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ドラマ「銀と金」#娯楽記録01

 裏社会のフィクサー、平井銀二と、それに見いだされて才能を開花させ、やがて銀を超える「金」になるという望みを抱くようになる青年、森田鉄雄というふたりの男を中心とした、株の仕手戦や政治家との裏取引などの駆け引き、ギャンブル勝負などを描いた作品である。(Wikipedia参照)

 1話30分と通常のドラマよりもコンパクトなので、ストーリー展開のテンポが良く、非常に疾走感がありました。また、各話を止めるタイミングがどれも絶妙で、ついつい先が気になってしまい、1日で全話見てしまいました。振り返りだせばきりがないのですが、特に印象深かった点をピックアップしてまとめておきます。

1.オープニング曲
 このドラマの主題歌はamazarashiの「ヒーロー」という曲なのですが、曲の雰囲気が作品にぴったりハマっています。ほとんどシーンが夜であることもあってか、このドラマにはつねに薄暗い、闇のある印象があります。デカダンスというのでしょうか、登場人物はみんなどこか世間を達観したような退廃的な世界観を持っています。そういった意味で、大多数の普通の人生を送る人たちにとって、この作品はある種のファンタジーになっているのです。

 ファンタジーと言うと、魔法の世界と言ったキラキラした世界を思い浮かべがちですが、現実よりも華やいだ世界を空想するのと同じように、現実よりも暗い世界を空想するのも、またファンタジーになりうるのです。

 自分には選べない人生を擬似的に経験できることは、フィクションの作品を楽しむ醍醐味です。ではその、「自分には選べない人生」というものは、具体的にどういったものであるのか、それは必ずしも、「自分には選べない幸福な人生」である必要もない、ということでしょうか。

2.五億円のアタッシェケース
 主人公の森田が師匠の銀二と別れるとき、銀二は餞別として五億が入ったアタッシェケースと空のアタッシェケースを用意して、森田にどちらかを選ばせます。森田はハズレの方を選んでしまうのですが、そのハズレのケースには銀二からの手紙が入っており、「二者択一の必勝法は両方ともハズレにして、ハズレを当たりと信じ込ませること」と書かれています。

 この理論だけでもなかなか興味深く、自分自身の経験に当てはめて考えてみたり、実生活に応用する方法を空想してみたりしても楽しいのですが、更に今作では、のちに森田がこの理論を実際に使って、敵を出し抜く場面が描かれます。作中に格言らしき言葉が現れることはよくありますが、実際にその応用例を見せてくれることはあまりないような気がしたので、誠実さを感じられました。

3.大東駿介演じる「西条」の狂気
 物語の第3部、7話から9話ではポーカー対決が描かれていて、その相手が大企業の社長の息子「西条」です。勝利しか知らない人生を歩み、当間のように他人を蔑む「西条」という男の狂気をみごとに演じていました。

 桁違いに高額な賭け金を前にしても緊張感もなく弛緩しきった笑みを浮かべていたのに、賭け金が跳ね上がるにつれて徐々に余裕がなくなり、焦りを見せ始めるシーンは鬼気迫るものがあり、ヒール役であるのに、ふしぎと感情移入してしまっていました。

 ふつうだったらキラキラした恋愛モノに出てきてもおかしくないような爽やかなイケメンだからこそ、人を人とも思わない傲慢さや、人生の破滅を恐れる恐怖心と言った、闇の深いダーティな感情の恐怖感が増幅されるのでしょう。

 ポーカー対決での迫力だけでなく、ギャンブルで騙した女性を襲っているシーンも印象的でした。電話片手に、もう一方の手のひらに唾を吐き捨て、それを性器になすりつけて挿入するのですが、想像を絶するほどに鬼畜なシーンです。直接的な性描写がないのに、ヌードシーンがあったくらいの胸焼けがしました。


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