共同親権について〜保健室で見てきたこと〜

私は養護教諭(いわゆる保健室の先生)をしています。
はじめに申し上げますが、共同親権に強く反対しています。
少しでも誰かに何か届けばと思い、私の経験と考えを書くことにしました。

※以下、これまでの勤務校での経験が出てきますが、フェイクを入れたり複数人を混ぜたりして個人を特定できないようにしてます。
矛盾があっても読み飛ばしてください。



①友達にすら本名を明かせない高校生


ある高校では、「××は仮名だが学校ではこの名前で呼ぶこと、本名は○○だが絶対に漏らさないように」「父親を名乗る人物から連絡があっても情報を渡さないように」という生徒がいました。
父親からひどいDVを受け、母子で名前を隠しながら高校へ通っている生徒です。
毎年職員会議で全体共有し、厳重に情報を管理していました。
ある日その子から、「父方の親戚に居場所がバレた、しばらく今住んでいるところを離れるので休学したい」と連絡がありました。
実際に数ヶ月県外に身を隠し学校も休みました。
学校が知られていないのは幸いでした。住所を変え髪型を変え、無事に復学し卒業しました。

実の父から命の危険にさらされ、友達にも本名すら明かせないまま学校に通わなければならない子がいるのです。
たまたま学校がバレなかったから卒業できたものの、共同親権によって進学先を知られていたら、卒業も出来なかったでしょう。
子どもの未来を狭めることに他なりません。


②父親が犯罪者


特別支援学校での事例です。
本人は知的障害あり。
母親は病気のため養育不可、父親が育てていました。
父親は、授業参観などには必ず来ます。そして愛想がよく朗らかで子どもにも優しく、傍目には「良いパパ」に見えました。
しかしご飯をあまり食べていない様子や、前日着たものをそのまま着てくるなど、ネグレクトの疑いがありました。
そしてある日警察から「父親が逮捕された」と連絡がありました(具体的な罪状等は伏せますが女性に暴行したりしたそうです、かなり悪質でした)。
母親は長く病気を患っており、引き取ることは出来ず、福祉施設に入所することとなりました。
詳しい流れはわかりませんが、その後両親は離婚し、その子の保護者欄から両親の名前は消え、施設の担当者が保護者ということになりました。

後から聞いた話だと、その子の父親はたびたび女性を家に連れ込み、その子には食事を与えず大人だけで食事したり、その子の目の前で性行為をしたりしていたようです。
外で献身的な父親を演じることで女性を釣っていたんだろうなと思う節もありました。
「パパは家では話しかけてくれない」「今は○○(施設の担当者)さんとかが話してくれるからすっごく楽しい」と話していました。

親が犯罪を犯し、離婚するというケースもあります。
特に障害のある子は、親が何をしたのか、自分が何をされたのか、わからないままで逃げ出すことも出来ません。
このような場合でも親権があれば生活に介入することが出来てしまいます。非常に危険です。


③性的虐待の被害者


※性的暴行に関する記述があります。見たくない方はスクロールしてください。

コロナ禍に突入し、学校が一斉休校から分散登校になった頃の話です。
ある女子生徒から相談されました。
「お父さんが部屋に来て触ろうとする」
「性器を触らせられた」
「お父さんの部下という人が家に来て、お酌をさせられ、下半身を触られた」
母と弟がいるが、家に二人しかいないときにしかしてこないそうです。
父のリモートワークと自分の休校が重なり、さらに弟が登校の日。(母はリモートワーク出来ない職種のため毎日出勤)
詳細は省きますが関係者とともに対応していたところ、数日たってとうとう「昨日無理やり挿入された」と泣きながら保健室に来ました。
「母親には言わないでほしい」とずっと言っていたため、これまではオブラートに包んで報告していたものの、もうそんなことは言っていられないので早急に報告し受診。その子はショックが強く教員ですら男性とは話ができない状態でした。

その後も色々、本当に色々書ききれないほどのことがありましたが、結果的に離婚して、その子は無事に高校を卒業していきました。
その「色々」の中のひとつに進路のことがありました。
当初その子は、父親の母校である国立大学への進学を志望していました。
しかし、共学であること、父親の母校であることから、私立の女子大へ志望校を変更しました。
それに父親が激昂し、学校に怒鳴り込んできたり、娘が帰るところを待ち伏せて追いかけ、その子が学校に引き返して逃げてきたのを匿ったりもしました。
最終的には志望通りに進学することが出来ましたが、学校全体を巻き込んだケースとなりました。

共同親権となると、このようなケースの場合、
・性的虐待の可能性があるにも関わらず面会に応じなければならない
・現在の住まいや生活範囲を知られるおそれがある
・進学先を知ることができる、養育していなくてもお金を出していなくても意見ができる、「進学費用を出すから会わせろ」等の強要が可能になる
ざっと考えただけでもこれほどの危険があります。
性的虐待、性的暴行は「心の殺人」と言われることがあります。体の傷は治っても、心の傷は一生治らないんです。人としての尊厳を奪う卑劣な行為です。
また、居場所や進学先を知られると、ふたたび被害にあうことも考えられ、文字通り命の危険があります。
この生徒は、しばらくは男性や男子生徒と接することにも恐怖があり、日常生活に戻るのにものすごく苦労しました。
性的虐待の被害者にも共同親権が適用されるのは非常に危険だと思います。


④妊娠中の離婚


これは生徒ではなく、教員のケースですが最後に…。
同僚女性が結婚後しばらくして妊娠、産休に入りましたが、産まれる前に離婚したと聞きました。
夫も他校の教員でしたが、その学校の女性教員(こちらも既婚)と不倫したそうです。
しかもその関係は妊娠前から続いていたそうです。悪質だったため、同僚女性は親権を取って離婚し、今もシングルマザーとして働きながら子どもを育てています。

共同親権は妊娠中に離婚した場合でも適用されます。
百歩譲って、養育費の強制徴収とセットで議論されるべきです。が、そのような話はありません。
ただ生物学上の父親だと言うだけで、養育した履歴が全くなくても親権があるなんて、そんな馬鹿げた話があるでしょうか?


以上が、私がこれまで保健室から見てきたことです。

私が経験したのは父親に問題があるケースのみでしたが、もちろん母親に問題がある場合も往々にしてあると思います。
そして、こうして明るみに出るケースの裏に、隠れた被害が膨大にあるはずです。それを踏みつけるような法案です。

正直公開するのに迷ったし、悩みながら書いたので衆議院を通ってから時間が経ってしまいました。
でもまだ参議院がある。まだ何とかできる。少しでも誰かに届いてほしい。廃案になってほしい。
冗談抜きで、共同親権が施行されたら絶たれる命がある。
絶対にそんなことあってはならない。
これを読んで、こんなこともあるんだと知ってほしかったんです。
少しでも危機感を持っていただけたら、オンライン署名があるそうなのでそれだけでも是非よろしくお願いします。↓
#STOP共同親権 〜両親のハンコなしでは進学も治療も引越しもできない!実質的な離婚禁止制度〜
https://chng.it/8QfFFJmdVg

共同親権について知ってください。広めてください。反対してください。子どもを守ってください。絶対に通しちゃだめです。どうかお願いします。


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