?」
優実「やっぱりいた」
一葉「え?」
優実「幽霊…いた…男の子の幽霊…」

しかし、ここでも一葉は「いないよ」とそっけなく否定します。なおも食い下がる優実に最後は「うるさい!」と怒りを露わに。

二人の会話は、帰ってきた綾たちに遮られます。

どうやら出かけたものの、夕立の雨に降られて帰ってきた様です。
綾、真琴、晴香それに先に出て行ってしまった千紘を見つけて一緒に帰ってきました。

一同は冷蔵庫の中にビールがたくさんあるのを見つけ、家で飲むことに。

この状況では一葉も仕事を諦め、合流することにしました。

嬉しくなった晴香が、唐突に真琴に就活を占って欲しいと言い出すと、真琴も渋々占いを始めます。

真琴「生年月日は?」
晴香「1997年の8月11日ですっ!」

生年月日を訊かれた晴香が正直に答え、あっさり千紘がついた嘘がバレてしまいました。

千紘と同級生なら、真琴たちより歳上のはず。しかし晴香の言った生まれ年なら歳下になる…

なぜ千紘が嘘をついてまで晴香を招き入れたのか。
ひとつは一人増えれば光熱費が安くなるのではと考えたこと、そしてより本当の理由は、千紘も就職した会社をリストラされた、晴香と同じ境遇にいたことがあったのです。

千春「急に仕事がなくなって、どうしたらいいかわからなくて。その時にコントしたい!って静子が誘ってくれたんです」

千紘「会社クビになって、コントしたい!って言われても、普通、えっ?手なるじゃないですか。でもその時はなんでもよくて、自分の居場所とか自分を必要としてくれる人がいることが心の底から嬉しかったんですよ」

だから、晴香にも居場所をつくってあげたかったと。

しかし、結局誰の知り合いでもなかった、赤の他人の晴香を家において置けるのか?

それは一葉のひとことで解決。

一葉「でも、もう知り合いじゃないですか。もうすでに一緒にご飯食べたり、ここで雑談したりする仲じゃないですか」

晴れて住人となった晴香の乾杯の音頭で飲み会が始まりました。

ずっと茫然としていた優実もジュースを持って輪に加わりますが、どこか心ここにあらずな感じです。


萩花襲来

数日後。
一人部屋の灯りを点けたり消したりする優実。そこへ真琴が入ってきて「電気代が高くなるからやめてよね」と言われてしまいます。でも、なんでそんなことしてたんでしょう。

続けて綾が入ってきて、新しい男=翔太くんの自慢を始めます。彼から「彼が付けていた」ブレスレットを貰ってゴキゲンの様ですが「付き合ってる」と言えるまでに進展はしていない様で…

真琴「プレゼント代ケチられてるだけだよ」

そこへ一葉が帰ってきました。

一葉「ただいま。綾、なんか知り合いが来てるよ」
綾「知り合い?誰?」

突然、女が飛び込んできました!

萩花「綾さんていらっしゃいますか!!!」

なにか、物凄い勢いです。

一葉「あれ?知り合いじゃなんですか?」
萩花「後藤萩花といいます!私の彼氏の浮気相手を探しに来ました!
綾「浮気相手?」
萩花「はい。見つけ出して、どうしても言いたいことがあるんです」

と言いながら「綾さん」を探し始めます。

どうも萩花は自称「翔太の彼女」みたいです。

でも、どうしてこの家を割り出したのか?

萩花「このアカウントの写真。どうみてもこの家ですよね」

どうやら翔太のSNS周りから、あやしい交友関係をなりすましアカウントまで作って嗅ぎまわり、最終的には翔太のアカウントをハックして侵入(といっても翔太が使いそうなパスワードを知っていただけですが)し、最もあやし綾のアカウントを見つけた様です。

そして、そのアカウントでアップされた画像に「翔太の手」を発見。

優実「探偵だー!」
真琴「@aya_tunkaron」
一葉「トゥンカロン…」

アカウント(のプロフィールや画像)にはアカウント主の顔は載ってなかったものの、掲載されている写真に映り込んだ特徴的な家の外壁から、一葉の家を割り出したとのこと。
家に入ってみるとインテリアが写真に映り込んでいるものと同じなので確信を高めたようです。

一葉「でも、この人はその彼氏さんとカフェでお茶してただけかもしれないですよ」

援護し続ける一葉でしたが、決定的なひとことが。

萩花「キスマーク!翔太の首にキスマークがついてたんですよ!こんなの浮気決まってるじゃないですかーーー!!」

萩花の疑いを「解決」したのはまたしても晴香。
これまでの流れにまったく関係なく入ってきて、冷蔵庫を開け、綾の名前が書かれたトゥンカロンを見つけて

晴香「綾さーん。このトゥンカロン、賞味期限切れちゃうんで食べてもいいですかー」
(綾は返事できない。返事が無いものだから)
晴香「え、いいんですか。食べちゃいますねー」
綾「だめ!!それは今日まで楽しみにとっておいたヤツ!!」
萩花「やっぱりあんたかーーー!!」

思わず反応した上に、貰ったブレスレットを付けた腕を見せてしまいます。

萩花「ほら!そのブレスレット!私が翔太にプレゼントしたやつ!

逃げられなくなった綾はアカウントは自分のものだしブレスレットも貰ったと認めるのの、「キスマークなんてつけてない!」「彼女がいるなんて知らなかった!」と疑いを必死に否定。

信じられない萩花は綾をボールペンでぶっ刺そうとして周りに止められます。

しかし、もともとおかしな話です。綾はもちろん萩花も最初は他に相手がいるなんて知らなかった訳ですし。

翔太をいまここに呼んで話し合えばいいという一葉の提案に、ふたり同時に見事なシンクロで答えます。

萩花「今日は会社の大事な出張中です!」
綾「今日は親友と海外旅行してる!」

…決定的な様ですね。

一葉「多分ですけど…いますよ、他にも」
優実「どう考えても今、萩花さんでも綾ちゃんでもない別の女と浮気中でしょ」

翔太の嘘に激高した二人はすっかり意気投合して、翔太を懲らしめるべく作戦会議をしに綾の部屋へ戻っていきました。


クレヨンしんちゃん

嵐のような時間が過ぎて、優実も帰っていきました。

晴香「ああ!クレヨンしんちゃんの時間だ!」
真琴「え?もう7時半…てまだ4時半じゃない。そもそも今日は金曜日じゃないし」
晴香「ええっ?知らないんですか?クレヨンしんちゃんは土曜の16時半に移動したんですよ!あ、一葉さんも一緒に観ます?」
一葉「いえ、私、クレヨンしんちゃん嫌いなんで

晴香もクレヨンしんちゃんを観に部屋に戻りました。

不思議な場面です。最初は晴香が単にアニメ好きで、一葉は嫌いなだけの場面かと思いましたが…


静子作のコント

千紘が帰ってきます。
帰ってくるなり真琴から訊かれます。

真琴「静子さん、今日も遅いんですか?」
千紘「え、静子今日は家にいませんか?」
真琴「え?今日会ってないからてっきり外出してるのかと」

静子はずっと家にいて、あの騒ぎの中でも部屋から出てこなかった様です。
先日の一件から、千紘もあまり話せていない様子。

すると突然

静子「できたぁー!」

と言って部屋から飛び出してきました。

実は静子はあの一件から、ずっと自分でコントを新作コントを作っていたのです。

萩花が来る前から、夜誰もいないリビングでも「コント魂」と書かれたハチマキをしめてこっそり書き続けていました。何かの気配を感じたり、千紘が帰ってくると隠れたりしながら。

静子「今まで怖かっただけだった。自分が作ったコントが誰かに笑ってもらえるなんて想像できなかった。だから逃げてた。けど千紘の話を聞くまで逃げてることにすら気付かなかった

題名は、コント「お化けと話そう」

静子なりに気にかけ、一所懸命に作ったコント。
千紘に台本を見せると、笑みを浮かべながら読んでいます。

静子「面白い?」
千紘「全っ然面白くない!」
静子「だよね、ヘヘヘッ」
千紘「でも、すっごい静子らしい」
静子「え?」
千紘「ありがとう」

話をしながら部屋に戻ってゆくふたり。
仲直りができて、一葉も真琴も一安心です。

しかし

千紘「でもさ、雷が鳴ってから3分間だけ話せるおばけってなんなの?ウルトラマンなの?」

妙なコントです。

萩花「え?今のって『いいねいいよ』ですか?」

一方、対翔太作戦会議を終えた綾と萩花が部屋から出てきて玄関に向かいます。完全に意気投合した様で気合が入りまくりです。


数日後。

一葉「火曜か…」

リビングに来てカレンダーを見たあと、ソファに寝そべる一葉。
眠ってしまいます。

雷の音が聞こえるリビングに優実が一人でいる。
優実「え…誰ですか…あの!!」

目を覚ます一葉。

一葉「夢か…」


好きから逃げない

部屋が明るくなって、萩花、綾、真琴が入ってきました。
あの日翔太と旅行に行っていた女の子を特定して共同戦線を張ろうとするなど、対翔太包囲網は狭まっています。
綾は復讐に燃えている様ですが、萩花はすこし違うようで。

真琴「復讐してどうしたいの?」
綾「そんなの、女の怖さを思い知らせて…」
萩花「『俺にはお前しかいない』って言わせるに決まってるじゃないですか」
綾「は?」

言わせてどうするかというと、翔太と二人で幸せに過ごすそうです。
その理屈はまったく理解できない周囲をよそに

萩花「そんなの好きだからに決まってるじゃないですか。一緒にいて楽しいから一緒にいます」
真琴「だめだ、この子」
萩花「はい!ダメですね!でも、好きって気持ちから逃げて、安全な恋愛して何が楽しいんですか」

萩花なりに自分の気持ちに向き合っている様です。
浮気男と一緒にいても辛いだけなんじゃないかと言われて

萩花「辛いですね。けど、その辛さから逃げても、好きって気持ちはなくなりませんから!余計に辛くなるだけです!だから、好きな気持ちが無くなるまで向き合い続けるんです」

強い気持ちを前に、みんなは萩花を応援することにします。


コント「おばけと話そう」

そこへ千紘と静子がやってきて、新作コントを見て欲しいと言います。
一同快諾して、ネタ見せが始まりました。

千紘「いやぁ、なんか変なところに迷い込んでしまったなー」
(静子のスマホからSEで雷の音)
千紘「きゃあ!…え?今なんか見えたぞ」
静子「はーい、みなさーん、こんばんわ。今日はここ赤川霊園に迷い込んでいただき誠にありがとうございます!なんと、ここ赤川霊園では、その日初めての雷が鳴ってから、3分間だけおばけとお話ができるといる言い伝えがあるんです」
千紘「3分間だけ?ウルトラマンなの?」
静子「ちなみに、先ほど鳴ったものが”今日初めての雷”となっておりますので、ただいまより3分間、おばけとお話しすることができます!」
千紘「はい?」
静子「しかし、このアトラクション、誰でも参加できる訳ではないんです」
千紘「アトラクションなの?」
静子「そこのあなた。いま私と目が合いましたね」
千紘「はい」
静子「おめでとうございます!あなたは選ばれし参加者になります!」
千紘「いやいやいや、恐怖!で、そのお話しできるおばけはどこに?」
静子「申し遅れました。わたくし、ここ赤川霊園に住み着くおばけでございまーす」
千紘「あんたがおばけなんかい」
静子「ちなみに先程の雷が鳴ってから既に1分経過しておりますので、話せる時間は残り2分を切っております。お急ぎください」
千紘「説明が長いからだよ」
静子「でもまあ大体の方は3分経つ前になぜか逃げてしまいますね」
千紘「当たり前でしょ。怖いからだよ」
静子「え、やっぱり怖いですか」
千紘「だっておばけなんでしょ」
静子「はい…今までこういう感じ(よくある幽霊のポーズ)で登場してたんですけど、それがやっぱり怖いのかなって思って、テーマパーク風なの練習してみたんですよ。どう思います?」
千紘「いや、想像とギャップありすぎて、理解するのに3分じゃ足りないと思うよ」
静子「えぇー。じゃあどんなのがいいと思います?やっぱり貞子とかが人気なんですかね」
千紘「それは怖いでしょ。ってか、別に人間とお話しできなくてもよくないですか?」
静子「よくない!話したいです。私、生前めちゃくちゃおしゃべりだったんですよ。もうずっと話してる。でも死んでからというものの、雷が鳴る日に3分間だけ、しかも、そのタイミングで霊感のある人が目の前にいないと話せないんですよ。だから、もう奇跡なんですよ、今!そんなチャンスが…」
千紘「あ、3分経った」
静子「………(口パクで話続けている)」
千紘「なんか幸せそうなおばけだな」
千紘・静子「ありがとうございました!」

静子に「どうですか?」と尋ねられて、みんなはぼちぼちな反応。静子らしいという声はあるけど、萩花などは「いつものコントの方が面白くないで(遮られる)」。

しかし真琴は違いました。

真琴「感動じたぁ゛~(号泣)」

猛烈に感動した様子。号泣したまま感動が止まりません。
そのわりに突っ込みは冷静で、例えば誰かが「おもしろかった」と言えば

真琴「おもじろくはねぇ(号泣)」

みたいに、いちいち反応が面白いです。

一葉「静子さん、衣装とかどうするんですか?」
真琴「いじょうなんがぎたらよけいなけるだろうがぁぁ(号泣)」
※(衣装なんか着たら余計泣けるだろうが)

千紘「ちょっと褒めただけで、私にも才能あるかも!って大喜びしてました」
真琴「さいのうはねぇ(号泣)」

千紘「私も静子に負けない面白いコント考えます!じゃない方芸人の底時からです!」
真琴「世の中不公平だよなぁ…おもしれぇやつが売れなくて、おもしろくねぇやつが売れるんだもんなぁ…(号泣)」
真琴「ただ『ちひろー』っていってるだけのやつがさぁ…(号泣)」
静子「千紘ー!どっちのワンピース似合うかなー千紘ー!」
真琴「ほらぁ…(号泣)」

千紘「静子のお世話も引き続き頑張ります!」
真琴「がんばれよぉ…おまえのしごとだからなぁ(号泣)」

こんな具合。
しばらく真琴は感涙スイッチが壊れたままになります。


優実の恋愛?

優実がやってきます。
今日は珍しく真琴に用事があるとか。
今真琴は壊れてますが。

優実「あの、占って欲しくて」
真琴「お゛、いいよお゛。優実ちゃん珍しいね(泣)」
優実「あの、恋愛のことを」
綾「恋愛!?優実、恋してんの?好きな人いるの?」

真琴に恋愛の占いを頼みに来たそうです。俄然興味をもった綾や真琴に相手を訊かれますが、どうも怪しい感じです。
もう会えないかもしれないけど、遠距離ではなく近くにはいる、とか。

優実「気配はいつも感じるんだけど」
綾「気配…?」
真琴「ゆうみぢゃん…まざがあぁぁぁぁぁぁぁぁ!(号泣)」

一葉がリビングに入ってきます。

優実「この家にいる幽霊に一目惚れしちゃいましたぁー!!
綾・萩花「えーーーーーー!」
真琴「うぇぇぇーーーーん!(号泣)」

どういうこと?!

優実「この前、この部屋でひとりになった時にはっきり見えたの。その時一度だけ会話もできたの!」

以前から何かいると感じていたのですが、遂にその正体と遭遇して、しかも恋をしてしまったというから驚きです!

しかも

優実「かっこよかった…」

どうやらイケメンだった様です。

でも、それっきり見えていないとか。
だから、リビングの灯りを点けたり消したりして再び見えないか試していたんですね。

ところがそれを聞いた一葉は

一葉「あー。どうせあれじゃない?ほら、この火災報知器が男の子顔に見えたとか」
優実「違うもん!ちゃんとみえたもん!」
一葉「優実、もう幽霊とか怖くないの?」

やはり、一葉は幽霊の話題になると様子がおかしいです。


占いの方はどうなったかというと、真琴は幽霊が相手では占えないので、綾と萩花で相談に乗ってあげなと。

3人ソファで話をしようすると

真琴「こごじゃあぁ、本人にぎがれちゃうでしょうがぁぁ!かふぇーに行きなさいかふぇーにぃぃぃ(号泣)」

※(ここじゃ本人に聞かれちゃうでしょ。カフェに行きなさいカフェに)

と叱られて3人で外に出ていきました。

真琴「なにがおきてるの?(泣)」


一葉がここに住む理由

一葉と真琴ふたりがリビングに残りました。

一葉「優実、恋しちゃったんだね。幽霊に」
真琴「みたいだね。優実ちゃん、事故に遭ってからなんだよね。幽霊見えるようになったの(少しだけ泣きが収まってる)」
一葉「優実が言ってたの?」

一葉の知らないところで真琴に語っていたことに少し驚いたようです。

一葉「もう怖くないのかな。ずっと怖がってたから、優実」
真琴「そりゃ急に見えるようになったら怖いよね」
一葉「うん、毎晩泣いてた。引っ越す前の家に結構居たみたいで。夜寝ようと思ったら物音が聞こえたり、人影がみえたりして、いつも一緒に寝ようって寄ってきた」

一葉「今の家に引っ越してからは大丈夫みたいなんだけどね」

この話を受けて真琴が尋ねます。なぜ家族と住まないで、このじいちゃん家に住んでいるのか。おばあちゃんに彼氏ができて家が空いたのは知っているけど、実家があるんだからわざわざここに住まなくてもいいのではないかと。

一葉「それは…じいちゃんとの約束なんだよね」
真琴「約束?」
一葉「そう。じいちゃんに、死んじゃう前に言われたの。この家だけは守ってくれって」

一葉はじいちゃんとの約束を守って、この家に住んでいたのです。


真琴がここに住む理由

こんどは一葉が真琴に尋ねます。

真琴「なんでって、一葉がさそってきたんじゃん…(泣)家賃も払わなくていいし。ぶぃ(泣きながらVサインを出す)」
一葉「そうだけどさ!真琴がわざわざ部屋引き払ってまで来てくれると思ってなかったから」
真琴「それは…たのしいじゃん(泣)」
一葉「ん?」
真琴「みんなと一緒にいるの、楽しいじゃん(泣)」
一葉「へ?なんて?」
真琴「だから!一葉とか綾とか!みんなと一緒にいるの楽しいじゃんっていってんのぉ!(泣)」

いつも面倒くさそうにまわりのひとを占っているのに、本当はみんなとの暮らしを楽しんでいた様です。

真琴「それは!なんか楽しすぎるとさ、幸せすぎるとさ、長く続かないっていうじゃん(泣)」

一葉に、心配してんの?とからかわれて、占いで出たんだと言い訳しますが、真琴なりに今の生活を長く続けたいと思っていた様です。

真琴って意外と可愛いところがあるんだねと一葉に言われると

真琴「知ってる。わたし、すごくかわいい(泣)」
一葉「うるさい」
真琴「なんなの?せっかく心配してあげたのに(泣)」

と返しながら立ち上がってどこかに行こうとします。どこに行くの?と訊かれて立ち止まり、指で空中に「優」と書いて

真琴「(一葉って)優しい。トイレ」
真琴「わたしなんでないてるんだろぉ(泣)」

と、泣きながらトイレに消えていきました。


ばあちゃんからの電話

誰もいない電気が消えたリビング。
晴香が帰宅し、電気を点けると携帯に着信があります。
スマホを覗き込む晴香。

晴香「ご活躍をお祈りします…か」

面接、だめだったみたいです。

家の固定電話が鳴ります。一葉を大声で呼んだものの見当たらないので晴香が電話に出ました。
マジでラブラブなマブなどとおかしな応対していると一葉がリビングに入ってきます。

晴香「電話です」
一葉「電話?」
晴香「種美さんです」
一葉「ばあちゃんじゃん!」

一葉に受話器を渡して晴香は自分の部屋へ。

一葉「もしもし、うん、元気だよ。マブさん?ああ晴香か、友達だよ。
…うん…うん…うん…え!?…だってさ、私も友達も住んでるもん!だから無理!…うん、でもさ!思い出じゃん、じいちゃんとの!…そんなのわがまますぎない?…え?うん…分かった。私は絶対反対だからね!」

リビングに戻ってきた晴香と真琴が、電話の会話を気にしています。

真琴「大丈夫?」
一葉「うん」
真琴「なんかあったら言ってね」
一葉「ありがとう」

この電話でなんだか雲行きが怪しくなってきました。


晴香の居場所

一方、晴香の面接結果を気遣う真琴。

真琴「どう…ですか?」
晴香「なんか悔しいですね。どこも私を必要としてくれないって」
真琴「難しいですよね」
晴香「なんか居場所が無いみたいな気分になります」
真琴「新しい居場所が見つかるまではこの家が居場所だと思ってください」

真琴の言葉に安心したのか、晴香は珍しく真面目に、でもいつもの様に明るく自分の事を話し始めました。

晴香「わたしが勤めていた会社」
真琴「倒産したって言ってた会社ですよね」
晴香「はい、いわゆるブラック企業で、終電で帰って始発で出社するなんていうのが当たり前だったんですよ」
真琴「そうだったんですね」
晴香「そんな感じだから、私の同期も先輩も体調崩したり…体調っていうか気持ちもどんどん病んでいったりして、会社辞めてくんですよ。そしたら余計に残った人たちは忙しくなるじゃないですか。家族にも友達にも、そんな会社早く辞めた方がいいって言われました。辞めていく同期にも、晴香はいつ辞めるの?って。でも…」

一葉「晴香さんは、逃げなかったんですね」

一葉の問いに、それまでの明るい表情から真顔になり、トーンを落として少しだけ力を込めた声で答えます。

晴香「はい。逃げませんでした

でもすぐに元に戻って続けます。

晴香「なんでも相談に乗ってくれた先輩も、愚痴を言い合っていた同期も辞めていきました。でも、私はひとりになっても良いと思って、逃げずに戦いました。けど…逃げた人の方が幸せそうなんですよね」

晴香「嫌なことから解放されて、自由に生きて、苦しい事なんて何一つないような生活をしているんです。逃げることが自分のためだって、そんなの分かってました。それで、結局倒産して、仕事をなくしました。周りの言う通りでした。逃げた方が幸せだって」

笑顔で明るく、でもちょっと悲しげな表情で一気に続けた後、

晴香「間違えちゃいましたねー、選ぶ道を」

あっけらかんとしてるけど、悔いとも諦めともれる一言。

しかし、それを一葉は力を込めて否定します。

一葉「間違ってないです」
晴香「え?」

一葉の思わぬ反応に、すこし驚く晴香。

一葉「晴香さんの選択は間違ってなんかいないです。絶対に!」
晴香「でも…」
真琴「すごく素敵な人生です」
晴香「へ?」

真琴も優しく肯定します。

真琴「綾がここにいたら『なんかかっこいい』ってべた褒めしてますよ」
一葉「そうだね。逃げなくてえらいです。すごいです」
晴香「一葉さん」
一葉「うん…すごいです…」

晴香の選択を肯定した一葉ですが、どことなく思い詰めた表情。一葉自身にも何か心に留めておけないものがある様子です。


私のせい

それに気づいたのは真琴でした。

真琴「やっぱなんかあったんでしょ。私くらいには言いなよ」

一葉「優実が霊感強いの私のせいなんだよね」

それは優実の交通事故のこと。
優実が事故に遭ったのは自分のせいだと言います。

その日は金曜日。一葉は優実が自転車に乗る練習を手伝ってました。やっと乗れるようになって、夜になり帰ろうとした時、早く帰りたくて信号無視をしてしまったのです。

一葉「そしたら後ろでドンて音がして、振り返ったら優実が倒れてました」

急いでしまった理由は、観たいアニメの時間が迫っていたから。

晴香「金曜の夜…もしかして」
一葉「そう。クレヨンしんちゃん」

それだけの理由で優実の命を奪いそうになったと後悔します。
クレヨンしんちゃんを嫌いだと言った理由が明かされました。

一葉「倒れている優実を見て、何もできなくて、人がどんどん集まってきて、救急車が来て。怖くなったの…優実が死んでしまうことよりも、私のせいで優実が死んでしまうことが怖くて

一葉「それで、嘘をついたの。優実が勝手に飛び出したって」

優実が死んでしまうかも、という思いよりも、自分が原因で死なせてしまうかもという自身の立場への恐怖から嘘をついてしまった。

一葉「優実も事故の瞬間の記憶時は無くて…それをいいことに自分が責任を負うことから逃げたんだよね…とういうか、今でも逃げ続けています。優実は一命を取り留めたけど、死に近づいた後遺症みたいなもので霊感が強くなったんです」

一葉「あれから十年もたって、もう大人になったけど、優実が幽霊の話をするたびに、あの怖さが蘇るんですよ

大人になっても優実が幽霊話をする度に怖さが蘇ると言う一葉。
だから、優実やみんながどんなにおばけ話で盛り上がっていても、いいねいいよネタの時も、触れたくないあまり素っ気ない態度をとってしまっていたのでした。

一葉「それで、ずっと優実にも本当のことを言えずに、その責任から逃げてる

自分が事故の原因だと思っていることと、優実よりも自分を守ることを考えてしまった結果嘘をついてしまったことをずっと負い目に感じていて、「ブラック企業から逃げなかった」晴香と比べて、自分はずっと責任から逃げてきたと思っているのです。

でも、真琴はそれを否定します。

真琴「それって、逃げて無くない?」
一葉「え?」
真琴「怖さとずっと戦ってるじゃん」

封印して忘れ去ったのなら、怖さすら思い出さないでしょう。優実が幽霊話をする度に思い出して苦しんでるのであれば、それはずっと逃げずに怖さと戦ってきたのではないか?と。

一葉「でも、私は逃げたの!」

それでも一葉は頑なです。


そんなこと

一葉が出て行こうとすると、優実が立ってました。
綾と萩花も。

カフェで恋愛相談に乗っていた筈ですが、戻っていた様です。
今の話を、陰で全部聞いていました。

一葉「優実…ごめん」
優実「…」
一葉「ごめんなさい」
優実「ごめんって、何が?」

すべて知った上で、こう続けます。

優実「うん。でも、私、生きてるよ。死んでない。だし、今、楽しいよ、私」

優実「お姉ちゃん、そんなこと気にしてたの?」
一葉「そんなこと?」
優実「生意気!」
一葉「へ?」
優実「私がどんな感じで事故に遭ったとしても、今生きてて、幸せだって思ってるんだからお姉ちゃんには関係ないでしょ!」

「生意気!」は、優実なりの感謝の言葉なのでしょう。

自分は今幸せだからだいじょうぶ、だからそんなこと気にしていないで。と、一葉がずっと抱えてきた思いに応えたのでした。


ようやく明るい表情を取り戻す一葉。
優実に冗談めかして「自分の幸せ考えたら?そんな歳して彼氏もいなんだから」なんて言われてしまいます。


一目惚れ

萩花「今、三人で話したんですけど、優実ちゃん告白します!」
晴香「え?誰に」
萩花「幽霊に!」

これはまた急な展開です。晴香でなくても「どういうこと?!」ってツッコみたくなります。

綾「ここに住む幽霊に一目惚れしちゃったんだって」
真琴「でもどうやって会うのよ」
綾「それは…今から考える」

特に策は無いみたいです。

優実に状況を訊いてまとめると、先週一回だけ会えた。それは急に雨が降ってきた日でその時停電していた。それ以降は会えていない。暗いから見えるって訳でもない…

まだ何かきっかけがあるはずだと探っていると、静子が白ワンピースを着て頭に三角の布(天冠てんかんというらしい)を付けた、トラディショナルなおばけの恰好をして出てきました。

静子「みなさーん。これ似合ってます?」
一同「…」

あっけにとられる一同。かまわず千紘が続けます。

千紘「音なんですけど、これにしようと思います」

と言ってスマホから雷の鳴る音を流します。

優実「あ…雷。雷が鳴ってた日だ!」

一葉「静子さん!!あのネタ!!あのおばけと話せるって。あれってほんとですか?!」

調べて書いたネタとはいえ、本当かどうか分からないというものの、それでも試してみる価値はある!これを使って告白できるのでは?!
雷の鳴った日に観たという”事実”と、静子の書いたコントのネタが結びついて、みんなに盛り上がりだしました。

晴香「きっかけは雷ってことですね!だったらチャンスはいくらでもありますよね!」

確かに、その筈だったのですが…


3日後には解散!

一葉「ああっ!忘れてた!」
真琴「なに?」
一葉「この家、売りに出すかもって」

さっきのばあちゃんからの電話は、この家を売りに出すから、出て行って欲しいとの連絡でした。

なんでまた急に?驚いて理由を尋ねると、ばあちゃんの彼氏が、昔の旦那と住んでいた家が残っているのが嫌なのだそう。嫉妬というよりただ料簡が狭いだけの様な…

そんな話にうろたえているとタイミングよく家の電話が鳴って、一葉が飛びつきます。

一葉「(電話)もしもし」
優実「おばあちゃん?」
一葉「うん。(電話)3日後?!急すぎる!ねぇ!ちょっと!」

一方的に電話が切れました。

一葉「…」

ちょっと壊れ気味の一葉。両手を頭の上につけてハートを作るようなポーズで

一葉「へへへ…」

真琴「へへへじゃなくて!」
一葉「3日後には出てって」
一同「エーーーーッ!」
一葉「だから、3日後には解散です!」


告白決行!

綾「じゃあ待って!優実ちゃんの告白チャンスも残り3日しかないってこと?」

すぐに萩花がスマホを使って情報を集めると、明日と明後日は晴天。ということは今日しかない。

今日はまだ雷の音はしていないけど、雷レーダーによるといつ来てもおかしくなさそうだと。

綾「優実、告白のチャンスは今日しかないってこと。する?しない?」

怒涛の急展開に戸惑っていた優実も腹をくくった様です。

優実「…する!!」

皆もまわりで応援する体制を整えるとすぐに雷が来そうな気配。
晴香が電気を消して待つと間もなく雷鳴が!

優実「好きです!付き合ってください!」

固唾をのんで見守るみんな

一葉「ど、どう?」
優実「………何も見えないし、聞こえない」

何も見えなかった様です。泣き出しそうな優実を「よしよし」と静子が慰めますが

優実「嘘つき!」
静子「ええ!わたしのせいですか!」
一葉「そうですよ」
静子「ごめんなさーい。なんであんなコント作ったんだろう。千紘ー」
千紘「はい、ざんねーん」(といって静子の頭を台本で叩く)
静子「いたーい」

優実の型破りな告白は、みんなで笑って終わりました。


じいちゃん?!

夜。
薄暗いリビングのソファで優実が眠ってます。

一葉も片付けをしているところへ綾が帰ってきました。

綾「優実~わたしの部屋で寝れば~」
一葉「なんかここで寝たいんだって」

優実に寝言で拒否されて、ぶつぶつ言いながら自室に戻る綾。一葉も一区切りつけて部屋に戻ります。


暗い部屋。雷の音。

優実はその音で目を覚ますと、ソファから降りてある一点を凝視します。

優実「…え?あの!」

優実「じ…じいちゃん?!


幸せであれ!

みんなが輪になってじゃんけん。

綾「最初はグー!」
一同「じゃんけんほい!」

共同で使っていた家電を持って行く人を決めてます。
冷蔵庫は静子がゲット。相方の千紘が「冷蔵庫はでかいよ!」と喜んでます。

綾「じゃあ次!炊飯器!最初はグー!」

これは萩花がゲット。「よっしゃぁぁ!」とガッツポーズ。なんで炊飯器で喜ぶんだ?と怪訝な周りに

萩花「いいじゃないですかー翔太と来月から同棲するんで♡」

例の翔太と、あのゴタゴタの後上手くいっている様子。

真琴「”復讐”は成功したってことか」
萩花「はい!あのあと、私しかいないって言ってくれたんです!」

怪しい思っているのは綾や真琴だけじゃないと思いますが…

晴香「やばい。わたしじゃんけん弱すぎる…ああっ家具も仕事もない生活が始まるのかー」
一葉「ほんとにすみません」
優実「家はあるだからいいでしょ」

そう、急に追い出されることになってしまった住人たちのために、おばあちゃんの彼氏が、それぞれに住む部屋を用意してくれたのです。

おばあちゃんの彼氏は、不動産会社の社長!

初期費用と家賃一年分はタダ!

とりあえず晴香は路頭に迷わずに済んだし、綾も一年かけてゆっくり翔太の代わりの男を探せるし、静子と千春の「いいねいいよ」のふたりは一緒に暮らすことになりました。

真琴「でも一葉の約束はよかったの?」
一葉「ああ、うん。仕方ないよ。ごめんて思いながら生きてく」
真琴「そっか、なんか寂しいけどね。みんなと離れるの」

残りの荷物はまた明日取りに来ますと言いながら、静子と千紘が外出していきました。

ぐったりしている晴香には

萩花「おい、可哀想なやつ。炊飯器あげようか」
晴香「ええ!ホントですか!ありがとうございます!」

本当に可哀想に思えたのか萩花は晴香に炊飯器を譲ってしまいました。

綾「ここのイケメン幽霊いなくなっちゃったのかな」
一葉「どうだろうね。いなくなったか、あの日は出てこなかっただけなのか」
萩花「せっかくちゃんと告白したのにね」
真琴「まあ静子さんのネタも調べたとはいえ、ただの都市伝説みないなものって言ってましたしね。

それを聞いていた優実が

優実「ああ!そうだ!会ったよ、幽霊」

綾「イケメン幽霊?」
優実「ううん、じいちゃん」

あっさりじいちゃんの幽霊を見たという優実。

優実「なんかね、この前ここで寝てたら、いた、じいちゃん」
一同「は?」
優実「なんでか知らないけど『ばあちゃんの幸運を祈る!Good Lack!』っていってた」
一葉「はい?」
優実「あと『さっさと身を引くのが男ってもんだ、約束は忘れてくれ』って」
真琴「さすがだね」
一葉「うん…ってか、優実なんで早くそれ言ってくれなかったのよ!」

じいちゃんの方もあっさり約束は忘れてくれ、とは。

綾「え、じゃあ、優実ちゃんが一目ぼれした幽霊もおじいちゃんてこと?」

それは違う!ほんとに居たんだと言い張る優実。

綾「ってか真琴、幽霊見えるんでしょ?イケメン幽霊どこ行ったのよ」

普段から真琴も霊的なものが見えると言ってるのだから、今イケメン幽霊がどこいるか見えるんじゃないかと問い詰められて、あっさりネタバレ。

真琴「そんなの嘘に決まってんじゃん」

なんでも、いつも背後霊云々言っていたのは「占い師としての信憑性を高める」ための口から出まかせで、自分の占いは統計学だと言い切る。
大体、占いなんて背中推して欲しいからするもので、相談に来る人の答えはもう決まっている。そこに自信もって進めるようにしているだけだと。

真琴「人生ってさ、答え分かんないなぁって思うけど、答えなんか正直どっちでもよくて。その自分が生きてる人生を素敵と思うか、楽しいと思うかかが大事なんじゃないかなって。ほら、萩花さんもどう考えても幸せになれなさそうな男を選んでても、あんなに楽しそうにしてるんだよ」

と指さされた萩花を見ると、少し前に翔太からかかってきた電話に出て、こちらの話を余所に翔太との会話に夢中。そのまま廊下に消えていくところでした。

真琴「だったら、その選択は間違ってないと思えてくるでしょ。幸せそうじゃん。だから、綾もさ…」
綾「まーこーとー!今まで騙してたんかあああああ!」

激怒した綾に追いかけられて、真琴と二人は部屋に駆け戻って行きました。

一葉「晴香さん、なんかバタバタですみませんでした」
晴香「一瞬でしたね~」

楽しかったと言う晴香。
短かったけど、晴香も仲間入りできました。
幽霊に告白する子の応援なんて最高に面白い人生のネタだと笑います。

晴香「あ、あと…ありがとうございました!」
一葉「え?」
晴香「嬉しかったです。一葉さんと真琴さんに私の人生間違ってない!って言ってもらえて」
一葉「あー!いえ、それは私もです」
晴香「さっき真琴さんも言ってましたけど、自分の人生なんだから素敵って思ったもん価値ですよね」
一葉「はい。どうか今自分が進んでいるこの人生が幸せであれ!って願いながら進んでいくしかないですもん
晴香「そうですね!」

ここで一葉が思い出します。おばあちゃんの彼氏の会社で人を探しているみたいで、そこで働かないか?というのです。
一も二もなく引き受ける晴香でしたが、ほとんど身内からの紹介に

晴香「ちょっとズルしてる気分ですけど」
優実「まあ、そんな人生もありなんじゃない?」
晴香「はい!自分の人生認めたもん勝ちです!」

一葉「で、その面接が2時からなんですけど…」
晴香「え?!もう2時じゃないですか!なんでもっと早く言ってくれないんですか~!」

と、いつもの様に明るく飛び出していきました。炊飯器を抱えながら。


エンディング

バタバタバタと真琴と綾が戻ってきました。

そこへ一葉の携帯が鳴ります。電話を取る一葉。

一葉「もしもし!…え?倒産?!いや、えー、え?私は?クビ?!」

皮肉なことに一葉が冒頭の晴香と同じ境遇になってしまうとは!

綾・真琴「あちゃー!」
一葉「へへへへへへ…」
綾・真琴「なに笑ってんの?」
一葉「んまぁ、幸せだよね~!
綾・真琴「は?」
優実「おねえちゃん…幸運を祈る!グッドラック!
一葉「優実!バカにしてるでしょ!」

バタバタと優実を追いかける一葉。

すると綾と真琴が、それぞれ一葉と優実の腕を掴んで捕まえます。そして

綾・真琴「いくよーー!せーーの!!」

お互い離れて向かい合ったところから背中を押されて、舞台中央で一葉と優実がハグ。

エンディング曲 片平里奈の『JUMP』が流れる中、幕を閉じます。


観劇し終えて

今回★×3、♪×2を観劇しました。

「ほっこりとした日常」といった感じの、かなえさんらしい前向きな顔を上げて歩きたくなるお話でした。

とはいえ、らしいと言っても、もちろんかなえさん自身がすべて物語に投影されている訳ではなく、多分に願望も多分に入ってるのでは?と想像していますが。

「幸せになりたい」ではなく「幸せであってほしい」というタイトルもかなえさんならではなのでしょう。

自分の人生なにがあっても幸せだと思ったもん勝ち。ただしそれは劇中にくりかえし出てくる「逃げない」ことが前提。人生であれ何であれ逃げずに「戦って」、その結果であれば受け入れることができるし、それで前に進むことができるなら、それはもう幸せだよ、と一葉ら登場人物を通して受け取った気がします。

ただ、晴香の「ブラック企業から逃げなかった」の部分、そこは逃げても良かったんじゃないか?と考えてしまいました。もちろん、あそこは晴香の選択を肯定することが目的なので、現実の社会問題を重ね合わせる必要は全く無いのですが、あの場面のセリフの組み立てで、観客にどう伝わるのかも含め、少しだけ考え込んでしまったのも事実です。


「幽霊に告白」は、ちょっと無理があるんじゃないかとも思いましたが(笑)、それも優実が(無理やりながら)突然訪れたチャンスから「逃げずに」告白できるか?という逃げない出来事のひとつとして受け取りました。

個人的にはじいちゃん家の幽霊関係は全部じいちゃんだと解釈していて、残念ながら優実が見たイケメン幽霊もじいちゃんだと(笑)。たぶん、じいちゃんは若い頃イケメンだったのでしょう。幽霊は時空関係ないですから。

じいちゃんが、静子の「幽霊と話そう」ネタを誘導し、霊感体質の優実を惹きつけて、一葉にメッセージを届けた、と思ってます。ある意味じいちゃんにも翻弄されたお話ではなかったか?と、勝手な解釈もしています。


もうひとつ、全体を通して感じたのは「居場所」。

一葉や綾,真琴の住処、千紘と静子の「いいねいいよ」、行き場を失っていた晴香、広い意味では萩花にとっての翔太も居場所なのでしょう。

それぞれにとってのあるべき居場所が描かれていて、居場所も大切な「幸せ」の基盤だと改めて感じさせられました。

「幸せって思ったもの勝ち」と思える様になるにも、足元が安定していないといけないと思うのです。


あんなに守っていた約束の家を、自分たちではどうすることもできない「外的要因」とは言え、あっさり手放して、みんなもあっさり次に進むのがなんとなく象徴的に感じました。

あまり過去にとらわれすぎても幸せは掴めないという…

家を守るというじいちゃんとの約束からの解放、優実の霊感体質になった原因をつくった負い目からの解放、大げさに言えば過去の呪縛から解放されてこそ幸せになれる、と示唆しているのではと…まあ、そこまでは考えすぎかもしれませんが(笑)。



笑いという点でも今回は過去一番だったのではないでしょうか。以前の作品よりも純粋にネタで勝負している感じがしましたがどうでしょう。客席にも結構笑いが起きていました。特に楽日はやりたい放題でしたね(笑)


初のゲスト制も、とても良かったと思っています。皆さん上手(これは舞台を見慣れたファンの方々も言ってました)で安心して観ていられたし、自分にとってもゲストの役者さんたちとの新しい出会いも嬉しかったです。ミスジョメンバーの方にも刺激があるのではないでしょうか。

ダブルキャストも良かったです。両バージョンを同じぐらい観ておきたくて、ミスジョの舞台では初めて当日券を買った程です。


前説が劇中の「いいねいいよ」のコントになってるのは面白かったですね。役名でのショートコントだったから登場人物だって判ったし、劇中で「いいねいいよ」を印象付けるのにも役立って良いアイデアだと思いました。


エンディングも含め、場面場面で音楽が効果的に使われていたのも印象的です。特に家飲みで乾杯した後、時間経過と場面転換の時に曲が流れる中、暗転から曲終わりの瞬間に優実が灯りを点ける、という演出が観ていて気持ち良かったです(この時の曲は中前りおんの「シャイニングガール」という曲だそうです。余談ですがこの曲の歌詞はこの場面にぴったりです)。

ちなみに、エンディング、カーテンコールは片平里菜「JUMP」、優実の告白シーンでは Day and Night「lily」が使われていました。


以上思いつくままに記してみました。ミスジョ初の「普通の女の子(女性)たちの普通の日常」を描いたお話、といった趣でしたね。


今回も出演者の方への一言所感を、台本クレジットの順番で。


木村佳奈枝 (白石一葉)

今回かなえさんは脚本・演出の方で注目していましたが、演技の方も『圧倒的ヒロイン』は健在でした。

自分で脚本を書いたということもあり、以前の作品よりも、よりストレートにかなえさんが投影されていた気がしています。

全編一葉を中心にお話が進むので、ほぼ出突っ張り。

一葉はいたって普通の女性で、周りの個性豊かな住人らに囲まれていると、性格的には目立たない気もするのですが、それが返って面白かったのかもしれません。周りに翻弄されるというより、上手くあしらっている感じもしましたからね。

オチの、一葉の勤め先が倒産して、冒頭の晴香の境遇に繋がるところも秀逸でした。

最後、セリフ中での「幸せであれ―っ!」を絶叫調で言うところは、決まった!いよっかなえ屋!って感じでした(笑)

石原桜彩(白石優実)

桜彩さささんはゲストの役者さんです。
優実と同じ18歳。今回、ほとんど事前に情報、特にゲストの役者さんに関する情報は入れていなかったので、初日をものすごくニュートラルに観ていたのですが、お芝居は何の違和感もありませんでした。

ほら、あんまりだと「あれ?」って気になってしまうことがあるじゃないですか。そういうのが無く、普通に「優実が帰ってきた」と見ることができてお話に集中できたのでした。

「幽霊」を見た後の茫然とした表情や、涙を流す演技とかを見て、お芝居の経験はあるんだろうなあと漠然と思ってました。

ところが、初日終わってからファンの方のツイート見てびっくり。初めての舞台だったと知って驚きました。それぐらい堂々と演じている様に見えたのです。

観た人がみんな褒めてましたし、これから人気がでそうです。

自分で「今から推せば古参」みたいな事も言っていて(笑)、ベタな言い回しですけど「期待のニューフェイス」なのでしょうね。

Showroomやツイートを見た限りですが、ご本人もなかなかおもしろそうな感じです(笑)。

パンダしか勝たん♡』と言われる程パンダ好きで、初日出てきた時「あ、ぱんだのひとだ」(その時それぐらいしか知識が無かった)と思ってしまいました。

北條愛実(立花綾)

綾はダブルキャストで、★チーム(パターン)は、ミスジョのめぐみさんです。めぐみさんのミスジョ舞台への出演は2020年12月の『キャプションボード』以来ほぼ一年半ぶり。久しぶりに舞台上のめぐみさんを観ることができました。

後述する西村麻里菜さんとの対比もあるのでハッキリ書きますが(笑)、めぐみさんの綾はヤンキーっぽい荒々しいオラオラな感じ。めぐみさんの得意とするキャラクター…と言うと怒られるか?

やはり多少雑っぽい真琴とも良いコンビです。
姉御肌の様で、それが良く出てるのが萩花との関係です。翔太の件で意気投合してからは親分・子分みたいな間柄みたいに見えました。

一方で、翔太からの午後に来たおはようメッセージにブチキレルかと思いきや「かわいい♡」と言って、しつこいぐらいスマホにチュツ・チュツとキスを繰り返して『ミラクルロマンス☆』したり、幽霊が居ると脅されただけでビビってウロタエるなど可愛らしい面を見せます。

つまり、ギャップ萌えのキャラでもあったのです。

ラストの「オチ」では、キャリーバックを引っ張りながら真琴を追い回していたのですが、大千秋楽で遂に にしまりさんのピンク衣装を着て登場!キャラ変してしまい、「キモチワルイ!」と逃げ回る真琴と共に爆笑でした。

西村麻里菜(立花綾)

ゲストの“にしまり(NISHIMARI)”こと西村麻里菜さんはダブルキャスト綾の♪チーム(パターン)を演じました。

基本的には同じ流れなのですが、所々異なっていて、なによりめぐみさんの綾とは全く違う性格付けになっているのが面白い!

にしまりさんの綾は、演じるご本人の『あざとキュート♡』を地で行くような(?)ピンクワンピース衣装の「ぶりっ子」。

普段はブリブリなのに、ところどころで”本性”(?)が見え隠れして、最後の最後で「ぶりっ子」を辞めキャラ変して特攻服で登場!竹刀を振り回して終わるオチ。

めぐみさん版の綾と真逆な感じのキャラクター付けなので、「ギャップ萌え」の方向もまた逆になっているのが面白いのです。

他の登場人物の関係も微妙に違って見えて、例えば、めぐみ版が真琴と似たもの同士だから”めんどくさい”けど良いコンビに対して、にしまり版は本当に”めんどくさい”けど良いコンビに見えるし、萩花との関係も親分・子分感があるめぐみ版に対し、異なる性格の人が共通の目的で手を組んだ感じと、意気投合の具合も微妙に異なって見える、といった具合です。

当然、にしまりさんに力があったからこそ、この違いを表現できたのでしょう。

この性格の違う綾が両チーム(パターン)の舞台をきちんと観たくなった理由です。チケット発売前、本当は♪チームは1回か、最悪観なくてもいいかなと思っていたのです。しかし一度観たらもう一度「にしまり版」観たくなって追加で観に来たのでした。

ちなみにダブルキャストのお二人は、出番がない回は物販を担当していましたので、少しお話することもできました。にしまりさん、そこでも舞台上とはまた違う優秀さを遺憾なく発揮してましたよ(笑)。

神谷実玖(河合真琴)

存在がファンサ☆』な実玖さんは、毎回どんな顔を見せてくれるかと楽しみなのですが、今回はコメディエンヌ!と勝手に思ってます。

例えば「いいねいいよ」のコントを見て感動してからトイレに立つまで、真琴はずっーと感涙しっぱなしで会話をするのですが、残念ながらその面白さはどんなに文字で書いても伝わらないし、台本からも読み取れません。

映像化もされない様だし、これは実際に劇場に足を運んで観た人だけが笑えた特権ということで(笑)。

もちろん、真琴をきっちり演じる実力があった上で、お笑い好きな実玖さんだからこそ、これだけ面白く魅力的にできたのだと思います。

前出の場面でも面白いだけじゃなくて「なにが起きているの?」とか可愛いところもあるんですよね。

真琴は最後に「自分の占いなんて応援みたいなもの」から続けて、この舞台で伝えたいことを総括するようなセリフを言うので、これだけでも印象的なのですが、個人的に大好きなセリフがあります。

それは、なんでこの家に来てくれたのか訊かれて答える「みんなと一緒にいると楽しいじゃん」です。

真琴に「キュンとする」セリフでした。

磯ヶ谷典華(浪江静子)

”ふみぱん”こと典華ふみかさんは、これまでのミスジョの舞台では「飛び道具」、ぶっとんだ・不思議なキャラクターの人物を演じる事が多くて『魔法少女なのです!』と言われる所以だと思いますが、今回はその流れも残しつつ、純粋でまっすぐな、お笑い芸人「いいねいいよ・静子」を好演しました。

一念発起して優実が告白するきっかけになる「おばけのコント」を書いたり、「いいねいいよ」相方千紘へのコンビ愛みたいなものも感じされて、お笑いコンビの人気の出るボケの方の感じが良く出ていたと思います。

フル装備になると幼稚園児みたいなファッションセンスは、これまでの流れを受け継いだ一環だと思いますが(笑)

静子の「持ちネタ」は「おいとまするでやんす!」。
前説の中でも登場したこのギャグは、静子というかふみぱんがやったから面白いんでしょうね。気に入ってます。

その前説の内容は、ふみぱん自身が作ったそうで、劇中でも使うネタ帳のノートもSNSで公開していましたが、そこには「おばけと話そう」と共に前説も本当にびっしり書いてありました。

お客さんへの注意点など必要な事を面白く伝えた上、オモシロネタとのバランスも絶妙で良かったと思います(個人的にはタバコを吸おうとする時に吹いてしまいました(笑))。

安齋真綿(草壁千紘)

ゲストの真綿さんも舞台は初めてだそうですが、所謂プロとして舞台での演技が初めてということで、以前に発表会などで人前でステージに立つことはあったそうです。そして大学で演劇の勉強をしているとか。だから堂々としていて安心して観ることができたんですね。

登場人物の中で役者さんと一番年齢差がありながら(千紘29歳、真綿さん20歳)、「じゃない方芸人」の感じが存分に出ていました。

「じゃない方芸人」とはいえ千紘はとてもしっかりした女性で、「いいねいいよ」のことを考え、相方の静子の事を想い、コントを書く優秀な「ツッコミ」の芸人さんです。往々にして「じゃない方」とか「売れてない方」とか言われる方が賢くコンビを支えていたりしませんか?(笑)

それに嘘をついてまで晴香を受け入れようとする(居場所を与えたいと思う)優しさ。

そのあたりも真綿さんの雰囲気も相まって、千紘が上手く完成していったと思います。

余談ですが、雨に降られて帰ってくる場面、あそこは霧吹きで軽く髪や衣装を濡らしていたそうですが、千紘の衣装が一番濡れ具合が目立つ感じで、乾くのかな?なんて余計な心配してしまいました(次の場面ではベストみたいなのを着てたのは隠すためだったのかな?)。

ところで、真綿さん自身は『みんなの太陽!』だけあって、ほんわかのんびりした印象。

もし、役を離れた真綿さんとふみぱんが素でコンビを組んだら、両方とも「ボケ」であることは間違いなしです。

青山絢香(佐伯晴香)

身長172cmが売りの”あやぱん”さんもゲスト女優さん。
ゲストの役者さんの中で、唯一知っていた方です。

前回の公演「Seven」の時に、さよっこりーのサイン入りミスジョTシャツを着た『高身長女子!』のスタッフさんが居るな思ったら、「あやぱん!あやぱん!」と周りにファンの方が集まってきたので、「あ、有名なひとなんだ」と思ったのが出会いです。

以降、舞台以外やSNSでの”活躍”は度々見ていたのですが、演技を観るのは初めて。どんな感じなんだろうと興味深々の中始まった途端に、冒頭からいきなりあやぱん登場。

冒頭の電話に出る晴香を見て、あ、この人ちゃんと演技もできるんだと納得しました。

今回、晴香は一番印象に残る登場人物でした。常に笑顔で、明るくハイテンションな晴香は あやぱんしか居ないと思うのですが、本人の地声は低いので高めの声で話すのは意外としんどかった様です。

面白いキャラクターを、それをよく理解していて賢いあやぱんが演じるものだから余計に面白い。

例えば、気まずい空気になったので「黙りまーす」と言って長時間黙る場面がありました。初日などは普通に黙っていて、それだけでも面白かったのに、回を重ねると黙ったまま「顔芸」を入れて笑かす様になり、楽日には黙りますの後に「踊りまーす」と言って踊りだす始末。一葉のかなえさんが本気で笑ってしまい顔を背けることもありました。

衣装の着替えも多くて、中には上がスーツで下が部屋着のパンツみたいな珍妙な格好も、可笑しいけど不自然じゃない(笑)。

あと、萩花が綾をぶっ刺そうと迫ってる時に、満面の笑顔で綾の後ろを支えてる晴香に毎回目が行ってしまってました。

そんな晴香の好きなセリフは「はい、逃げませんでした」。
それまでずっとバカっぽく明るく話していた晴香が、一段トーン低く落として、でも強くはっきりとした声で云います。
この後「間違えちゃいましたねー、選ぶ道を」まで、晴香が気持ちを打ち明けるきっかけになる、とても気に入ってるセリフです。

出演者全員のポップを作成するなど、表でも裏方でも力を発揮したあやぱん。彼女のマネージメントやセルフプロデュース力を羨ましいぐらい尊敬してるんです。

ところで、なぜ「〇〇ぱん」て愛称の方は個性的なんでしょうね(笑)

小山葵(後藤萩花)

なかなか登場しなくて、あと誰が?と思ったら浮気相手を探して飛び込んでくるインパクト大の萩花がゲストの葵さんでした。

葵さんもこれが初舞台とのこと。繰り返しますが、全然そう感じる様なところもなく観ていたものですから、最終回が終わった後のカーテンコールで知って驚きました(実際にはゲストが決まった時のツイートで言及されてた様ですが全公演終わってから確認しました(笑))。

最終的に翔太を選ぶ、萩花の「アレな感じ」を、葵さんはしっかり出していたと思います。

萩花の好きな場面は、やはり登場時のSNSを使っての浮気相手探しハックテクニックを自慢げに披露するところでしょう(笑)。毎回ニヤニヤしながら観ていました。

画像から色々特定する能力もさることながら、なりすましアカウントまで作って翔太のフォロー相手を探す手間をかけながら、結局は翔太が使いそうなパスワードで正面突破の侵入するという行為自体も笑えるけど、それを葵さんがセリフで一気に捲し立てるので面白さが成立してたと思います(ここは優実のツッコミも面白さを引き立ててました)。

ミスジョの舞台は往々にして演じる人の人柄が役に滲み出る設定になることがあるので、本人も萩花見たいな感じだろうか?と恐る恐るツーショットチェキお願いしたのですが、いたって優しい『キャンディSmile☆』な方でした。

僕が知らないだけかもしれませんが、現状あまりSNSやられていないのか、ミステリアスなところもあります。もしかすると萩花みたいなトンガッたところもあるのでしょうか…


※『』内太字のキャッチは、あやぱん作のポップから使わせて貰いました。
©青山絢香


前回、「Seven」の感想でミスジョは"Season1"が終った様だと書きました。そして今回、"Season2"が、また新しい形で始まったことは嬉しく思います。

そう言いながらも、所謂「推し」が退団してしまったのに、ここまでコミットする必要があるのか?と思ったこともあります。

でも、やっぱり応援したいし、何より生の舞台って観てて楽しいですからね。

今回も楽しい舞台をありがとうございました。

2022年8月30日追記
「観劇し終えて」文中の「乾杯後の場面で使われる曲」が間違っていたので訂正しました。
正しくは中前りおんさんの「シャイニングガール」という曲だそうです。
大変失礼しました。
木村佳奈枝 さんご本人からご指摘いただきました。ありがとうございました!
(印象的とか書いておきながら曲を間違えてたとは恥ずかしい限りです。重ねてお詫びします)

(やまっくす)


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