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ナマズの吸虫

ここでは、私がこれまでに見つけた動物を気まぐれで紹介していきます。今回はHHDの写真を整理しているときに見つけたものです。意外と知っている人が多いという印象がある吸虫です。

和名:?ないと思います
学名:Isoparorchis hypselobagri?(正確な種同定はしていないです。)
分類:扁形動物門吸虫綱
生息ナマズ(Silurus asotus)とギギ( Tachysurus nudiceps)のうきぶくろに寄生。群馬、茨城、千葉、東京、長野、滋賀、京都、奈良、岡山、島根、広島、山口、愛媛、高知、福岡、大分、宮崎、熊本の18都道府県で確認されている。
解説: Isoparorchiidae科に属する吸虫で、この科の吸虫は基本的には淡水魚に寄生します。体長が40mmと大きいことも特徴的です(多くの魚類に寄生する吸虫の体長は1〜2mmくらい)。ナマズは時々食べる人もいるため目にする人もいるようです。宿主に影響を与えることがあることから形態、生理,体組成,魚類における発生,病理等の生物学の様々な側面が注目されている。ここでは、長澤ら(2013)をもとにIsoparorchiidae科吸虫の紹介をします。

ナマズを入れたクーラーボックスはなぜかすぐに濁ります。食べているものも吐き出したりするので、匂いがなかなかきつかったです。

ナマズを食べる時は…

この吸虫はヒトに寄生することはありません。日本ではあまりナマズを食べる文化はないと思うので、この吸虫で健康を害することはないと思います。ただし、ナマズをはじめとする淡水魚を食べる場合は、顎口虫を注意した方が良いです。ナマズを食べる文化のある国では、蒸したり揚げたりとしっかり火を通しているので、見習いましょう。聞くところによると、酢でしめても効果がないとのことです。

時期的なもの?

このナマズに寄生している吸虫は日本国内の様々な淡水魚に寄生しています。これまでの研究により,10科5目24種と無名2種が宿主として知られています。感染状況は、魚種魚体サイズ採集地によって異なっているようです。小型の魚ではあまり寄生は見られず、10cmを越えるとサイズが大きくなるにつれて寄生率が上昇します。また、季節によっても寄生率は変化するようで、晩冬から春にかけて(2月〜5月)は寄生率が高く,初夏から盛夏にかけて(6月〜7月)減少し,晩夏(8月)に最も低くなります。一方、秋(9月〜11月)になると増加し、初冬と真冬(12月〜1月)に最も高くなります。

吸虫の一生

この季節による変化は、この吸虫の一生にも関係しています。以前の私の記事でも述べましたが、吸虫は幼虫の時と成虫の時とで宿主を変えます。この時、その地域の食物連鎖を利用していることが多いです(例:貝類→エビ→魚)。この吸虫の幼虫が寄生する動物は色々と議論があるようですが、カワニナであるとされています。その後、この吸虫は水生の節足動物小型の魚類の体内に移動して、これらの動物がナマズなどの大型魚が食べることで、ナマズの体内に寄生します。

どれくらい生きるの?

これも先述しましたが、この吸虫はとても大きいです。しかも、魚の体長と寄生虫の体長に正の相関関係があるとされています。これは、宿主の魚の成長に合わせて、吸虫も成長しているということなので、かなり長寿の吸虫です。ちなみに、ナマズは20年前後生きるらしいです。

参考文献

Kazuya Nagasawa, Hirotaka Katahira and Masato Nitta. Isoparorchis hypselobagri (Trematoda: Isoparorchiidae) from freshwater fishes in western Japan, with a review of its host-parasite relationships in Japan (1915–2013) Biogeography 2013 15 11 20
https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/5f/gnathostomiasis.html

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