はじめに

本シナリオはニンジャスレイヤーTRPG向けの探索（推理）シナリオである。本来は初心者向けシナリオ集に収録する予定であったが、RPすべきNPCの数が多いためパージした。ただ、重要なNPC以外のRPの味付けを薄めにする事によってマスタリング難易度を下げる事は可能である。

また、収録しない事が決定した段階のラフ状態であるため、校正が甘いが各自で適宜補って頂きたい。

概要

要求されるPCの強さ： 能力値合計15～18のニンジャ3～4名
あると有利になる技能等：交渉能力
プレイ時間： オンラインセッションで5～8時間程度

ストーリー概要： PC達はネコソギ・ファンド社の重役の護衛を命じられる。しかしその重役が転落死する寸前の場面に居合わせ、彼が居たホテルで彼を突き落とした犯人探しに奔走する事になる。

導入

PC達の元に、ダイダロスから指令が届く。

・ネコソギ・ファンド社の重役がホテルでダンゴウを行う。PC達は重役の一人、ヨリイを護衛せよ。

・重役たちは現在、ホテルの49階で待機中である。

・本来ヨリイを護衛するはずだったニンジャは通信が途絶しており、ヨリイは現在無防備な状態にある。ASAP速度で現地に向かい、彼を護衛する事。

PC達が連続側転でホテルへと向かうと、遠くに目標のホテルが見えてくる。その一室、49階のベランダで、護衛対象のヨリイが煙草をふかしているのが見える。

その数瞬後。ヨリイの身体がぐらりと傾く。その身体はベランダの手すりの上を滑り、人形のように頭から落ちてゆく。あなた達のニンジャ聴覚はヨリイが「アイエッ？」と小さく悲鳴をあげたのを聞く。ぐんぐんと迫ってくる地面、その意味を理解していないかのように。

ここでPC達各個人には救出【連続側転判定U-Hard（常人の3倍の脚力の修正を受ける）】かベランダの観察【ニューロン判定Hard】を選ばせる。

救出判定に成功したPCは、ヨリイがアスファルトにキスするコンマ1秒前にその身体を抱きかかえ、連続片手側転で着地衝撃を殺しきる事に成功する。しかしヨリイは恐怖で気絶してしまったようだ。

失敗した場合、ヨリイは地面に叩きつけられ死亡する。彼が吸っていたタバコが遅れて落ちてきて、センコめいて紫煙をあげる。

観察判定に成功したPCは、一人の人影がヨリイの部屋のベランダから去る姿を目撃する。

一連の処理が終わったところで、ダイダロスからIRC連絡が入る。

#goei_all 「会合開始まであと10分です。まだ配置に着いていない者はASAP速度で配置につくように。なお、ヨリイ＝サンを護衛する予定だったニンジャは爆発四散が確認された。敵対組織の関与が疑われる。問題があれば些細な事でも即座に私に知らせること」

PC達がダイダロスに顛末を説明すると、彼はホテルの封鎖と犯人の炙り出しを指示する。ホテルの封鎖は他のニンジャやクローンヤクザが受け持ち、犯人の炙り出しはPC達に一任される。

調査フェイズ

ダイダロスは、ヨリイ暗殺（未遂）時にホテル内に居た関係者全員にその時居た部屋での待機を命じる。この時点でいくつかの事が判明する。

・事件前後で49階に居た人間の人数に変化はない（モータル4名、ニンジャ4名、ヨリイとクローンヤクザ除く）。

・外部の監視カメラで確認したところ、正規・非正規の出口を問わず（壁をよじ登るなども含め）事件前後にホテルを出入りした人間はいない。（また監視カメラは暗黒ダンゴウの機密性保持のため、ホテル内部には存在しない）

よって、PC達は49階を調べる事になる。

注記がない限り、PC達は嘘発見判定【ワザマエ判定】か【ニューロン判定】で相手が嘘を言っているか見抜ける。ニンジャソウル感知も同様。ただし、難易度は開示しないこと。難易度が高い判定は「何かあるな」と推察可能であるからだ（なお注記がない限り、嘘発見判定もニンジャソウル感知判定も基本難易度はHardである）。嘘発見判定に関しては、失敗した場合でも「嘘は言っていないように思える」と描写する。

またダイダロスから以下の事を指示される。

・犯人を見つけた場合は粛清せよ。ただし動機や指示した人間を聞き出すこと。

・重役への拷問等は避けよ。犯人と確信した場合はこの限りではない。

PC達には相手の【体力】が0になっても殺害・爆発四散を避けられる『ミネウチ』が可能である事を伝える事。これは相手の【体力】が0になった瞬間に宣言出来るものとする（攻撃1つ1つにミネウチ宣言させるのは面倒だからだ）。

-エレベーター・廊下

エレベーターは「外して保持」テープで封鎖されている。ここと廊下は（当然であるが）複数のニンジャが通ったためニンジャソウル痕跡は錯綜しており、個人の特定は不可能だ。

-トイレ

女子トイレには誰もいない。男子トイレの前にはニンジャが一人、また個室には重役の一人、サヤマが居る。

・ニンジャ（セイジャー）へのインタヴュー

・サヤマがトイレに行きたいというので着いてきた。事件が起きる10分ほど前の事だ。

・事件前後でトイレに出入りしたヤツは自分とサヤマ以外にはいない。

◆セイジャー （種別：ニンジャ）
カラテ		３	体力		３
ニューロン    	２	精神力		２
ワザマエ		６	脚力		３
ジツ		ー	万札		３
							
◇装備や特記事項
なし

なおセイジャーは嘘が下手なため、嘘発見判定の難易度はNormalである。成功したPCは、セイジャーが嘘を言っていることを見抜ける。その事について指摘すると、セイジャーは観念し財布を取り出す。

・サヤマがクソをしている間にサヤマの部屋に行き、財布の中身を抜き取った。

・その時廊下を見たが、バックスタブが歩いているのを見た。自分はとっととサヤマの部屋に入ったのでその後彼がどこに行ったかは知らない。

・【万札】3をやるから、この事は黙っていてくれ。

・重役のサヤマへのインタヴュー

・自分は事件が起きたらしい10分前からトイレに居た。

・今日は腹の調子が悪い。

・ダイダロスにその場での待機を命じられたのでトイレから出られない。早く解決してここから出してくれ。俺はもうクソが出たぞ（等のジョークを言ってPLをイラつかせてもよい）。

彼が言う事は全て真実である。

-491号室　サヤマの部屋

誰もいない。ごく普通の部屋だが、ニンジャソウル感知に成功すると、ニンジャソウル痕跡を複数検知できる。またベッドの上にバッグが置いてある。

【バッグの中身】

財布：【万札】7が入っている。

-492号室　イルマとホロデコイの部屋

1人の重役と、1人のニンジャが居る。

・重役のイルマへのインタヴュー

・事件発生の5分前、自分はサヤマの部屋にアイサツに訪れたが不在だったので引き返した（ホロデコイも同行）。

・事件発生時、自分とホロデコイは部屋に居た。

・ホロデコイがトロ粉末を吸うために外に出てた時間がある（事件発生直前）。事件発生の1分ほど前で、その1分間ホロデコイは部屋に戻って来なかった思う。（これを言った後、ホロデコイは下記の彼へのインタヴューに従って反論する。その時、イルマは恐怖から軽いNRS症状を呈する）

嘘発見判定もしくはニンジャソウル感知判定で出目6を2つ以上出したPCは、彼が嘘をついている事に気付ける。また、非常によく隠されているがニンジャソウルも感じられる。この判定はバックスタブを尋問している場合、【難易度：Hard】でも成功となる（出目6は必要なくなる）。

◆イルマ / カメレオン （種別：ニンジャ）
カラテ		２	体力		２
ニューロン    	６	精神力		４
ワザマエ		６	脚力		３
ジツ		５	万札		３
							
◇装備や特記事項

『暗殺剣』：近接武器、精密攻撃のみ可。アンブッシュ時、精密攻撃時でもサツバツ！を発生させられる。

『ツツモタセ・ジツ』： 精神力2を消費して発動する。術者は対象者の姿と声帯を完全にコピーし変身する。戦闘中は使用不可。

イルマがニンジャである事を指摘すると、彼は女性の姿になり、ニンジャとしての正体を現す。

「私はアマクダリ・セクトのカメレオン。本物のイルマ＝サンは自宅で冷たくなっているわ」

カメレオンはイルマを殺し、このホテルへ潜入した。その任務は重役全員の殺害であったが、いくつかのイレギュラー・インシデントで計画は大きく狂った。彼女はよく訓練されたエージェントであるため、パートナーであるバックスタブの事は死んでも話さず、全ての罪をホロデコイになすりつけようとする。ただし、『◉邪悪なサディスト』を所持しているPCの拷問を受けた場合、バックスタブが共犯である事を話す。

彼女をミネウチなどでノックダウンさせた場合、捕縛して上記尋問を行う事も可能。この場合PL達には、捕縛したまま生かしておけば後日アゴニィの拷問やリー先生の薬物インタヴューにかけられる事を保証し伝えておくこと。

・ホロデコイへのインタヴュー

・事件発生の5分前、自分とイルマはサヤマの部屋にアイサツに訪れたが不在だったので引き返した。

・事件発生時、自分とイルマは部屋に居た。

・護衛任務は神経が磨り減るため、トロ粉末で集中力を維持した。しかし部屋の外に居たのは事件発生1分前、ほんの数秒であり、自分に犯行は不可能だ。（彼がこれを証言した後、イルマは上記に従って反論するが、ホロデコイが彼を睨み彼は軽いNRS症状を呈する）

彼が言う事は全て真実である。なお、彼のRPは高圧的にした方が良い。

◆ホロデコイ （種別：ニンジャ）
カラテ		６	体力		６
ニューロン    	４	精神力		４
ワザマエ		３	脚力		３
ジツ		４（ブンシン）	万札		３
							
◇装備や特記事項

『グレーター・ブンシン・ジツ』： 「その他の行動」として精神力2を消費し発動。実体を伴った分身を1体生成する。
　生成されたブンシンは本体と全く同じ能力値と種別をもつが、【体力】の初期値は1で固定となる。
　重ね掛けも可能。

--493号室　ナガトロの部屋

一人のモータル：ナガトロが居る。部長クラスで、今回の会合に参加したネコソギ・ファンド社の人間の中では最も下っ端で、護衛もつけられていない。PC達を見ると軽いNRS症状を引き起こす。

・ナガトロへのインタヴュー

・事件前、アイサツのため495号室に行って重役のオガワと名刺交換していた。

・部屋に戻ってきた直後にダイダロスから連絡が来て、この部屋で待機している。

部屋に対してニンジャソウル感知判定を行い成功した場合、かすかにニンジャソウル痕跡がある事に気付ける。

--494号室　ヨリイの部屋

誰もいないが、ニンジャソウル感知判定に成功するとニンジャソウル痕跡があると気付ける。ヨリイの護衛はPC達だけで、他にはいなかったはずである。つまり暗殺者はニンジャであると推察可能だ。

--495号室　オガワとバックスタブの部屋

1人の重役：オガワと、ニンジャのバックスタブが居る。

・オガワへのインタヴュー

・事件前後はずっとこの部屋に居た。

・事件前にナガトロがアイサツにやってきて、名刺交換と少しの雑談をした。

・その間はバックスタブには外に出てもらっていた。彼はまだ下っ端で、ニンジャ存在に慣れていないからだ。

彼が言う事は全て真実である。

・バックスタブへのインタヴュー

・事件前にナガトロがやってきて軽いNRSを起こしたため、オガワの願いで部屋の外に出ていた。

・ずっと部屋の前で廊下を見ていたが、セイジャーとサヤマがトイレに向かい、その後セイジャーがサヤマの部屋に戻った事と、ホロデコイがヨリイの部屋に入るのを見た。

嘘発見判定で出目6を出したPCは、バックスタブが嘘を言っている事に気づく。セイジャーの証言などを突き付けた場合、この判定の難易度はHardでも成功となる（出目6は必要なくなる）。嘘を看破された彼はヤバレカバレになって戦闘を挑んでくる。

◆バックスタブ （種別：ニンジャ）
カラテ		５	体力		５
ニューロン    	５	精神力		５
ワザマエ		８	脚力		４
ジツ		０	万札		３
近接攻撃9（カタナ）    遠隔攻撃8    回避8
							
◇装備や特記事項
『連射2』『ダッシュ移動』

『タツジン：イアイドー』

『カタナ×2』: 近接武器、二刀流

彼をミネウチなどでノックダウンした後、尋問する事も可能。その時は以下のような事を話す。

・自分はアマクダリ・セクトに買収され重役の暗殺を依頼された。

・自分のターゲットはヨリイとオガワだったが、ナガトロの来訪によってオガワの暗殺は一旦据え置き、まずヨリイを手にかけた。その帰りにナガトロの部屋に寄り、捜査を混乱させるためニンジャソウル痕跡を残した。

・ホロデコイの犯行に見せかけるため、カタナは使わず素手でヨリイを突き落とした。

・アマクダリ・セクトのエージェントが送り込まれ、そいつがイルマとサヤマを殺し、脱出の手引きをする手はずになっていた。自分はそいつの名前も顔も知らない。自分の犯行はホロデコイのせいにしろとだけ言われた。

このように、バックスタブはイルマ / カメレオンの事は何も知らないため、彼女に関する情報は何も出ない。しかし他にも犯人が居る事はわかる。

この時点でイルマ / カメレオンを捕縛・爆発四散させていない場合、NPC1人だけを選ばせ、再インタヴューを行わせる。ここでもイルマ / カメレオンを看破出来なかった場合、ホロデコイの「アバーッ！サヨナラ！」という断末魔の叫びが聞こえる。急いで現場に向かうと、イルマ / カメレオンが正体を現し、ベランダから飛び降りて逃走を試みているのを発見する。

この場合、特に判定は必要なく、路上でカメレオンを追い詰め戦闘になる。彼女を爆発四散させたところで事件解決となる。

デブリーフィング

カメレオンとバックスタブを爆発四散ないし捕縛したところでシーンを切る。生き残った重役たちでダンゴウを行い、PC達はその護衛を行った事になり、（カメレオンが生きていれば）その間にアゴニィの拷問やリー先生の薬物インタヴューが行われ、その真実がPC達に伝えられる（次セクション参照）。

【評価】
A： ホロデコイが生存した状態でカメレオン・バックスタブを撃破し、カメレオンは捕縛した。

B： ホロデコイが死亡した状態でカメレオン・バックスタブを撃破し、カメレオンは捕縛した。

C： ホロデコイが死亡した状態でカメレオン・バックスタブを撃破したが、カメレオンは殺害した。

D： カメレオン・バックスタブの正体を見抜けなかった。

なお、無関係なNPCを殺害していた場合、評価を1段階下げる。

【報酬】
A： 【万札】15×PCの人数分、【名声：ソウカイヤ】+2。
B： 【万札】10×PCの人数分、【名声：ソウカイヤ】+1。
C： 【万札】7×PCの人数分。
D： 【万札】3×PCの人数分。全員ケジメの上【名声：ソウカイヤ】-1

評価Dでも【万札】が得られるのは、一連の戦闘・探索で得られる【万札】が少ないため（ニンジャスレイヤーTRPGでは【万札】は通貨価値と経験値を兼ねているため。一応ミッションに参加し経験を積んだという事で【万札】を渡す）。

余暇は3～4スロット程度を推奨。

事件の真相

アマクダリ・セクトはソウカイヤ及びネコソギ・ファンドへのサボタージュを計画した。まずヨリイを護衛予定だったニンジャを暗殺。次にバックスタブを買収しヨリイとオガワの暗殺を依頼。さらにエージェント・カメレオンは重役のイルマを殺害し、彼に成りすましホテルに潜入。本来の計画ではサヤマの部屋を訪れ、ホロデコイを部屋の前に待機させつつサヤマを暗殺。セイジャーがやったと叫び、ホロデコイを呼び寄せセイジャーを爆発四散させるという計画であった（セイジャーとホロデコイに罪をなすりつけ、バックスタブは見捨てる）。

この場合表向きのストーリーとしては

ホロデコイ・バックスタブ・セイジャー全員がソウカイヤを裏切っており、それぞれが個別に暗殺依頼を受けていた。ホロデコイはヨリイとイルマを、バックスタブがオガワを、セイジャーがサヤマを殺害する手はずであったが、ホロデコイはヨリイの部屋に入るところをバックスタブに見られてしまったため、セイジャーを殺害し、イルマを守った英雄として発言力を高めバックスタブとの論戦に勝とうとした。またバックスタブもオガワとヨリイ暗殺の罪をホロデコイになすりつけようとした。

と見せかける予定であった。しかし予想外のインシデントが3つ起きた。1つはサヤマが腹を下しトイレに行ったためカメレオンが受け持っていた計画が不可能になった事。もう1つはナガトロの訪問でオガワの暗殺が遅れた事。最後はPC達の到着とダイダロスの対処が早かったため結局オガワの暗殺が不可能になった事。

これらの出来事により、PC達からは

・バックスタブがヨリイとオガワの暗殺を試みたが後者は失敗、ホロデコイに濡れ衣を着せようとした事は判明。

・イルマとサヤマが生き残った理由が不明。

のままシナリオが進むため、アマクダリのエージェント候補はイルマ・サヤマ・セイジャー・ホロデコイのどれか今一絞り込めない。ヒントはイルマとホロデコイの証言の食い違いと「何故イルマがサヤマの部屋を訪れたか」という点だが、後者は同じような事をナガトロがおこなった事で怪しさが希釈される。